セダンの後部座席に乗って国道を行く。退屈だった。何かおもしろいものはないかと、体を時計の秒針のようにくるくると、いやそれにしては不規則だが回す。スーパーマーケットにレストラン、ホームセンターと、昼なのに明るい看板のネオンは小学生には黙ったままだ。信号は赤。家を出てからずっとだ。早く祖母の家に着いてほしいような、着いたところでかしこまってしまうからそうでもないような、でも食事は楽しみなような、いつもそんなことを思っている。
また信号が黄色から赤になり、今度は後ろの窓をのぞいてみる。大型トラックだった。フロントガラス上部に緑の三連ランプがついている。しめた。隣に座っている弟を促し、運転席を二人で凝視する。どんな人であろうが、ここで"じゃんけん"を仕掛ける。まったく相手にされないこともある。しかし今日はのってくれた。何回か勝負したところで車が動き出した。ここで一旦中断し、車が止まるとまた始める。次の次の信号で私たちは右折し、大型トラックとはお別れだった。
車越しにじゃんけんをするのは楽しかった。いつまで続くかというスリルもあった。別の車が入ってきたり、トラックが別の道に逸れるとおひらきになるし、もちろん私たちの車の方から離れることもある。ほんとうにタイミングなのだ。
声が聞こえないじゃんけんは、目を見てお互いの手の動きを合わせることになる。そのやりとりはおもしろく、息が合ったときには子どもながらにうれしかった。
断られてがっかりしていた記憶はあまりないので、六割くらいは遊んでくれたのではないか。近ごろではスモークを施されていない窓の方が少ないから、子どもが"じゃんけん"を仕掛けてもトラックからは様子がよくわからないかもしれない。
それにしても今、車から大型トラックに"じゃんけん"を仕掛ける子どもと、共に遊ぶ運転手は、それぞれどのくらいいるのであろうか。