いつかニュースのトピックで「昆虫兵器」をやっていた。
(「そこまでやるか!…」とため息をついたが、そこまでやるのがヒトだった)
「昆虫兵器」への関心から、
『サイボーグ化する動物たち-ペットのクローンから昆虫のドローンまで』
エミリー・アンテス ・著 という本を読んだ。

(グーグル画像より)
書名に出てくる「昆虫のドローン」とは、昆虫を真似たドローン兵器かと「期待」
したけれど、そういう話は述べられていなかった。
(それはなかったが、初めて知る話題がいっぱいあり、とても面白かった。
《関心を持たれた方は是非とも本を読んでみてください》
この本にはなかったけれど科学技術の進歩を殺人兵器として利用する、した話はよく聞く。
戦前、細菌《生物》兵器の研究開発を任務にしていた日本軍の「731部隊」、アメリカの「原爆投下」
ナチスの「絶滅収容所」《毒ガス室》…。人間は自分が被害に遭わなければ超残虐になれるらしい。
私も人間だから他人事ではない。
銃や剣など直接的な道具を武器として殺人に使うしかなかった昔の戦争では、個別の殺人ごとに
相手の断末魔を目の前で経験し、トラウマになる者が必ず出た《戦争体験が精神を発病させるテレビ
番組を見た》。
これからの戦争ではそうならぬよう、自分は人を殺しているとわからぬよう、しかも知らないうちに
一気に大勢殺せるようゲーム感覚で面白く殺人が可能なよう、科学技術の進歩は利用されていった)
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本書では、未来のことだからどうなるかわからない(でも未来をつくるのは私たち)が、
科学技術(バイオ技術)の進歩が民生(いまのところ軍事でなく)に利用されている話が
紹介される。
最初にこう述べられていた。
「〈はじめに〉
(あらゆる病気にかかるよう遺伝子操作した実験動物を「製造」し販売する)ある会社のポスターは
「みなさまは実験を設計し、私たちはマウスを設計します」と約束していた。
…
利用できる高度な技術を駆使すれば、これまで人間がほかの種に与えてきた打撃の元に戻すことさえ
できるだろう。たとえばイヌの遺伝病を軽くし、絶滅寸前の野性動物の生息数を復活させる。
…
SF小説に登場するような、無数の選択肢が並んだカタログから完璧な動物を選べる未来を想像して
ほしい。ひとりひとりに合わせた動物を作ることもできる。
…
現代の科学技術は以前のものとどう違うのか、それらの技術は人間とほかの種との関係を
根本的に変えてしまうのかを探る。…
これからどんな関係を築いていきたいかを(読者とともに探っていきたい)…
動物を大幅に作りかえることは人間にとっても重要な問題だ。
それは自分たちの未来を垣間見ることにもなるからだ」

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バイオテクノロジーの基本的な言葉、概念の「DNA」「遺伝子」「染色体」
「ゲノム」。
いまはいろいろな機会に耳にするけれど、私は「わかっている」とは言いがたく
ずっとモヤモヤしている。
この本は生物学のものではないので、それについての解説はなくモヤモヤは
晴れなかったけど、それらに関した、つまり生物にとっての大切なことが
述べられていた。
(「DNA」「遺伝子」などは、自分の目で星空を見上げて宇宙を感じるようには気軽にはいかない)
具体的な話題は、
① 「水槽を彩るグローフィッシュ」 ② 「命を救うヤギミルク」
③ 「ペットのクローン作ります」 ④ 「絶滅の危機はコピーで乗り切る」
⑤ 「情報収集は動物にまかせた」 ⑥ 「イルカを救った人工ビレ」
⑦ 「ロボット革命」 ⑧「人と動物の未来」 の八つ。
どれも考えさせる話なので引用が長くなりそうなので、今日は①だけ紹介します。
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① 「〈水槽を彩るグローフィッシュ〉
人間はこれまで選択的な品種改良によってたくさんの種に干渉してきたが、
この魚の登場はまったく新しい時代の幕開けとなる
…
私たちは友だちである動物の遺伝コードを直接操作できる力を手にしたのだ。…
この新しい分子技術は世の中を一変させるだろう。
もう何世代という膨大な時間をかけることなく、あっという間に種の形や性質を変えることができる。
その動物の全体のことを気にかけるのではなく、一個の遺伝子だけをいじる。
そして複数の種のDNAをうまく組み合わせてひとつに合成し、自然界には存在しない生きものを
作ってしまう。
私たちにはずっと前から、自分の好みに「ぴったり」合った動物をそばに置きたいという思いがあった
…
(こういう「遺伝子操作時代の幕開け」に対し、もちろん大きな不安があり、反対が叫ばれ、対策が
考えられてはいる。
けれども、「遺伝子操作された動物の「封じ込め戦略」についての有効性は疑われており、
「生態学者は…環境に広まってしまうのではないかという不安」を抱いている)
…
(次に著者は問う、果たして「グローフィッシュは危険なのか?」と)
人間は交配させて作り出したイヌの品種にもさまざまな遺伝病の重荷を背負わせており(たとえば)
ブルドッグは人為選択で極端なまでに姿を変えられたために…障害をもつようになった。…
人の都合に合わせた交配によって作られたので、その障害は見過ごされている…
(金魚の)「出目金」はほとんどものが見えていない…
倫理的な立場からすれば、人為選択による品種改良で重い障害をもつようになった魚より、
遺伝子組み換えで生み出された機能上まったく問題のない魚のほうが望ましいのではないだろうか」

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「人間はこれまで選択的な品種改良によってたくさんの種に干渉してきた」
人類の祖先はただ生存していくために必要に迫られて、野生、つまり自然の中に
もともとあった(生えていた、存在していた)「原種」を食った。
(「原種」の中にたまたま食うのに都合のいい種を見つけ、それに手をつけた。つまり「選んだ」)
そのうち単に「選ぶ」(消極的・受動的)だけではなく、選んだものを「育てる」
(積極的・能動的)ようになった。それが「選択的な品種改良」(つまり「栽培」)の
始まりだった。
それは(初めは「必要に迫られて」ではあっても)自分の都合(好みなど欲望)でどんどん
「選択的な品種改良」を積み重ねることになり、米なら「コシヒカリ」など
(食肉牛なら「霜降り」など)にたどり着いた。
でも、これら「選択的な品種改良」は膨大な手間と時間がかかった。
ところが、現代の科学技術の進歩はこれを魔法のように、しかも動物の場合
「人為選択による品種改良で重い障害をもつ」ことなく行えるようになったという
(しかも「その動物の全体のことを気にかけるのではなく、一個の遺伝子だけをいじる」
つまり特定の一個体の「遺伝子操作」でその個体だけ変えられる。
もし障害が現ればその個体の障害遺伝子を取り除けばいいのだ。
「選択的な品種改良」がヒトに適用されたら「デザイナーベビー」。
それは「優生保護法」のような消極的・受動的なものではなく、積極的・能動的なもの。
そこでは「優れたヒト」が目的とされる。
「優れたヒト」とは何だろう?クワバラクワバラ…)
人間はいまや「遺伝コードを直接操作できる力を手にした」ので、
「もう何世代という膨大な時間をかけることなく、あっという間に種の形や
性質を変えることができる」
コンピュータを用いたデジタル技術と同様、このバイオ技術、生命操作技術は
著者のいうように「まったく新しい時代の幕開け」なんだとつくづく感じた。
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「ブルドッグ」も「出目金」も、私はナマでもテレビでも何十年も見ていない。
(愛嬌のあるブルドッグや出目金が「人の都合に合わせた交配」で作られたとは知らなかった。
《知らないことは無邪気でおれるけれど、恐ろしいことだと思った》)
最後の言葉、「人為選択による品種改良で重い障害をもつようになった魚より、
遺伝子組み換えで生み出された機能上まったく問題のない魚のほうが…」
にも考えさせられた。
(ヒトという動物は他のすべての生きものを自分の支配下においている。
自らの欲望の実現のために、彼らを道具にしている現実を受けいれざるを得ないとすると、
ヒト同士が争い、勝った者が負けた者を支配するのはある意味当然の仕方がないことかもしれない。
《この理屈からすれば格差の存在は当然、自然となる》
「人為選択による品種改良で重い障害をもつようになった魚より、遺伝子組み換えで生み出された
機能上まったく問題のない魚のほうが…」かもしれない)

風立つや 風にうなずく 萩その他 楠本憲吉