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fed権力衰退その1

 

 

## **プロジェクト2025:米国の金融資産とFRB改革、金本位制への回帰(詳細解説)**

 

### **序章:プロジェクト2025が目指す金融秩序の大転換**

 

**はじめに:なぜ今、FRB改革が保守派の最重要課題なのか**

 

2025年、米国が直面する可能性のある最も根源的な変革の一つは、ホワイトハウスや議会の動向そのものではなく、米国の金融システムの根幹をなす連邦準備制度FRB)の在り方を巡る思想的対立である。ヘリテージ財団が主導する保守派連合が策定した包括的な政権構想「プロジェクト2025」は、単なる政策の変更リストではない。それは、建国以来の「小さな政府」という理念に基づき、20世紀に進んだ行政国家(Administrative State)の構造そのものを解体し、権力を大統領へと集約させようとする壮大な試みである。その試みにおいて、金融政策を司るFRBは、最も重要かつ象徴的なターゲットとして位置づけられている。

 

なぜなら、現代の保守派、特にリバタリアン伝統保守派にとって、FRBは二つの「大罪」を犯している存在だからだ。第一に、その「独立性」である。行政府からの独立を盾に、選挙で選ばれていないテクノクラートが経済を操作することは、民主的統制の原則に反すると彼らは主張する。第二に、その「権限の肥大化」である。本来の使命であったはずの「物価の安定」を超え、「完全雇用の達成」という曖昧な目標を掲げ、量的緩和QE)のような非伝統的金融政策を駆使して市場に介入し、経済の自然なサイクルを歪めていると批判する。これは、政府が市場に過度に介入すべきではないという保守主義の核心的価値観と真っ向から対立する。

 

したがって、プロジェクト2025におけるFRB改革案は、単なる金融政策の技術的な調整ではない。それは、通貨発行権という国家の根源的権力を誰が、どのような哲学に基づいてコントロールすべきかという、統治の根幹に関わるイデオロギー闘争なのである。本稿では、この壮大な構想が個人の金融資産、そして世界の金融市場にどのような影響を及ぼしうるのか、その詳細を多角的に分析していく。

 

**「Mandate for Leadership」における金融政策の位置づけ**

 

プロジェクト2025の具体的な行動計画を示した922ページに及ぶ文書「Mandate for Leadership」[11]において、金融政策に関する提言は、経済政策全体の文脈の中で、極めて重要な要素として散りばめられている。特に、財務省(Department of the Treasury)や独立規制機関(Independent Regulatory Agencies)に関する章で、FRBの権限、目標、そして究極的な存在意義そのものに対する根本的な見直しが提唱されている。

 

その核心は、**「FRBの政治化」**と**「通貨の非政治化」**という、一見矛盾する二つの目標を同時に達成しようとする点にある。

 

* **FRBの政治化**: これは、FRBの独立性を事実上剥奪し、その政策決定を大統領の経済政策アジェンダに沿わせることを意味する。「単一行政府理論(Unitary Executive Theory)」を金融政策にも適用し、FRB議長や理事の判断を大統領の意向に従属させることを目指す[11]。これにより、金融政策は選挙で選ばれた権力者の直接的なコントロール下に置かれるべきだとされる。

 

* **通貨の非政治化**: これは、人間の裁量的な判断が入り込む余地をなくし、通貨の価値を客観的な指標(例えば「金」)に結びつけることで、政治家や中央銀行家による恣意的な通貨価値の操作を防ぐことを目指す。金本位制への回帰という主張は、この思想の最も純粋な表現である[12][13]。

 

この二つの目標は、「誰が金融政策をコントロールすべきか」という問いに対して、「短期的には大統領、長期的には誰でもない(市場の規律、あるいは金の規律)」と答えるものだ。このラディカルなビジョンは、第二次世界大戦後に形成されたブレトンウッズ体制以降の国際金融秩序、そして1971年のニクソン・ショック以降の変動相場制とフィアット通貨(不換紙幣)システムに対する、最も包括的な挑戦状と言えるだろう。

 

**本稿の構成**

 

この巨大なテーマを理解するため、本稿では以下の構成で詳細な分析を進めていく。まず第1部でFRB自体の構造改革案を掘り下げ、次に第2部で通貨のあり方そのものを問う金本位制への回帰という思想的背景と具体的な提案を分析する。最後に第3部では、これらの変革が我々の金融資産に具体的にどのような影響を与えるのかを、市場ごとに詳述する。

 

* **第1部:連邦準備制度FRB)の解体と再構築**

* **第2部:通貨の再定義:金本位制と自由銀行制度への回帰**

* **第3部:金融資産へのインプリケーション**

 

この分析を通じて、読者が2025年以降の不確実性の高い金融環境をナビゲートするための一助となることを目指す。

 

### **第1部:連邦準備制度FRB)の解体と再構築**

 

#### **第1章:単一行政府理論とFRBの独立性**

 

**「独立機関」という幻想:プロジェクト2025のFRB観**

 

プロジェクト2025の根底に流れる統治哲学は「単一行政府理論(Unitary Executive Theory)」である。これは、合衆国憲法第2条が定める行政権はすべて大統領に一身に属するという解釈であり、行政府内のすべての職員や機関は、大統領の直接的な指揮監督下にあるべきだとする考え方だ。この理論を推し進めると、FRBや証券取引委員会(SEC)のような「独立規制機関」の存在そのものが憲法違反である、という結論に至る。

 

プロジェクト2025の執筆者たちは、FRBの「独立性」を、エリート主義的なテクノクラートが民主的な説明責任から逃れるための「神話」あるいは「幻想」だと断じている[11]。彼らの視点では、FRBの金融政策は常に政治的影響を受けており、特に近年の気候変動リスクの考慮や人種間の経済格差是正への言及は、金融政策の範囲を逸脱した「政治活動」そのものであると批判される。

 

この考えに基づき、プロジェクト2025はFRBホワイトハウスの経済政策チーム、特に国家経済会議(NEC)の強い影響下に置くことを提言している。具体的には、大統領がFRB議長に対して政策金利の誘導目標を直接指示することや、FRBが実施する規制策定に対して大統領府が拒否権を持つことなどが含まれる可能性がある。これは、FRBを事実上、財務省の一部署のように機能させることを意味し、1913年の創設以来守られてきた(少なくとも建前上は)独立性を根底から覆すものである。

 

**歴史的背景:ジャクソン大統領から現代までの反中央銀行思想**

 

米国の歴史において、中央銀行に対する不信感は根深いものがある。19世紀、アンドリュー・ジャクソン大統領は「銀行戦争」を戦い、第二合衆国銀行の認可更新を拒否した。彼は、中央銀行を東部の金融エリートが西部や南部の農民から富を収奪するための道具だとみなし、「モンスター」と呼んで解体した。このポピュリスト的な反エリート、反中央集権の思想は、現代の保守派運動にも脈々と受け継がれている。

 

プロジェクト2025のFRB改革案は、このジャクソン流のポピュリズムの21世紀版と見ることができる。FRBを、ワシントンの「沼(the swamp)」の住人たちが、一般市民の利益を無視してウォール街や国際金融資本のために奉仕する機関と位置づけ、その特権を剥奪し、選挙で選ばれた大統領の手に権力を取り戻すべきだと主張するのである。この物語は、政治的には非常に強力な訴求力を持つ。

 

#### **第2章:デュアル・マンデートの撤廃**

 

**「物価の安定」という唯一の使命**

 

現在、FRBは米国議会から二つの使命、すなわち「物価の安定」と「完全雇用の最大化」を与えられている。これを「デュアル・マンデー(Dual Mandate)」と呼ぶ。しかし、プロジェクト2025は、この二つの目標を同時に追求することは不可能であり、むしろ有害でさえあると主張する。そして、FRBの使命を「物価の安定」のみに限定すべきだと提言している[11][13]。

 

この主張の背景には、マネタリスト経済学、特にミルトン・フリードマンの思想が色濃く反映されている。フリードマンは、中央銀行がコントロールできるのは長期的には物価(貨幣の供給量)だけであり、失業率を操作しようとすれば、かえって経済に不必要な混乱をもたらし、最終的には高インフレを引き起こすだけだと論じた。

 

「物価の安定」を唯一の目標とすることは、FRBの裁量の範囲を大幅に狭めることを意味する。物価が安定している限り、FRBはたとえ失業率が上昇していても、積極的に金融緩和を行う根拠を失う。政策運営はよりルールベースになり、中央銀行家の個人的な判断や経済予測モデルへの依存度は低下する。

 

**なぜ「完全雇用」目標は敵視されるのか:インフレ誘発論と道徳的退廃論**

 

プロジェクト2025の観点から、「完全雇用」目標が問題視される理由は二つある。

 

第一は、前述の**インフレ誘発論**である。雇用の最大化を意識するあまり、FRBはインフレの兆候が見えても利上げをためらいがちになる。その結果、インフレが常態化し、国民の貯蓄の実質的価値を蝕むことになる。保守派にとって、インフレは政府による「隠れた増税」であり、財産権の侵害に他ならない。

 

第二は、より哲学的な**道徳的退廃論**である。政府(この場合はFRB)が雇用の保証人であるかのような幻想を国民に与えることは、個人の自立と責任という、保守主義が重んじる価値観を損なうと彼らは考える。市場経済における失業は、産業構造の変化や個人のスキルとのミスマッチによって生じる自然な現象であり、それを金融政策で無理やり解消しようとすることは、経済の非効率性を温存し、人々の勤労意欲を削ぐ「社会主義的」な政策だと見なされるのである。

 

**政策的含意:利下げの制約と景気後退の深刻化リスク**

 

デュアル・マンデートが撤廃された場合、金融政策の運営は劇的に変化する。最も大きな影響は、景気後退局面での対応である。現在であれば、失業率の上昇やGDPの落ち込みが見られれば、FRBは予防的に利下げを行う。しかし、新体制下では、たとえ景気が悪化していても、消費者物価指数(CPI)が目標範囲内(例えば2%前後)で安定している限り、FRBは利下げに踏み切るための正当な理由を持たない。

 

これは、景気後退がより深く、より長くなるリスクを高める。市場が自律的に回復するのを待つしかなくなり、その過程で多くの企業倒産や失業が発生する可能性が否定できない。つまり、政策の目標は「景気の安定化」から「物価(通貨価値)の安定化」へと完全にシフトし、経済のボラティリティ(変動性)は高まることを許容する、という思想的転換が起こるのだ。

 

#### **第3章:量的緩和QE)の恒久的禁止**

 

**QEは「隠れた財政ファイナンス」であるという批判**

 

2008年の世界金融危機以降、FRB政策金利をゼロ近くまで引き下げた後、国債住宅ローン担保証券MBS)を大量に買い入れる「量的緩和QE)」という非伝統的金融政策に踏み切った。これは、長期金利を押し下げ、市場に流動性を供給することで経済を支えることを目的としていた。

 

しかし、プロジェクト2025の執筆者たちは、QEを極めて危険な政策だと断罪する。その最大の理由は、QEが事実上の**「財政ファイナンス」**、すなわち中央銀行が政府の借金を直接引き受ける禁じ手に限りなく近い行為だと見なしているからだ[13]。政府が発行した国債中央銀行が買い支えることで、政府は財政規律を失い、歳出を野放図に拡大させることができる。これは、最終的にハイパーインフレーションと通貨価値の崩壊につながる道だと彼らは警告する。

 

また、QEは資産価格(株価や不動産価格)を人為的につり上げることで、資産を持つ富裕層と持たざる者との格差を拡大させたと批判される。これは、市場の価格発見機能を歪め、健全な資本配分を阻害する行為だと考えられている。

 

**FRBのバランスシートを巡る思想的対立**

 

このQE批判の根底には、中央銀行のバランスシートの役割に関する根本的な思想的対立がある。

 

* **現代の主流派経済学**: FRBのバランスシートは、金融政策の有効なツールの一つである。経済危機時には、それを積極的に拡大(QE)することで市場の安定を保ち、回復期には縮小(QT)することで経済の過熱を抑える。柔軟なバランスシート操作は、現代経済の安定に不可欠な機能である。

 

* **プロジェクト2025(オーストリア学派的視点)**: 中央銀行のバランスシートは、本来、通貨の信認を担保するために必要最小限の資産(伝統的には金や外貨)を保有するだけにとどめるべきである。国債のような国内の金融資産を大量に保有すること自体が、市場への過剰介入であり、経済の歪みの源泉である。

 

この思想に基づき、プロジェクト2025は、QEの実施を法律で恒久的に禁止することを提言する。さらに、現在FRB保有している数兆ドル規模の証券ポートフォリオを、可能な限り速やかに、かつ市場に混乱を与えない範囲で売却し、バランスシートを危機以前の規模まで圧縮すべきだと主張する。

 

**QEなき世界の金融市場:流動性供給と市場安定化の新たな模索**

 

QEが禁止された世界では、金融市場の安定化メカニズムは大きく変わる。金融危機や大規模なショックが発生した際に、これまでのようにFRBが「最後の買い手」として市場に無制限の流動性を供給することはなくなる。市場参加者は、FRBの介入を前提としない、より自己責任に基づいたリスク管理を求められることになる。

 

これは、金融システムの脆弱性を高める可能性がある一方で、市場の規律を回復させる効果も期待される。投資家は、資産の펀더メンタルズをより注意深く分析するようになり、過度なレバレッジやリスクテイクは抑制されるかもしれない。しかし、危機発生時のパニック的な資産売却(ファイヤーセール)を防ぐ手立てが失われるリスクは極めて大きい。金利の急騰やクレジット市場の機能不全が、より頻繁に、より深刻な形で発生する可能性がある。これは、第3部で詳述するが、すべての金融資産の価格設定におけるリスクプレミアムの構造的な上昇を意味するだろう。

 

(第2部へ続く)

 

引用:

[1] 【解説】「プロジェクト2025」とは 米右派は第2次トランプ政権に ... https://www.bbc.com/japanese/articles/cz6wxqgg37xo

[2] 金融政策に関する決定事項等 2025年 - 日本銀行 https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/index.htm

[3] トランプに宛てた政権移行プラン「プロジェクト2025」とは何か? https://forbesjapan.com/articles/detail/72432

[4] 金融政策決定会合の運営 : 日本銀行 Bank of Japan https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm

[5] 【2025年4月30日~5月1日】金融政策決定会合の結果(要約) https://equity.jiji.com/fed_boj_watch/o/1120

[6] 日銀金融政策決定会合とは?株価への影響や速報を解説【2025年の ... https://kabukiso.com/column/idiom/nichigin_kinyuseisakuketteikaigo.html

[7] 2025年6月日銀政策会合レビュー~今回の結果を総括する https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2025/06/irepo250618/

[8] 【2025年】日銀が利上げするとどうなる?生活への影響や理由を解説 https://moneycanvas.bk.mufg.jp/know/column/usQ04fGFYaE4gSr/

[9] 【政策研究】財政危機時の緊急対応プラン2025 https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4675

[10] [PDF] 日銀金融政策決定会合(2025年7月) - 大和アセットマネジメント https://www.daiwa-am.co.jp/specialreport/market_letter/20250801_01.pdf

[11] Project 2025 - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Project_2025

[12] The Project 2025 Monetary Policy, Gold Standard and Federal ... https://blog.uwsp.edu/cps/2024/09/12/the-project-2025-monetary-policy-gold-standard-and-federal-reserve/

[13] Project 2025: The Federal Reserve - The Fulcrum https://thefulcrum.us/governance-legislation/project-2025-federal-reserve

 




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