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「千の輝く太陽」のあらすじと感想・アフガニスタンの女性差別について

千の輝く太陽

 

シャーの時代からタリバンの支配、撤退まで、激動のアフガニスタンに生きる二人の女性を描く。夫の暴力、戦争、飢餓、タリバンによる抑圧。

 

重い小説だが、最後の一文に救われる。

 

DV、モラハラ描写があまりに詳細なので、不安な方は読まない方がいいかもしれません。経験のない私でさえ鬱々となるものがありました。

 

 

目次

 

「千の輝く太陽」のあらすじ

マリアムはハラミーと呼ばれる子だった。父は母とは正式に結婚しておらず、ほかに3人の妻と9人の子供がいた。

 

父は優しい。マリアムを愛してくれる。だから父に会いに行ったが、会うことはできなかった。落胆して帰ると母は首をつっており、そのときからマリアムの人生は大きく変わり始めた。

 

30も年上の男性との結婚を余儀なくされた。彼も最初は優しかったが、マリアムに子供ができないことがわかるととたんに冷たくなった。ささいなことで文句を言われるので、マリアムはいつも緊張している。ひどい暴力をふるわれることもあった。

 

マリアムが19歳になったころ、1978年にライラは生まれた。ライラの父は教師だったが、息子たちをソ連との戦争に出して以来、元気をなくしている。母もふさぎこむばかりだ。

 

鬱屈とする日々の中で、ライラは幼なじみのターリクに恋をする。ソ連との戦争が終わるころ、二人は思いを通じ合わせるが、激しさを増す内戦の中で離ればなれになってしまう。

 

ライラの家は爆弾で破壊され、父と母は亡くなった。ライラはマリアムの夫によって助けられ、求婚されて二人めの妻になった。意に沿わぬことではあったが、男性の後ろ盾を持たないライラが生きていくすべはほかになかった。また、ライラには授かった命を守るという目的もあった。

 

マリアムはこの状況を受け入れることができない。しかしライラの娘、アジサの誕生をきっかけに二人は次第に距離を縮めていく。

 

あるとき夫がマリアムに暴力をふるおうとしたとき、ライラが身を挺してマリアムをかばった。マリアムにとって、誰かに助けてもらうことは生まれて初めての経験だった。

 

社会はタリバンの統治下にあって、次第に不安定の要素を増す。女は働くな、学ぶな、男の付き添いなしには外に出るな。景気も悪くなり、やがて飢饉が訪れた。夫の店も火事で焼け、暮らしは困窮していく。娘も孤児院へ連れていかれた。

 

ライラとマリアムは、タリバンの制裁を覚悟して町に出、孤児院を訪ねる。夫の付き添いは望めない。辛い毎日が続く中、突然、死んだと思っていたターリクが現れた。

 

怒り狂った夫に、マリアムとライラは抗う。そしてついに罪を犯してしまった。マリアムはライラに逃げろと言う。罪はひとりでかぶるのだと言う。ハラミーとして、法の外で生まれたマリアムは法によって裁かれる。ライラは子供たちを連れ、ターリクとともにアフガニスタンの外へ逃れた。

 

タリバンが去ったのち、ライラはアフガニスタンに戻り、教師として働き始めた。

 

「千の輝く太陽」の感想

描写・小説の力

マリアムとライラ、あまりに辛いふたりの女性の人生も、変化するアフガニスタンの社会も、そこに生きる人々も、美しい自然もおいしい食べ物も、何もかもすべてが力強く生き生きと描写されている。短い小説ではないが、物語を語る力に引き込まれて没頭できる。

 

重苦しい小説だが、読後感は明るく希望に満ちたものだ。最後の一文がすべてを浄化する、その構成がすさまじい。

 

文章も、日本語で書かれた小説家と思うほどなめらかで引っかかりがひとつもない。翻訳家の方に敬意と感謝を。

 

マリアムとライラの友情・シスターフッド

マリアムの母は娘に「あたしらみたいな女は耐えるしかないんだ。耐えることには不足しないから安心おし」と教えた。その教えの通り、マリアムは理不尽にただひたすら耐える。

 

しかし、開明的な家庭で育ったライラという女性が来て、マリアムは変わり始める。ライラが教えたのは、誰にも、マリアムにも幸せになる権利があるということではないかと思う。

 

一方でマリアムは、「これしか教えられることがない」と言いながら、ライラの娘アジサにコーランをきかせる。伝統と、新しい社会を生きるふたりの女性が互いを理解し、尊重し、友情をはぐくんでいくさまには深い感動を覚える。

 

私は特にマリアムが、苦しい人生の中にも小さな喜びを見出すことができたのがうれしかった。

 

夜、ふたりが家事をする手を止めて、庭でお茶を飲む場面は美しかった。マリアムにようやく訪れた平穏が長く続くように。そう願わざるを得ない場面だった。

 

アフガニスタン女性差別について

お時間がある方はこちらの動画をご覧になってみてください。また、コメント欄にも目を通していただけると興味深いかと思います。

 


www.youtube.com

 

YouTuberのShotaさんがアフガニスタンに滞在し、そこで見聞きした、アフガニスタン女性差別についての考えを述べるというものです。

 

アフガニスタンの男性は女性をとても大切にしている。外からは女性差別が厳しい国であるといわれるが、実際はどうなんだろう。そうした趣旨の見解を述べておられます。

 

「千の輝く太陽」にはマリアムの母のせりふとして、「磁石の針はいつも北を指し、責める男の指先はいつも女を指す」という言葉が書かれています。また、マリアムのほかにも、年上の男性と結婚させられる少女の話が出てくるなど、私たちの感覚からすると女性の人権がないがしろにされているような場面も少なくはありません。

 

しかし、小説にはマリアムに寄り添おうとした男性もいたり、ライラが育った環境では男女は(結婚観などの違いはあれど)対等に話をしているようにも描かれています。

 

マリアムの夫がロリコンモラハラ、その上DVというクソであるだけで、アフガニスタンでの結婚が必ずしも不幸ということではないのでしょう。もし、ライラとターリクが何の障害もなく結ばれていれば、ライラは幸せだったはずなのです。

 

ただ、経済力を持てないという時点で女性が不利であることは確か。女性に教育を受けさせないなど、タリバンの政策が抑圧的であることも事実であるようです。作中には、女性の医師がいないために悲惨な思いをする場面もあります。

 

女性は女性の医師にしかかかってはいけないというわりに、女性に教育を受けさせないのはあまりにひどいことです。

 

しかしその一方で、家事も育児もして、さらに稼いで一人前といわれる先進国の女性に、アフガニスタンの女性は思うこともあるでしょう。また近年では、女性差別があることで、イスラム圏の考え方を「遅れた」「劣った」とするむきもあり、同地では反発を呼んでいるという話も耳にしました。

 

差別に反対することは当然です。しかしそれを盾にして、そこに暮らす人々を蔑視するのはだめです。私はイヤだ。誰しもひとりひとり、話してみればアホであったりカスであったり、はたまた意外といい人だったり、人は属性で判断できるほど単純ではないと思うからです。

 

まとめ

実はこの小説を読むのは二度目でした。10月ごろにkindle早川書房のセールがありまして、懐かしくなって再読を決めた次第であります。

 

よい小説は何度読み返してもよい。2014年に読んでから10年ですか。私も少しだけ大人になりましたので、マリアムの父の手紙などはまた違った印象を受けました。

 

読むのが苦しい小説ではありますが、物語の中に引き込まれること間違いなし。読み応えのある小説であると思います。

 

 

 

 

 




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