はじめに
こんにちは、Musubi機能開発チームの北川です。
フルリモートでチームを運営していると、大きな問題はなくコミュニケーションも回っている。 それでも、本当に踏み込んだ議論ができているのだろうか、と感じることはないでしょうか。
私自身、スプリントプランニングやレトロスペクティブを実施し、メンバーとの1on1も定期的に行っています。それでも、この問いに対してはっきりと「できている」と言い切ることができませんでした。
議論が発散して場に沈黙が生まれると、進行役として場が止まらないよう、つい無理に結論づけてしまったり、曖昧なまま次の話題に進めてしまうこともありました。
そんな違和感をEM(@kubop1992)と話していたところ、システムコーチングを受けてみないか、と声をかけてもらいました。
この記事では、システムコーチングを通じてチームの関係性がどのように変化していったのか を書いてみたいと思います。 あくまで私たちの一つの事例ではありますが、同じような課題を感じているチームの参考になればうれしいです。
システムコーチングとは?
「システムコーチング®*1」は、チームの関係性を一つの「システム」として捉え、その「システム」に対して働きかけるコーチングです。
例えば「沈黙が生まれると誰かが無難な意見を出す」「進行役が場を回し続ける」といった振る舞いも、システムから発せられるサインとして捉えます。
コーチはこうしたサインを感じ取り、問いかけやワークショップ、比喩表現(形や質感、動物など)を使いながら、捉えにくい感情や関係性を言語化し、メンバー自身の気づきを促します。
外から答えを渡すのではなく、メンバーが自分で気づくことで、チームの関係性が変わっていく考え方です。
Design Team Alliance
システムコーチングは、EM の久保田(@kubop1992)にコーチをお願いし、メンター・メンティーの関係性である北川・竹本の2人が月1〜2回、全5回のペースで受ける形で進めました。
「2人のシステムは、どんな雰囲気で、これからどうしていきたいですか?」
最初に取り組んだのは、私たちの関係性のあり方や取り決めを言語化する Design Team Alliance(DTA) というワークでした。
対話の進め方や互いの期待を出し合い、これからどんな関係でいたいかをあらかじめ話し合っておくワークです。
ここで出てきたのは、次のような言葉でした。
- 正直にフィードバックし合いたい
- ちゃんと踏み込んで話したい
一方で、私は内心こんなことを考えていました。
- 本当に踏み込んで大丈夫だろうか
- 率直に話した結果、相手を傷つけてしまわないだろうか
普段の業務では、関係性そのものを話題にすることはほとんどありません。 DTAとして合意はしたものの、どこまで踏み込んでよいのか手探りで、沈黙も多かったように思います。
乗り越えるべき壁「エッジ」の認識
そんな空気を感じ取ったのか、コーチがこんな言葉をかけてくれました。
「2人は言葉を選びながら会話していますね。エッジを感じます。」
システムコーチングでは、既知の領域から未知の領域へ踏み出そうとするときに感じる心理的な壁のことを エッジ と呼びます。
例えば、
- 本当は発言したいけれど、少し躊躇してしまう
- 新しいやり方を試してみたいけれど、不安を感じる といったものです。
システムコーチングでは、このエッジをチームが乗り越えるべき壁として捉えます。 チームがエッジを認識し、なぜエッジが生まれているのかを探り、乗り越えるために何ができるのかを一緒に考えていきます。
具体的な内容は割愛しますが、メンター・メンティーとしての役割の違いからくる遠慮や、お互いの過去の経験について、少しずつ対話を深めていく時間でした。
役割の関係性から、人と人の関係性へ
セッションを重ねる中で、「役割としての関係性」だけでなく、「人としての関係性」が少しずつ表に出る場面が増えていきました。
ある回では、第三者の視点 というワークを行いました。
「私たち2人のシステムを、何でも知っている第三者が見ているとしたら、何が見えていると思いますか?」
という問いから、
- 第三者が見たときに、お互いが「ここが少し苦手だな」と感じていそうなこと
- 第三者が見たときに、相手のどんなところに気を遣っていそうか
などを、二人の関係性の外側から眺める形で言語化していきました。 「第三者がどう見ているか」という視点に立つことで、普段は言いづらいことも比較的フラットに話せたのが印象的でした。
このあたりの回から、コーチからも「1回目と比べて、沈黙が少なくなりましたね」というフィードバックをもらうようになりました。 実際、少し言いづらいテーマでも、遠慮せずに話せるようになってきた感覚がありました。
また、終盤のセッションでは、仕事だけで完結する関係ではなく、 「その人の人生全体がどうなっていたらうれしいか」という視点で互いを見るようになり、
- お互いにとって“人生トータルでいい状態”とはどんな状態か
- そのために、自分はどう関わりたいと思っているのか
- どんなことに幸せを感じるのか
といった話題も自然に出てくるようになりました。
この頃には、仕事上のメンター・メンティーという役割の関係というより、 「人としてどうしたらこの人は幸せに働けるだろう」と考える関係へと変わってきていたように思います。
関係性をチームにどう影響させるか
最後のセッションでは、私たち2人の関係性を起点に、チームへどう良い影響を与えていくかというテーマに移っていきました。
その影響を形にするために、SMARTゴール(Specific / Measurable / Achievable / Relevant / Time-bound) で目標を整理するワークを行いました。
その前段として、
- 2人の間にメンバーが入ったとき、どんな状態になっているとよいか
- その関係性が、別のメンバー同士の関係性にも広がっていくにはどうすればよいか といった視点から、チームへの影響のあり方について対話しました。
その結果、次のようなアクションが挙がりました。
- ハドルを使い、定期的に「AIもくもく会」を開催してみる
- まずは2人で小さく始め、興味を持ったメンバーが自然に参加できる場にする
これは単に勉強会を開催するというより、私たちを起点に雑談や悩みを気軽に共有できる「ゆるい接点」を増やしたい、という意図から生まれたアイデアでした。
システムコーチングのセッションでは、関係性という抽象的なテーマを扱うことが多いのですが、最終的には「では今後何をしていくか」という具体的な行動まで落とし込んでいく点がとても良いと感じました。
おわりに
最初は「チームで深い議論ができているだろうか」というモヤモヤから始まりました。
スプリントイベントや1on1など、コミュニケーションの場はすでにありました。それでも振り返ってみると、それまでの会話はどこか「役割としての会話」だったように思います。
以前は、議論が発散したり沈黙が生まれると、進行役として議論を収束させる方向に話をまとめてしまうことがありました。
また、沈黙が生まれると以前は「議論が止まった」と感じていましたが、今は「まだ言葉になっていないものがある」と捉えるようになりました。一緒に言語化していけばよい時間だと思えるようになったのは、自分たちにとって一つの変化でした。
システムコーチングでは、チーム全体を一つのシステムとして捉え、そこに何が起きているのかを見ていきます。 そうした視点を持ちながら対話を重ねることで、チームとしての議論の仕方そのものも少しずつ変わってきたように感じています。
今回の取り組みは、社内に知見を持つメンバーがたまたまチームにいたことから始まりましたが、関係性を見直すよい機会になれたと感じています。あくまで一例にすぎませんが、同じような違和感を抱えているチームの参考になればうれしいです。
*1:システムコーチング®︎ は CRR Global Japan 合同会社の登録商標です