イタリアに暮らし始めて、イタリア語教室に通ってしばらくたったころのことです。勉強してもイタリア語で会話する相手が限られたり、文章を書いたりする機会が少ないと、なかなか上達しないと感じました。イタリア語を話す人々が周りにあふれていたとしても、自分自身がつたない言葉しか話せない状態だと意思疎通もままならず、結局のところ両者の最大公約数的をとって英語で会話する、という状態になってしまっていたのです。特に大事な会話、スピード感を求められる会話では顕著でした。行きつけのコーヒー店の常連のイタリア人と会話する、としても、最初の挨拶と自己紹介ができても、表現できることも聞き取れることもが少なすぎて会話がつながらないのです。時々「留学しても現地語をしゃべれるようになるとは限らない」と聞いていましたが、まさにそうだなと感じました。
そこで、イタリア語で日記を書くことにしました。暮らす中で見つけたこと、気になったものなどについて調べ、それをイタリア語でまとめてブログにすることにしたのです。サーバーを立ててWordPressで編集してアップする、初めての作業はとても心躍るものでした。毎週いくつか、800~1000 wordsくらいの記事を書いてはアップして、を繰り返しました。記事を書くつもりで過ごすと周りをしっかりと観察するようになり、またちょっとした疑問を現地の人に聞いてみることも増え、知識が増すとともに会話の時間も増えていきました。また、Google翻訳などの翻訳ツールには頼らない、と決めていたので、単語や文法の知識もかなりついたと思います。もちろん初学者なので、小学生が書いたような文章だったと思いますが…。
ただ書いているだけだと間違いに気づけないので、イタリア人の先生に授業をお願いすることにしました。週一回コーヒー屋で待ち合わせをし、書いた作文を印刷して、先生の前で朗読して間違いを指摘してもらう、という内容でした。自分自身は、書いているときに感じていた疑問を先生と話すことで解消できましたし、先生としても外国人が自国について書いた内容が面白かったようで、お互いにとても楽しい時間を過ごすことができました。
私が帰国するとなって、最後の授業をしていた時のことです。先生が私の目をしっかりと見ながら、「あなたは努力の人、どこに行っても絶対に大丈夫」と言い、そしてハグしてくれました。いつも使っていたコーヒー屋の白い内装、広い窓から射す強い光、店の中に漂うドルチェの甘い香りとともに、その瞬間が頭に焼き付いています。あんなにも完全に自分を肯定された気がしたのは初めてでした。
帰国してから、つらいことがあるたびに先生の言葉を思い出し、前を向いて歩いていくことができました。これからもきっと、同じように私の背中を支えてくれると信じています。
書く習慣1か月チャレンジ、今日は「誰かに言われた大切な言葉」がテーマでした。