ラテンアメリカの経済を語る一冊です。
学生さん向けに書かれたものだそうですが、大人にとっても十分に読み応えのある内容。格差や移民、インフレといった現代的なテーマを、経済の視点から本格的に解説してくれています。
ラ米というとどうしても、歴史や文化の面から語られることが多い中、こうした本を読めるのはありがたいですね。しかもこちら、アジア経済研究所さんのサイトで無料で公開されているんです。
実のところ、経済学の素養がまったくない私にはちょっと(かなり)難解ではありましたが、がんばって読み通しました。感想などシェアさせてくださいね。
目次
「ラテンアメリカ経済入門」のの内容
紹介文に書かれているこの本のポイントは3つ。
・最新の研究結果や開発経済学の知見を取り入れている
・学生さんが興味を持ちやすい現代的な課題を取り上げている
・新しい技術を持って編集されていて、電子版はサイトで無料公開されている
章ごとに様々なテーマが取り上げられており、インフレ、非正規雇用、教育、NGOなど、興味深いものが多数ですが、ここではタイトルに沿って、ラテンアメリカの経済のあゆみをざっくりまとめてご紹介したいと思います。
植民地時代〜独立へ
ラテンアメリカ諸国は、長らくスペインなどの植民地でした。19世紀に多くの国が独立しますが、経済的なつながりは残ったまま。
産業革命と一次産品依存
19世紀後半、イギリスで産業革命が進むと、ラテンアメリカは鉱産物や農産物の供給地として原材料を輸出。その代わりに工業製品を輸入する構造になります。
原材料を売ったお金で、工業用の機械から衣類などのさまざまな日用品まで、輸入でまかなっていたんですね。
世界恐慌と輸入代替工業化
1929年の世界恐慌により、ヨーロッパでは保護政策が取られるようになりました。一次産品が売れなくなり、日用品も買えない……。仕方がないので自国内で工業製品を作ろうという動きが始まります。それを、輸入代替工業化というそうです。
でも、そう簡単にはうまくいかず、経済は借金に頼りがちに。
債務危機と新自由主義
工業化はうまくいかず、結局、資源などの一次産品に頼る経済に。しかしそれも軌道に乗らず、1982年には通貨危機(債務危機)が発生しました。
1970年代からは新自由主義的政策(民営化・規制緩和・貿易自由化など)が広がりを見せ、結果、一部の人は豊かになったものの国内の格差が拡大。この格差は現在のラテンアメリカでも大きな社会課題となっています。
「ラテンアメリカ経済入門」の感想
私にとって興味深かったのは、「新自由主義」と呼ばれる考え方の中にも、所得の再配分(たとえば負の所得税)のような仕組みがあることでした。
弱肉強食、勝者総取りといった、悪の大王みたいなイメージがある新自由主義ですが、それはちょっと違うみたい。儲けられる人はどんどん儲けていただいて、といって弱者の生活にもちゃんと目配りを忘れない。もともとはそういう考え方であるようです。
とはいえ、それがうまく機能するかは別の問題かもしれませんね。
現在のラテンアメリカには、弱者保護に重点を置く社会主義的政策をとる政治家と、自由経済によって経済をより発展させようとする政治家と、ふたつの勢力があり、いずれにも多くの支持者がいます。
まとめ
学生さん向けとはいえ、経済学の用語や指標はやっぱり難しかったですねえ。でも、「わからないからやめよう」ではなく「わからないなりに読んでみる」ってのもときには大事かもしれませんよ。いい年していつまでそんなこと言ってんだってな気もしますけど……。
しかし、現在のラテンアメリカを知るために、経済はやはり欠かせないファクターかと思います。そんな中、基礎からしっかり学べる本書をネットで読ませていただけたことは大変にありがたいことでした。
著者の清水達也先生ならびにアジア経済研究所さんのご厚意にてオープンアクセスとなっている本書、ご興味がわいた方はぜひご一読くださいませ。
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清水 達也 編『ラテンアメリカ経済入門』 - アジア経済研究所
