書名に惹きこまれて読んだ。
(「あの人より、上か、下か」と副題のように、大きく赤い字が表紙にある)
『消費される階級』 酒井順子・著

よかった。 読んでよかった。
酒井順子さんはエッセイスト。人間や社会、世相に感じ思うこと、考えることを
正直、率直に述べられている。
批判的なことも書かれているけれど(私のように相手を100%完全に「切って捨てる」
《相手にしたら》「面目丸つぶれ」ではなく)柔らかく包み込むような温かさの批判で
ちっとも冷たくない。「イヤな感じ」がしない。
いい意味での「大人」なんだなぁと思った。
(そう思うとこっちは「子ども」、いや「ガキ」だと思った。
エッセイなのでいくつかの話がありましたが、四つだけ引用、紹介します。
今日は①「はじめに」で、②~④は次回に書きます)
ーーーーーーーーーー
「〈はじめに〉
今、あってはいけないとされているのが、「差」です。
差別はもちろんのこと、…「差」の字が入る言葉はたいてい、よくないことを示す…
「違い」があるのは当たり前…
(だけども、「差」になってはいけない。
金子みすゞの詩にあるように「みんなちがって、みんないい」)
…
2006年の流行語大賞においては、「格差社会」の他にも「下層社会」「下流社会」「貧困率」
といった言葉もノミネートされています。
「豊かになるもならないも、自己責任」といった考え方の流布…階級が固定化…
(ちなみに2006年には藤原正彦の『国家の品格』が話題となり、「品格」という言葉も流行した。
本は)アメリカ発の市場経済原理が席巻する世において、昔ながらの品格を取り戻すように、
と日本人に呼びかける書…
が、しかし。品格の「格」という語もまた、人や物などが持つ値打ちによって与えられた等級や
位、身分、段階などを示す、いわば、”上下差用語”なのでした。
「格が違う」などという言い方はまさに、上下の差を実感した時に使用されるもの。
ちなみに…「格」だけではなく、「品」もまた、上下差用語なのでした。
「信濃」「更科」の「シナ」はそもそも地形を示す語で、高低差を表わしているけれど、
序列や階層や差といった人間同士の上下差(に使われるようになった)
…
(「一億総中流という時代が終わったらしい2000年代」、
「2010年代半ばからは世界的に「女性差別反対」の声が高まる」)
ポリコレやSDGsやらで差別や格差を無くして、様々な違いを持つ人々が全て横並びで生きて
いきましょう、という世になったことによって、上下差への欲求は、水面下に潜ったのです。
会社で話せないことは、飲み会の場で。…
口に出せないことは、ネットで。
…
人が二人いればすぐに上下をつけたくなる人間という生き物
(著者は「本能?」という)」

ーーーーー
悪意がすぐばれるような露骨な差別行為はしなくても無意識的というか、
これは「差別」に当たるだろうか?と迷うような、意識や主観によらないもの、
意地悪ではない「差別」が社会、世の中にはゴロゴロと存在している。
客観的にはちゃんと存在する「格差」「階級」だけど、
「階級」は資本主義という社会の仕組みの元から組み込まれ、
また「格差」はそこから必然的に生じるものだから、
「比較」して「差」をつけても、「差別」ではないとされる。
(著者は後の方で、資本主義社会にあっては、ある特定の「能力」の《優劣の》比較は「差別」
とはいわず「能力主義」だといい、正当化されていると指摘される)
ーーー
こんな世の中で育ち暮らしていけば、「差別」(著者のこの本での「階級」)意識に
よほど敏感でなければ、「差別」は見えてこない。
本当に「差別」は複雑、ややこしい、面倒だ。
「差別」に関わりたくない人々が多いのがうなづける。

ーーー
「ポリコレやSDGsやらで差別や格差を無くし…」と社会的な正当がいわれても、
その正当が自分に不利益、損になれば、正当は”建前”になり”不当”が本音になる。
(「上下差への欲求」は会社など公の場で「口に出せない」から、「飲み会の場で」「ネットで」
「水面下に潜った」)
「人が二人いればすぐに上下をつけたくなる人間という生き物」にドキッ!
「ポリコレやSDGs」のような社会のことではなく、自分という個人の心になると、
私は自分が本当に恥ずかしくなる。
いけないとわかっていても、すぐに比較し「上下をつけたくなる」わが心。
自分の奥深いところに潜んでいる「差別心」に気づき、ガクッ!
〈オマケの話〉
と書いていたら、いま読んでいる『生き物が大人になるまで』 という本に、
「ゾウとキリン、大きいのはどちら?」という話があった。
「どうでもいいこと」でも「どちらが大きいとか…、どちらが強いとか、どちらが賢いとか…
人間は比べたがります」
そして「それが、人間の脳のクセなのです」と述べられていた。
「人間の脳のクセ」と言われても、スッキリしない。

と言ひし 洟かむ僧の 夜寒かな 高浜虚子