
カケハシの主力プロダクトといえば、クラウド型電子薬歴『Musubi』。現在、『Musubi』を活用した新たなビジネスの立ち上げがハイスピードで進んでいます。
そのプロジェクトを担う「PE新規サービス開発チーム」から、プロダクトマネージャー(PdM)の糟野、エンジニアの荻野と種岡に話を聞きました。
患者さまに治療意識を高めていただくためのプロダクト開発とは?

──── まずは、「PE」とは何か、説明してもらえますか?
糟野:PEとは、「Patient Engagement」の略称で、患者さん本人が自身の治療や健康維持に積極的に関わっていく姿勢を表した言葉です。
PE新規サービス開発チームは、この Patient Engagement の向上に寄与するプロダクト開発を担っています。
カケハシはすでに複数の薬局向けDXプロダクトを展開しています。そのアセットをもとに、 Patient Engagement の向上を実現するための、新たな患者アプローチの仕組みを生み出すことが、私たちのミッションです。
──── 新規サービスをつくるということ?
糟野:そうですね。ただし、まったく新しいプロダクトをつくるのではなく、既存のプロダクトへの機能追加を通じて新たな価値を作り出していく方針をとっています。
たとえば、カケハシの主力プロダクトであるクラウド型電子薬歴『Musubi』、服薬フォローシステム『Pocket Musubi』には、それぞれ専任の開発・運用チームがついていますが、私たちはそれとは別の立ち位置から、各プロダクトの一部を「間借りする」ような形で Patient Engagement 観点の新機能開発を行っています。

荻野:カケハシのプロダクト群のなかで、Patient Engagement につながる何かを仕掛けていくイメージですね。
──── チーム構成はどうなっていますか?
糟野:私がPdMで、荻野と種岡の2名がエンジニア、エンジニアリング・マネージャーが1名です。他のプロダクトチームと比較して小規模ですが、細かく丁寧にコミュニケーションがとれることは少人数ならではの利点だと思います。

種岡:一例を挙げると、薬局基幹システム『Musubi』と、患者フォローアプリ『Pocket Musubi』の両者をつなぎ、患者さまへの新たな価値を生み出すことは、このチームだからこそできるチャレンジです。薬局・薬剤師視点と患者視点、それぞれの知識を押さえることは容易ではありませんが、その難しさ以上に、新たなサービスの可能性に挑めるモチベーションの大きさを実感しています。
荻野:私も種岡もエンジニアとしてそれなりに長く経験を積んできています。だからこそ、他チームのプロダクトに付随する開発にもコミットし、その都度毎にドメイン知識をインプットして取り組むことに抵抗はありません。むしろ、特定のプロダクトに集中しているチームにはできないことへのチャレンジにワクワクしています。
ロードマップにはないUX開発が生んだ、新たな患者価値と事業成長

──── 機能開発の進め方や具体例を教えてもらえますか?
荻野:このチームの機能開発は、プロダクトロードマップ上のものではなく、ある意味で実験的な、患者価値の可能性を探るためのものが多くを占めます。あえて言うならば、運用までカバーしているプロダクトチームでは優先度を上げづらいテーマを担うことが期待されています。
糟野:具体例として、『Musubi』の『健康アドバイス』という機能について紹介します。
健康アドバイスとは、薬局における薬剤師の服薬指導に、患者さま向けの医療コンテンツを使って+αの情報提供を行う機能です。
(※服薬指導:薬剤師が患者に、薬の使用方法や効果、副作用などの情報を説明すること)
Musubiには、カケハシの薬剤師メンバーが監修した、イラスト付きで分かりやすい、患者さま向けの医療コンテンツが入っています。内容は、一歩踏み込んだ服薬アドバイスや、生活習慣、関連する病気の情報など多岐に渡ります。
そのコンテンツの中から患者さま一人ひとりの処方データに応じて最適なものが提示され、薬剤師と患者さまのコミュニケーションをサポートする、という仕組みです。

荻野:処方データに基づいてコンテンツを表示するかなど、薬剤師メンバーが一つひとつ高い制度で設定していたはずだったのですが、健康アドバイスの利用率は期待値に至ってないものが少なくありませんでした。
糟野:従来のMusubiは、薬剤師の業務フローに合わせて服薬指導の最後に健康アドバイスが表示されていました。課題発見のためのユーザーヒアリングや薬局の現場見学を行なうことで見えてきたのが、お薬を渡したあとに服薬指導で提示されたものを使用してコミュニケーションをあらためて行うのは難しい、という現場の実情だったのです。「患者さま対応に追われる薬剤師」と「いち早くお薬の受取を済ませたい患者さま」という構図です。もちろん薬剤師や患者さまによって異なりますが。
そこで、健康アドバイスは、服薬指導の+αとしてだけでなく、通常の服薬指導の一部として使うことができるようにしたほうが良いのではないか? という仮説のもと、健康アドバイスの画面表示を一部変更し、UXのリデザインを行いました。
荻野:仮説検証を目的とした開発でしたが、結果として利用率が明らかに向上し、今ではMusubiの基本仕様となっています。既存プロダクトの一部を「間借りする」というのは、このようなイメージです。その中で、患者さまへの提供価値をより大きく、治療効果や健康意識をより高めるための機能開発に特化しているのが、このチームの特長です。

──── 開発して終わりではなく、その機能が事業・サービスにどう貢献するかにこだわっていますよね。
種岡:私たちに求められているのは、サービスを通じて一人でも多くの患者さまに価値を提供し、治療に対する意識変革やアクションにつなげていただくためのプロダクト開発です。そしてそれが、ビジネスとしての成功に直結しています。
たとえば、薬剤師の処方対応・服薬指導をサポートする「Musubi」と、LINEアプリで患者さまにダイレクトにメッセージ配信できる「Pocket Musubi」、2つのプロダクトをつなぐ機能開発を行ったのもその一つ。薬局の問診票に回答するだけで、Pocket Musubi への登録が完了する仕組みへとアップデートしました。
来局から服薬フォローまでシームレスに行えるようになったことで、Pocket Musubiの患者利用数は着実に伸びてきています。
3ヶ月後の未来すら予測できない、だからこそおもしろい
──── 開発の出発点はどこになるのでしょうか?
糟野:ケースバイケースですね。
例えば、社内のビジネスサイドにもPEの事業化を担当するチームがあり、薬局や製薬業界など専門性を持つメンバーが所属しています。彼らが業界の動向やニーズをキャッチし、「カケハシのアセットを使ってこんなことができるんじゃないか?」と発案することが出発点になることもあります。
また既存プロダクトの定量指標に基づく改善検討をきっかけに、ボトムアップで機能追加の議論が始まることもあります。

糟野:どこに可能性があるのかも分からないので、荻野と種岡が開発を進めている際に、私が別のアプローチを検討することもあります。
種岡:とにかくスピード勝負です。PdMの糟野がユーザー目線でニーズを調査し、我々エンジニアが既存のアセットを活かして最短でつくっていく。チームで議論を重ね、リリース可否やタイミングを柔軟に判断していく。少数だからこその動き方を日々続けています。
荻野:3ヶ月後にやっていることの予想ができないですよね。
糟野: 常にゼロベースでベストを追求できる、ということだと思います。
荻野:これからも懲りずになんでもトライしていきましょう。

──── 不確定要素が多いことにストレスはありませんか?
種岡:私は前職を含めて新規事業をずっとやってきて、うまくいかないことのほうが多かったので、「新規事業はそういうものだ」と思っています。1回の失敗で「もうダメだ」とはなりません。
むしろ、手探りの機能開発から新たな事業が立ち上がる可能性にモチベーションを感じています。
荻野:社内ベンチャーのような位置付けでもあり、かつカケハシのアセットをフル活用しながら実験的なことができる。好奇心が満たされるのがいいところです。
先が見えているものを作るよりも、未知の可能性にチャレンジするほうが楽しいですよね。
種岡:そういう意味では向き・不向きはあるかもしれませんね。
事業にコミットし、自走できるエンジニアが幸せになれる環境

──── 不向き、という言葉が出ました。不向きなのはどのようなタイプ?
種岡:ある程度ロードマップを引いて「今日はこれ」「明日はこれ」とタスクを組んで、きちんと運用していくマインドセットの方は、チームの方向性にあわないかもしれません。
荻野:私自身はそういうことが苦手なタイプなので、非常に尊敬するのですが。
種岡:曖昧さへの耐性がないと苦しいかもしれません。
荻野:やるべきことが明確になるまで手を止めているのではなく、その中でもやれること・やるべきことを自身で考え、自走できる、というか。
糟野:先日も、進行中のプロジェクトについて、このタイミングで方向転換することは工数的に可能かどうか相談させてもらったのですが、「やれなくはないので、フラットに判断してください」という心強い返答をいただきました。
お二人の寛容さとエンジニアリングマネージャーの柔軟な判断が前提にあるわけですが、こういうことが頻繁に起こりうるチームです。
糟野:プロダクトの都合で、患者さまへの提供価値の最大化という目的がズレてしまうのは絶対に避けなければなりません。ユーザーである患者さま、薬局・薬剤師の方々の解像度を上げ、ユーザーの代弁者であり続けることが必要です。

糟野:そのためにこだわっているのは、薬局見学です。ユーザーヒアリングからは見えてこない本質的な課題は現場にあります。実際に薬局に足を運び、関連する業務を自分の目で見て、何が必要か想像する。それがユーザーの解像度を上げる唯一の方法だと考えています。
幸いなことに、ユーザー価値を追求する高潔な姿勢が求められる環境です。歴史あるプロダクトで、純粋に新規事業に専念できる場所はなかなかないと思います。
──── 最後に、どんなエンジニアと一緒に働きたいか教えてください。
種岡:「プロダクトを開発したい」というよりも「ビジネスを生み出したい」という考えのエンジニアが楽しく成果を出していけると思います。たとえば、「エンジニアとして一通りの経験をしてきたので、新しいフェーズの仕事にチャレンジしたい」という方は、私たちと同じ目線でご一緒できるはずです。

荻野:もちろん、基礎的な実装力は求められます。カケハシのプロダクトの中身を覗いて、担当チームに負荷がかからない方法で新機能を実装していくことは意外と難しいのです。
種岡:私自身、これからもいろいろなものを吸収していかなければならないと思っています。ある意味、“雑食感”というか。こういうスタンスに共感してくれるエンジニアが来てくれたら、嬉しく思います。
荻野:自分のときのことを振り返ると、このチームに加えてもらってしばらくの間は、キャッチアップはとても大変でしたね。一定の基準を乗り越えられるまで、踏ん張れる胆力のある方のほうがいいかもしれません。
糟野:そうですね。PdMとしては、やはりビジネスをつくることに関心があることです。基本的に、患者さまをはじめとしたユーザー価値や事業の方向性が、プロダクト開発における意思決定の軸になります。
前述の通り、急な方向転換やプロジェクトの見直しが頻繁に起こる環境です。「何のためのプロダクトか?」を考えてものづくりできない方にとっては、ストレスフルな環境だと言うこともできると思います。
しかし、ユーザーにとって本当に価値のあるものを届けたいと考える方にとっては、なかなか得られない幸せな環境だと思っています。
プロダクトの先にあるのは、次世代の医療を支える新たな事業の立ち上げです。そこにコミットし、やりがいを感じることのできるエンジニアを、ぜひお迎えしたいですね。
—ありがとうございました!

カケハシのエンジニア採用についてはこちらをご参照ください。
<プロフィール>
糟野貴史(プロダクトマネージャー)
2014年、A.T.Kearneyに新卒入社。その後Boston Consulting Groupなどでコンサルティング業務にて中計策定やマーケティング戦略策定、新規事業立案などに従事。2019年、EdTech系スタートアップのatama plusに入社し、カスタマーサクセスや事業企画を担当した後、プロダクト領域に転身しプロダクトマネージャーとして要件定義や開発プロジェクトマネジメントを担当。2023年、カケハシに入社。プロダクトマネージャーとして新規事業向けのプロダクト開発の要件定義などを担当。趣味は登山、ドライブ。
荻野淳也(ソフトウェアエンジニア)
学生時代の専攻は数学。研究者を目指していたがドロップアウトし、趣味でプログラミングをやっていたのでそのままソフトウェア業界へ。ジャンルも規模もさまざまな環境で四半世紀以上にわたってソフトウェア開発に関わる。複数のスタートアップで創業メンバーや技術責任者を務めていたが、2015年に突然コーヒー屋を開店。6年間運営するも、コロナ禍の影響で、再びソフトウェア業界へ。1社を経て2023年10月にカケハシ入社。現在はICとして新規事業のサービス開発に従事。5頭のネコと暮らしている。
種岡篤志(ソフトウェアエンジニア)
東京農工大学大学院を修了後、Web系エンジニアとして複数の企業でさまざまな経験を積む。カカクコムでは、新規サービスの立ち上げに携わり、エンジニアとして事業成長に貢献する醍醐味と難しさを学ぶ。2019年に、医療業界と新規事業への強い関心から株式会社カケハシにフルスタックエンジニアとしてジョイン。toC向けのサービス『Pocket Musubi』の開発などに従事し、サービスの改善と成長に尽力。現在は新規事業のサービス開発を担当。