はじめに
全国的にはまだまだ暑い日が続いていますが、岩手県(水沢)では朝晩に涼しい風が感じられるようになり、少しずつ秋の訪れを実感するようになりました。
暦の上では立秋(8月7日)から霜降(10月23日)までがおおよそ「秋」とされますが、日本では9月に入っても厳しい残暑が続き、近年は東南アジアのような気候が長く感じられます。
それでも「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、少しずつ秋の気配は静かに近づいています。
古典に学ぶ秋の養生
中医学の古典『黄帝内経・素問』の「四気調神大論」には、四季ごとの養生法が記され、秋については次のような記述があります。
原文
「秋三月、此謂容平。天気以急、地気以明。早臥早起、与鶏倶興。使志安寧、以緩秋刑。収斂神気、使秋気平。無外其志、使肺気清。此秋気之応、養収之道也。逆之則傷肺、冬為飧泄、奉蔵者少。」
現代語訳
「秋の三か月は「容平(ようへい:万物が収まり、静まる季節)」と呼ばれる。
この時期は、天の気は急ぎ、地の気は澄んで明るい。
早く寝て早く起き、鶏と一緒に目覚めるのがよい。
心を穏やかに保ち、過度なストレスや激しい感情を避けることが大切である。
精神を内に収め、外に向けすぎないようにすることで、肺の気が清らかに保たれる。
これこそが、秋の気に応じた養生である。
もしこの季節の養生に従わなければ、肺を傷つけることになる。
その結果、冬になって下痢(飧泄=慢性的な下痢や消化不良)を起こし、体にエネルギーを蓄えることができなくなってしまう。」
要するに🤔
「収穫の秋」と言われるように、秋は一年の実りを収め、エネルギーを蓄える季節です。この時期にあれこれ活動的になりすぎると、せっかく蓄えたものが外へ散ってしまいます。
だからこそ秋は、生活リズムを整えて早寝早起きを心がけること、心を落ち着けて感情を安定させること、そして乾燥に弱い「肺」を守ることが、元気に過ごすための大切なポイントとされています。(秋と「肺」については下記で説明します。)
🍂五行学説で考える秋
五行学説とは、自然界に存在するあらゆるものや現象は「木・火・土・金・水」の5つの要素から成り立っているという、古代中国の哲学的な思想です。
この考え方は中医学にも応用されており、五行を人体のはたらきにあてはめることで、体の構造や機能、病気の原因、治療の方向性などを読み解く手がかりとされています。
「秋」と関係のある臓腑や志(感情)などは、以下の通りです。

●「肺」の働き
中医学における「肺」は、呼吸器系として息を吸ったり吐いたりするだけでなく、皮膚や粘膜のバリア機能とも関係があり、外邪(ウイルスや寒さ・乾燥など)から身を守る働きも「肺」の力と関係しています。
また、肺は「潤いを好み、乾燥を嫌う」とされ、夏の蒸し暑さから一転して空気が乾燥し始める秋は、特に肺にダメージを受けやすい季節です。
その結果、呼吸器系のトラブルや風邪を引きやすくなったり、上記の図にあるように”鼻”の症状(鼻水・鼻づまり)がでやすくなります。
●「大腸」との関り
肺と大腸は「表裏の関係」にあり、互いに影響し合う臓腑です。
この関係を身近なもので例えるなら「急須」が分かりやすいかもしれません。
急須でお茶を注ぐとき、上部にある小さな空気穴が塞がれていると、水はスムーズに出てきません。空気の通り道と水の流れがバランスをとってはじめて、お茶が気持ちよく注げるのです。
同じように、中医学における「肺」は空気(気)の通り道を調整し、「大腸」は水分や老廃物を体の外へ押し出す役割を持っています。
もし肺の働きが弱ると、大腸の働きも乱れ、便の不調が起きやすくなります。逆に大腸に問題があれば、肺にも影響が及び、呼吸の不調や咳につながることがあります。

●秋は「悲・憂」の季節
秋になると、なんとなく悲しくなったり、気分が沈みやすいと感じる方も多いのではないでしょうか。
これは単なる気のせいではなく、自然の流れに沿った心身の反応ともいえます。
五行学説では、季節ごとに心の動き(感情=志)との結びつきがあると考えられ、秋に対応する感情は「悲・憂(かなしい気持ち)」です。
中医学では、過度な悲しみは「肺」を傷つけるとされます。
「肺」は呼吸を通し、「気(エネルギー)」を生み出し、全身に巡らせる重要な臓腑ですが、気分の落ち込みや憂いが強すぎると、この肺の働きが弱まり、呼吸力の低下や風邪をすぐ引いたり、疲れやすくなったりと様々な不調につながります。
🌿秋の養生のポイント
1. 食養生 ― 潤いを補う
五行のカラーが”白色”で表されるように、白色の食材は、潤いを与え「肺」を養うとされています。
例:梨、れんこん、大根、卵白、豆腐、白きくらげ、ゆり根など
2. 生活習慣 ― 冷えと乾燥から
朝晩の気温差が大きい秋は、体調を崩しやすい季節です。冷えと乾燥を防ぐことが「肺」を守り、風邪予防にもつながります。
・薄手の上着やカーディガン、ストールで体を冷やさない
・喉の乾燥予防は、冷たい飲み物ではなく、温かい飲み物やスープで潤す
・加湿器や濡れタオルを使い、室内の乾燥を防ぐ
3. 心の養生 ― 感情を安らかに
秋は「悲・憂」の感情を感じやすい季節です。感情を内にため込まず、気持ちを自然に流していくことが、秋を健やかに過ごす養生法です。
・ゆっくり深呼吸して、呼吸を整える
・軽い運動や散歩で気分をリフレッシュ
・自分のペースで過ごすことを心がける
最後に
秋は、夏の疲れを癒し、これから迎える冬に向けて体を整える大切な季節です。
潤いを補い、冷えと乾燥を防ぎ、心を穏やかに過ごすことが、秋の養生の基本です。
日々の暮らしの中でできることから少しずつ取り入れて、健やかな秋をお過ごしください。
📍ナカノメ薬局(株式会社ナカノメ)
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👨⚕️薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐