中村桂子さんの本は親切でやさしい文章で、読みやすいので何冊か読んでいるが
これも本当によかった。
「食」、「食べる」という生存そのもの、いのちを支える営みの農林漁業の
大切さが述べられている。
『日本の「食」が危ない!-生命40億年の歴史から考える「食」と「農」』

(グーグル画像より)
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現代の日本の私たちは「食」、「食べる」ことは当然と思い込んでいる。
(「当然と思い込んでいる」ので食べているとき「食べる」という事実をあまり意識していない。
《私もそうだが》惰性的に「いただきます」「ごちそうさま」とは言い、合掌はしても、
農業をしないのに食物にありつけること、「食べられる」ことがどんなにありがたいことか
どれだけ感じているだろう?
米価の異常な値上がりにも、多くの食料品の価格高騰にも、天候不順、原材料の供給不足という
説明に納得し《納得はしなくても、仕方ないと》諦め、ガマンする。
ガマンできるのは、物不足や値上がりは経済の好不況のように一時的なものだから、
いまをしのげば《ガマンすれば》そのうち落ち着くだろうと楽観するから。
物不足、異常な値上がりはこれまでもあったが回復した。
《これからもあるだろうが》心配ないと楽観できるからだろう)
しかし、この「当然」は信じていいのだろうか?
いつまでも「楽観」していいのだろうか?
日本はいまのような食糧自給率でいいのだろうか?
ふだんの生活、暮らしの中で中村桂子さんは「なんだかおかしい」と感じ、
それを問いかける。
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(著者は生物、生命の科学者ですが、社会学者、歴史学者のように考える。
いつものように、心に深く響いたところだけ引用・紹介します。
①〈人間は特別な存在ではない〉
②〈食料不足が招く文明滅亡〉
③〈効率最優先からの脱却〉
④〈内なる自然に気づく〉
⑤その他 《大切な言葉や文章の寄せ集め》
全部で五つ。三回に分けて書きます。今日は①だけ)

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①「〈人間は特別な存在ではない〉
多様な生きものひとつとして人間の特性を活かしながら生きていくとはどういうことだろう。
現代社会は自然離れをしてきて、生きもののなどのことなど考えなくていい、
便利な機械があるから人工の世界で暮らしていく方が楽しい
…
DNAの科学が進むにつれて決定論的な見方(「機械は決定論的な存在」)が出てきた…
AI(「究極の機械」といえる)と人間を比べたりせずに、人間の人間らしさを大切にすることが大事」
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①〈人間は特別な存在ではない〉
学校で、”生物の進化”を教わった。
そのとき見せられた進化系統図の上は霊長類で、最も上、つまりてっぺんは
ヒトだった。
それでヒト、人間がすべての生きものの中でいちばん進んでいる(ということは)
エラい、「特別な存在」だと勘違いしたのだろう。
(いつか読んだ本に、地図は北が上、南が下に描かれているけど、北極・南極は実際に存在し
磁力も方位を指すけれど、”南の極”北の極”はあってもそれを二次元の地図に表わすときには、
三次元の地球は丸い球体なので上下どっちでもよいけれど、いちおう上を北、下を南に表わすという
約束、ルールを設けて地図は成り立っていることを、念頭に入れて地図を見なければならない。
でないと、子どものころから見慣れている身には、地図が頭の中で固定化され、地図はイメージ
なのに現実、実際かのように思う、錯覚すると述べられていた。
《私が子どものときは日本海側は「裏日本」、太平洋側は「表日本」といった。
無意識のうちに裏はどんより曇って暗く、表はカラッと晴れて明るいイメージを持っていた。
そんな錯覚、思い込み、偏見が完全に払拭されたのは日本海側に数年間暮らし、他の「裏日本」を
旅するようになってから)
ヒトが「特別な存在」ということも、まったく同じだと思った。
(自分もヒトだけど、「エラそうにするんじゃないよ、ヒト!」と感じなければならない)

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「機械は決定論的な存在」
すべて生きもの(ヒトも人種により、同じ人種でも個人により)は、DNAに還元される
かのような「決定論的な見方が出てきた」けれど、一方では(ネットのAIによれば
「ヒトと最も近縁なチンパンジーのDNAは98.7%以上が一致…違いはわずか1.3%程度…
ヒト同士でも0.1%の差しかなく、その差が個人差の多様性…)とのことであり、
またウィルスの遺伝子もDNA(かRNA)で作られており、ヒトと他の生きものは兄弟
仲間の関係で、違いは誕生したのが早いか遅いか、造りが単純か複雑かの差だけ。
DNAを通じ、みんな”生きもの”だと、あらためて強く認識されるようになった。
だけど、機械はDNAではない。AIは「究極の機械」
(AIはこれからのさらなる発展、進化が期待されている。
そのAI《人工知能》はさまざまな分野で人間の脳を圧倒的に上回った働きをし、
もう既に、人や社会の役に立っている。
先日、テレビニュースのトピックで超精巧な自動制御の機械、「ロボット革命」と呼ぶに
ふさわしい人間型ロボットが作られ、ある作業をこなしている姿を見て驚いた。
「鉄腕アトム」のように人間らしい感情を持ち、それを表現するのはまだまだでも、”人間”の姿
かたちをしたロボットが既に生まれていた)
この本を読んで、どれほどAI、ロボットが進化したとしても、
機械としての性能が進んだということであって、DNAを持つわけではない。
すなわち生きものになることはありえないと確信した。
〈オマケ〉
「なんだかおかしい」と感じることは他にもあるので、AIなら何がおかしいと言うだろうか。
トランプのことなど、どう言うだろう?

水枕 ガバリと寒い 冬がくる 西東三鬼