こんにちは。カケハシで生成AI開発のプロダクトリードをしている高梨です。
最近、今更ながらキングダムと ONE PIECE を全巻揃えるかどうかで悩んでいます。 しかしそれは終わりなき戦いの始まりであると同時に、安息の時(睡眠時間)の終焉でもあるためなかなか覚悟が決まりません。
ちなみに ONE PIECE は109巻と110巻だけ買いました。 それ以外の巻とキングダム全巻がカートに入ったまま2ヶ月が経過しました。
閑話休題
今日は SaaS is Dead について、カケハシのプロダクト開発チームが考えていることことを書こうと思います。 SaaS is Dead の文脈をカケハシがどのように捉え、医療という Vertical SaaS としてどのようにプロダクト戦略に転換しているかを説明します。
よければお付き合いください。
"SaaS is Dead" とは?
すでに多くの解説記事が出回っているのであまり細かくは語りませんが、"SaaS is Dead" とは、従来のSaaSモデル自体が完全に消滅することを意味するわけではありません。むしろ、SaaSが新たな段階へと進化する必要性を示しています。
"SaaS is Dead" が広く世に知られるようになった象徴的なきっかけは、やはり Microsoft のCEOであるサティア・ナデラ氏の発言かと思います。日本語訳ですが貼っておきます。
複数のSaaSアプリケーションを理解する"エージェント層"を作るわけです。これまでSaaSアプリケーションはビジネスロジックとCRUD(Create/Read/Update/Delete)の塊でしたが、そのCRUD部分をアプリの外側でオーケストレーションする形になるのが大きな変化だと思います。
出典:「SaaSは死んだのか?」サティア・ナデラが語るAI時代のクラウドビジネス https://note.com/daka1/n/n6ba507aa0b1b
また、"SaaS is Dead" をわかりやすく説明するために Gemini と壁打ちしていたのですが、面白い表現を使っていたのでこちらも貼っておきます。

いいですね。「戦いの叫び」。
正直戦いの叫びかどうかはわかりませんが、説明もそれなりに納得感があります。さすがは Gemini です。
要は、SaaSという独立した個別アプリケーションを人間が切り替えながら利用するのではなく、エージェントという共通のインターフェースを介して各SaaSをエージェントが操作する。そのような前提で、アプリケーション、UI、UXの新たな最適化と、プロダクトの付加価値の再分配が行われるということですね。
AIエージェントとSaaSの関係性
前述の通り、AIエージェントの登場により、従来の個別アプリケーションとしての動作していたSaaSの構造は大きく変わろうとしています。
一方で、基本的にはエージェント開発 = 専用エージェント化の流れだと思っています。
例えば、多くの読者の方も使っているであろう Cursor や Devin はコーディングエージェントですが、仮に弊社の薬局向けSaaSがMCPを公開したとて、Cursor や Devin が薬局向けSaaSを利用して薬局業務を代行することはできません。
Cursor や Devin では医療業界のシステムとして満たすべきレギュレーションや、医療というハイリスクユースケースにおいて求められるAIの品質特性を満たしていないからです。(この点は後述します)
つまり、ターゲットとする業界や業務、市場における自社のポジションによってAIエージェントとの関係性と取るべきプロダクト戦略は変わってくるということです。

カケハシが描く薬局向けAIエージェント
さて、ではカケハシが描くエージェント時代のプロダクト戦略をご説明します。
カケハシは薬局DX領域でマルチプロダクトを提供しています。 しかもそのプロダクト群は、
- 基幹系, 薬歴システム Musubi
- 在庫管理システム Musubi AI在庫
- 患者タッチポイント Pocket Musubi
- データ分析, 経営支援システム Musubi Insight
- 薬局POSレジ Plat's などなど
と薬局の業務フローをかなり網羅する形でカバーしています。 この、これまでに築いてきたSaaS基盤が、AIエージェント時代における大きな競争優位性となります。
マルチプロダクトを提供していることで、AIエージェントが各製品を横断的に繋ぎ合わせ、薬局業務を広カバレッジで統合することが可能です。これは単一プロダクトを提供する企業では実現が困難です。
単一プロダクトしか持たない企業がエージェントを開発しても、他社のSaaSがMCPを公開しない限り、それらのシステムを操作することはできません。そして他社からすると、市場に十分な浸透をしていないAIエージェントのためにわざわざMCPを公開するメリットは少ないです。しかし、マルチプロダクトを自社で提供するカケハシであれば、この制約を受けることなく、包括的なエージェントソリューションを構築できます。

医療領域特有の参入障壁
さらに特徴的なのは、医療領域という業界には高い参入障壁が存在するということです。この領域では、SaaS自体はもちろんのことですが、エージェント側にも厳しい要件、品質特性が求められます。
- 医療安全への配慮
- 各種業法への対応
- 個人情報保護法、患者プライバシーの保護
- 医療従事者の業務フローへの深い理解
- 安全性が非常に重要故のAIの透明性、説明可能性、コントロール性 などなど
医療領域では、AIの品質や安全性に対する要求水準が他業界と比較するとかなり高く設定されています。この厳格な安全基準は、AIエージェントを構築できるだけの高い技術力や資金力を有するTech GiantやAI領域に特化したDeep Tech企業にとっても、慎重な参入判断を促す一因になり得ると考えています。また換言すると、AIによる業界貢献を目指すカケハシにとっては、むしろ十分に深く考え真摯に取り組むべき領域とも言えます。
来る Agentic Web/OS時代へ
近い将来、Agentic Web/OSの時代が到来すると予想されます。この時代には、様々なエージェントがWebやOS上で相互に連携し、ユーザーのタスクを自動化・最適化することになるでしょう。
しかし、前述の通りエージェント開発 = 専用エージェント化の流れは Agentic Web/OS でも変わらないと考えるため、Agentic Web/OS が直接的に医療のタスクを自動化・最適化するわけではないと考えます。 あくまでも医療タスクを処理するのは医療エージェントなのです。
この時代において、カケハシはAgentic Web/OS のバックエンドで薬局向けエージェントとして機能し、日本の医療を支える薬局向けエージェントサプライヤーになることもできると考えます。

この変化は、まさにカケハシが志向する、日本の医療を変えるプラットフォーマーへの進化です。
日本のすべての薬局に対して薬局向けAIエージェントを提供することで、薬局で働く医療従事者の負担を軽減し、患者さんにより良い医療サービスを提供することが可能になると考えています。
"SaaS is Dead" は脅威ではなく最大のチャンス
確かに "SaaS is Dead" は一面では脅威です。従来のSaaSモデルに安住していては、競争力を失う可能性があります。
しかし、カケハシのように、医療という規制が厳しく参入障壁が高い業界でコツコツと地道な努力を重ね、信頼を積み上げ、幅広い領域で面を押さえてきたプレイヤーだからこそ手にすることができる一世一代のチャンスでもあります。
私たちは、この歴史的な変化の波を捉えて、日本の医療を根本から変革したいと考えています。
先日、シリーズDの資金調達についてもプレスリリースを出させていただきました。 その中でも触れている通り、カケハシでは日本の医療の未来を創る仲間を幅広く募集しています。 医療領域は確かに難しいことも多いですが、だからこそ大きな社会的インパクトを生み出せるやりがいに満ちた領域でもあります。 日本の医療を変革する、この歴史的なタイミングでのチャレンジに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお声がけください。