頬をかすめる風は冷たく、四方八方に送られた日差しはあたたかい。冷たいのにあたたかいというこの矛盾に、たとえば知らないだろうけれどと前置きした作家を相手が知っていたときのような気持ちになる。
いつか使うかもしれないと取っておいても、そのいつかは来ないというのは半分間違っている。「すりこぎ」で近所からもらった大和芋からつくった"とろろ"をなめらにし、オーブントースターの「天板」に焼き菓子を並べて焼き、「アームカバー」はあるイベントでの材料の下ごしらえに持ち出されている。捨ててよかったものならぬ、捨てなくてよかったものである。
年末のあわただしさを追いやりたくて新年を待ち、そういうときだからこそ何もせずにいると、平日の有給で自分以外の人は出勤しているという妙な特別感を思い出す。