『人はなぜだまされるのか-進化心理学が解き明かす「心」の不思議』
石川幹人・著

(グーグル画像より)
前にも書いたけれど、腹が立つくらい詐欺被害に遭う人が多い。
(「腹が立つ」という比喩は、これほど注意喚起がキャンペーンのように叫ばれていても、
引っかかる人が一向に減らないという事実に向けてのことだ。
初期のオレオレ詐欺は、事故など窮地に陥ったから「オレだけど、助けてー」と、親心につけこんだり
ちょっと認知症がかった一人暮らしのお年寄りたちへのやさしい語りかけなどでダマすのが多く、
善良な市民をカモにして…と犯人、加害者たちが憎くてたまらない、許せない気持ちになった。
しかし、いまは違う。
ダマされた方を素直に「善良な市民」と思えず、また同情できない自分を感じ、イヤになる。
それに何より被害額の大きさの桁違いにはビックリしている。
被害額が大きくても、その被害者にすれば大したことないのだろう《いや、大したことあるなら
私が間違っている。ゴメンなさい》
「詐欺かもしれない?」との気持ちがあっても、「いや、詐欺だったとしてもそれほどの被害じゃない。
それより話を信じて大儲けできるかもしれない。こっちに賭けよう」となるのだろうか。
《ともかく大金を持たないこっちは「そんなに欲を持たなければいいのに…」と思ってしまう》
加害者の側になってみると、刃物か銃を突きつける強盗のように対面して脅し、強制的に盗る
のではなく、電話などを利用してうまく相手を信用させ、ダマして自主的に大金を出させることは
知恵が必要で、ゲーム的な面白さもある、のかもしれない。
一度の詐欺で笑いが止まらないほどの大金が手にできれば病みつきになり、やめられなくなる、
のかもしれない。
高額詐欺事件を知ると、①お金はあるところにはあるもんだなあという感慨がわき、
②「あるところ」は多いんだなあという感慨もわく。
住んでいる地域のNHKニュースでは、『それ詐欺やで!』というキャンペーンをやっている。
詐欺事件は頻繁に起きている《らしい》。で、ニュース性に欠けるのか、かといって公共放送の手前
スルーともいかず、いちいち伝えないが、キャンペーンという形でまとめてやられている。
そこでは詐欺内容、手口が具体的に紹介されているが、聞いて私は呆れる。
何でこんなバカバカしい話、美味しい話を信じてしまうんだろうか?
放送局のキャスター、スタッフのみなさんもバカバカしいと思っておられるんじゃないだろうか?
《いやいやみなさん、私のような性悪の人間ではないのだろう。
性悪と同時に私は自分にとって都合よく受け取ろうとする「ご都合主義」者だが、
自分にとって都合のいい儲け話は決して信じない。
被害者の「ご都合主義」には完敗だ》

そういうこともあり、『人はなぜだまされるのか』を知りたいと思って読んだ。
本は進化心理学という著者の専門から一般の人でもわかりやすく、納得できる
よう述べられていた。
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進化心理学とは、ネットによれば「人間の心と行動を生物進化の観点から
理解しようとする学問です。自然選択による適応として、人間の心理や行動の根源を
解明しようとします」。

著者は「はじめに」で、
「生物の「進化」とは、「進歩」や「発展」とは異なる概念」と述べ、「「退化」も生物進化の
ひとつの形」と続き、遺伝子レベルの改変が起きる超々長い時間を経て、
すべての生物は「特定の遺伝子が自然によって選択され、逆に変化前の遺伝子が淘汰され…」
という。
「錯視」のような日常生活の中で誰もが体験、経験している出来事に隠れた現象
「こうなのに違いない」という「確証バイアス」などが、人の生物進化という
観点から明らかにされる。
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ということは、詐欺被害がなくならない社会現象も「進化」の観点から理解可能
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今日のオレオレなどの欺事件は始まって、たかだか私が老いてからのこと。
気の遠くなるような長さの人類の歴史からいえば話にならない。
ここまで人類の歴史が続いてきたのは、相手を信じなければ生きてこられ
なかったから。「人間は信じられる 信じるべき」だったから。
圧倒的に人類の歴史を占めているその長大な時間のうちに、
ヒトという生物のうちに「信」は遺伝子になって組み込まれた。
(「信」はちょっとやそっとでは壊れない。変わらない。
人は人を信じるものなのだ。
だから、ダマされる人の方が人間としてまっとうだといえる。
「ここまで人類の歴史が続いてきた」が、「不信」が支配するイスラエルとイランの対立。
これからも人類の歴史が続いていくのかとても心配になります。
次回から本で述べられていた興味深い話のいくつかを紹介します)

田螺やや 腰を浮かして 歩き出す 野中亮介