ぼくは賃貸マンションに住んでいるが、大家(企業A)から7月に家賃値上げの提案をされ、ずっと交渉をしてきて、このたび家賃を据え置きのまま契約更新することになった。
企業Aからの提案は、今の家賃を30%値上げするというものだった。
弁護士にも相談したが、特別なことはしていない。
ぼくら夫婦がやったのは、ほぼただ一つだけ。
「値上げの根拠を聞く」ということだった。
それを聞いた上で、次の交渉ステージに入るつもりだったのに、その手前で終わってしまったのである。

企業Aの値上げの理由は「近隣物件の家賃の上昇」だった。
ぼくらの住んでいるマンションは古い。
周辺の地価が上がっているのはそうだったのだが、同じような条件の物件がどれくらい上がっているのか、まずはその根拠を教えてほしいということだったのだ。
企業Aは最初に「査定報告書」といういかめしい資料を送ってきた。
しかし、読んでみると、根拠が書いてないのである。
全国の数百万件の物件をAIで計算して数字を出したと書いてある。
ぼくらの近隣の物件については、数件、表にして貼り付けてあった。
AIにしても、近隣物件にしても、それを読んだだけでは、なぜ提案値上げ額になるのかがわからない。「計算式を教えてほしい」と返事をした。
しかし、答えは驚くべきものだった。
AIの方は「ブラックボックス」(本当にこう書いてあった)なので、計算式はわからないと言われ、近隣物件の図表の方は言及さえなかったのである。
いや、これでは根拠がわからないので、提案値上げ額に納得しようもないですよ、と書き送った。
すると、今度は企業Aはその査定報告書などなかったかのように、別の資料を送ってきた。
今度は(1)「この辺りの地価や家賃が上がっているという情報」と、(2)「前とは全然別の、この近隣の数件の物件リスト」だった。
(1)「この辺りの地価や家賃が上がっているという情報」については、ごく一般的な地価上昇のデータだった。その事情はわかるけど、ぼくの住んでいる物件のような古さとか、駅からの条件とか、そういう物件の家賃はこの近隣でどうなっているのか出してくれないと、そんな一般論を言われても困りますと返した。
もう一つの(2)「前とは全然別の、この近隣の数件の物件リスト」については、一応近隣の、うちと同じ条件の物件の家賃ではあるのだが、数件しかない上に、やっぱり計算式が全然わからない。そして、ふつうに見ても、提案のような値上げ額にはならないのである。
そこでやはり根拠が不明ですね、納得できません、と書き送った。

こういうやりとりが半年続いたのである。
その後も、前に自分たちが送付してきた資料を明確に否定したり、あるいは全くなかったかのようにして別資料を送ってきたりしたが、一向に計算式を教えてくれなかった。
しかし、値上げ額だけは、必ず最初の提案から1円も変わらないのである。
この結論だけは不動なのだ。
ひょっとしてぼくら夫婦の返事が不誠実なもの*1になっていないかは、弁護士に時々聞いたが、紙屋さん夫婦の対応は客観的にみて全く誠実であって問題ないと言われた。
そしてついに企業Aは何も言わなくなってしまい、仲介不動産会社を通じて、前の家賃額と同じ額で契約の更新をすることになった。
今後どうなるかわからないが、交渉においてゴネたり、無理なことを言ったりしたつもりは一切ない。
つれあいは、「あの企業Aの文書や資料は全部AIで作ったものなんじゃないかな…」と言っていたが、そうかもしれないなと思った。
※以下は企業Aにぼくら夫婦が送った最後の返書を、一定改変して載せています。もし興味のある人は支援の意味も含め、購入してみてください。
*1:例えば意味もなく「根拠が不明」と言い続けるなど。