言葉を交わしてから、その場を後にしようと相手が方向を変えたときの表情の切り替わりをつい見てしまう。はじけるように笑っていたのがさっと真剣な顔になるとか、力の入ったような目がふっと緩むとか、"誰かとの時間"から"ひとりの時間"に移っていくそのいくらかの時間は、互いの秘めたものが垣間見られるように感じる。マジックアワーとは太陽が沈んでからもしばしば空が明るい状態をいうが、まるで人と人とのマジックアワーである。
自分が、手を振った後にもう一回手を振りたくて、くるっとして手を振ったりすることもあり、見なくてもいいのにわざわざ振り返っている。改札の先に遠ざかっていく誰かを見えなくなるまで見送るかのように、自分と相手の間に物理的な隔たりはなくとも、自分は相手を見送りたいのかもしれない。離れてからもそこにいる、まだ声が届くところにいるのは、まだ相手との時間が淡く続いているようでもある。それだけ相手との時間は自分にとって価値があったということで、次は前だけを見て別れるのもいいかもしれないと思う。