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電子レンジで「思ったより冷たい」防ぐには? メーカーに聞く原因と上手な使い方

東芝ライフスタイルで電子レンジの「温めムラ」の解消方法を聞いてきました

最近は電子レンジで温めるチルドや冷凍食品が増えています。しかし、しっかり温めたはずなのに、なぜか中心がひんやり……ということも。じつは多くの人が、電子レンジの「温めムラ」で似たような経験をしているのではないでしょうか?

電子レンジは今やどの家庭にもある定番家電ですが、使いこなすにはちょっとしたコツが必要です。そこで今回は、東芝ライフスタイルのキッチンソリューション事業部 キッチン商品企画担当参事の澤将太さんに、電子レンジの「温めムラ」解消方法について聞いてきました。

電子レンジの仕組みについて説明する、東芝ライフスタイルのキッチンソリューション事業部 キッチン商品企画担当参事の澤将太さん

電子レンジの「温め失敗」はなぜ起こるのか?

電子レンジは「マイクロ波」と呼ばれる電波により食材を温める家電です。マイクロ波は食材の「水分」を振動させて、水の分子の摩擦で発熱する仕組み。このため、食材の中でも水分が多い部分ほど早く温まります。じつは、これぞまさに「レンジ特有の加熱ムラ」が起きる理由でもあります。

たとえば、ジューシーな骨付き肉をヒーターとレンジで温めた場合、ヒーター加熱なら肉も骨も同時に表面を加熱。その熱がじわじわと中心に向かって伝わります。一方、電子レンジはマイクロ波が庫内で反射することで、食材を全方向から加熱。さらに、マイクロ波は食材内部にも吸収されるので、表面だけではなく内部も同時に加熱が進みます。ただし、水分が少ない骨部分はあまり加熱されず、ひとつの食材のなかでも温度差ができてしまうのです。

ヒーターと電子レンジの加熱方法の違い

ところで、先に「電子レンジは食材を内側から加熱」と書きましたが、厳密にいえばこれは正しくありません。マイクロ波はまず食材の表面にぶつかるため、水分が多い食材ならばマイクロ波の多くは表面で熱に変換されます。そうすると、中心に向かうマイクロ波が少なくなり、内部まで熱が伝わりにくくなることも。マイクロ波は塩分がある液体に、より強く吸収される特性もあるため「カレーをかけたライスを温めたらライスだけ冷たかった」というのも同じ理由。つまり、食材の中心まで十分なマイクロ波が届いていないのです。

カレーライスでごはんだけ冷たいことがあるのも、マイクロ波の特性によるもの

カレーパンやクリームコロッケのように「外は水分が少なく、中身に水分が多い」という食材も失敗しやすい食材。この場合は、表面でほとんど吸収されなかったマイクロ波が食材中心で吸収されて熱を発生。「表面はぬるいのに、中は火傷するほどアツアツ」という加熱ムラにつながります。

さらに厄介なのが「冷凍食材」。じつは、カチコチに凍った氷はマイクロ波をほとんど吸収しません。水に対して氷がマイクロ波を吸収する割合は、なんと1/8,000ほど。ではなぜ電子レンジで冷凍食品が解凍できるかというと、マイクロ波が微量の水分も見逃さずに加熱をするからです。1/8,000とはいえ極微量ながら加熱する力はあるので、マイクロ波は少しの水分に吸収されて発熱。加熱された周りの氷が熱で溶け、溶けた水がマイクロ波と反応して加熱できるエリアが広がる……これを繰り返すことで食材全体を素早く解凍するわけです。

この説明でわかるように、冷凍食材を電子レンジにかけると、先に溶けた場所にすべてのマイクロ波が集中しやすくなります。「冷凍したミンチを解凍したら一部は煮えてしまったのに、一部は凍ったまま」といった失敗はこういった理由で起こります。

じつは「氷はレンジでほぼ溶けない」という特性を逆手にとった冷凍食品もあります。それがニチレイフーズの「冷やし中華」。角氷をゴロゴロ入れることで「麺と具を解凍しつつ、氷で冷たく食べられる」という珍しい製品です(画像:ニチレイフーズ)

温め失敗を回避するためにどうすればよいのか?

それでは、加熱ムラを避けるには具体的にどうすればよいのでしょうか? 原因をみてわかるように、電子レンジの加熱ムラは「マイクロ波が均一に吸収されていない」のが原因です。そこで、東芝ライフスタイルの澤さんは以下のような方法が有効だといいます。

食材の厚みは可能な限り厚すぎず、均一に

水分量が同じ場合、食材は表面から熱くなります。このため、山盛り状態にすると上ばかり温まる原因に。そこで、食材の厚みは可能な限り均一にしましょう。また、マイクロ波が中心まで吸収されるように、分厚すぎないことも重要です。茶碗に盛ったごはんのような食材は、中央を窪ませるといった工夫をするとよいでしょう。

マイクロ波が偏らない位置に食材を置く

マイクロ波は電子レンジ庫内で乱反射し、食材をさまざまな方向から加熱できます。ただし、反射のたびにマイクロ波は弱まるため、庫内のなかでもムラが発生するという弱点も。この問題は、食材を置く場所を工夫することで抑えることが可能です。

このとき重要となるのが電子レンジのタイプ。現在主流となっている「フラットテーブル」型は、マイクロ波を拡散させる「アンテナ」が庫内の床下でぐるぐると回転。マイクロ波が放射される方向がつぎつぎと変わるため、比較的ムラを抑えた加熱が可能です。ただし、マイクロ波が一番強いのはアンテナ直上。このため食材は「庫内どまんなか」に置くのが正解です。

一方、コンパクトタイプに多いのが「ターンテーブル」型の電子レンジ。こちらはマイクロ波を拡散させるアンテナはなく、庫内側面からマイクロ波をずっと同じ位置に放射しつづけます。そこで、この方式はテーブルを回転させて「食材を動かす」ことでマイクロ波のムラを抑えます。こちらは可能なかぎり食材を広い範囲で動かすことがポイント。なので、ターンテーブル型は食材を「ターンテーブルの外周ギリギリ」に置くのが正解になります。

フラットテーブルの破線は、アンテナ回転により移動するマイクロ波の軌道を表しています

さらに、いろいろ試しても加熱ムラがある場合、最終的には「加熱途中で中身を混ぜる」あるいは「食材の向きを変える」ことも有効になります。

弱い出力で時間をかけて温める

電子レンジの出力を弱くするのも、加熱ムラを抑える方法のひとつです。たとえば、コンビニなどでチルド食品を購入すると「500W:3分、600W:2分30秒」などと書いてあることがあります。澤さんによると、この場合は500Wで温めたほうが加熱ムラは少ないそう。低出力にすることでマイクロ波による集中加熱が軽減されるほか、時間をかけて温めることで伝導熱で加熱ムラを減らすことができます。

ただし「コンビニのお弁当も200Wとかで温めたほうがよいですか?」との質問には「200Wだとパワーが足りなすぎて、温まるまでに惣菜が乾燥してしまうかもしれませんね」とのこと。なにごともほどほどがいいようです。

それでは、ほとんどの製品に搭載されている「200W」といった出力はどのタイミングで使うかというと、ずばり解凍時。冷凍したミンチ肉などは200Wなどの低出力で時間をかけてゆっくり解凍することで「端は煮えているのに中央がカチカチ」という失敗を回避できるそうです。

高級オーブンレンジの自動モードなら温めムラはなくなるの?

「自動あたため」モードでは加熱ムラを抑えるために「センサー」と「制御」に工夫をしています

ここまでは電子レンジのマニュアルモードについての話でしたが、家庭によっては電子レンジに「自動あたため」「自動解凍」といった自動モードを搭載しているはず。

とはいえ、自動モードを利用しても、思ったように加熱できないという声もよく聞きます。電子レンジには2万円前後のものから20万円近い超高機能オーブンレンジまでありますが、高い製品ならば加熱ムラがおきない機能があるのでしょうか?

澤さんによると、各社高機能モデルはアンテナに工夫するなど、温めムラをより抑えるように進化させてはいるが、意外なことに電子レンジとしての基本機能にはそこまでの大きな違いはないとのこと。ただし、高価格帯製品の多くは「センサー」と「制御」に力を入れることで、加熱ムラの少ない自動モードを実現しているそうです。

東芝ライフスタイルが6月に発売したばかりのオーブンレンジ「石窯ドーム」の最上位モデル「ER-D7000B」
「大きな違いはない」としながらも、同社の上位モデルはマイクロ波を拡散させるアンテナが大型化するなど、細かなところで加熱ムラを抑制できる機能を搭載しています(画像:東芝ライフスタイル)

自動モードを搭載した電子レンジに用いられるセンサーは、大きくわけて「重量/蒸気(湿度)/赤外線」の3種類。それぞれに長所と短所があります。

・重量センサー
重さを計測して食材の量を把握するためのセンサー。比較的低価格な製品にも搭載されることが多い。庫内の温度に関係なく使えるものの、重い皿などを使用すると加熱しすぎることも。

・蒸気センサー(蒸気量と湿度を計測するタイプの2種類がある)
温めた食材から出る蒸気を検知し、湿度の変化から食材の量・状態を推測。蒸気を利用するため水分量が少ない食材が苦手。仕組み上、ラップを使用するとうまく測れない場合も。

・赤外線センサー
食材表面から放射される赤外線量を測定することで表面温度を検知。食品の実際の温度がわかるため、精度が高い。しかしオーブンレンジの場合は、オーブン使用直後は利用できないことも。

これらのセンサーのうち、高機能モデルに搭載されていることが多いのは赤外線センサー(複数のセンサーを搭載することもある)です。一般的な赤外線センサーは、庫内の中央部分をピンポイントでセンシングしますが、高価格帯の製品は多くが庫内全体を細かくチェックできるセンサーを搭載します。

たとえば、東芝ライフスタイルの最上位モデル「ER-D7000B」は、庫内を細かく分割することで「食材のどのあたりが高温になっているか」がわかるのです。

最新モデルER-D7000Bに搭載された赤外線センサー「ファインeyeセンサー」(画像:東芝ライフスタイル)

「庫内の細かな温度差が見分けられる」ことによるメリットは多数あります。例えば、異なる2品の料理を同時に温めるときに「温度の低い食品だけを強めに温める」といった制御が可能。もちろん、解凍モード時も、高精度センサーの恩恵を大きく受けています。

一般的な電子レンジの自動解凍モードは、まず高めの出力で解凍を開始し、食材の温度が上がってきたら「一部だけ煮える」失敗を防ぐために低出力に切り替えてゆっくり加熱します。このため、ずっと低出力で解凍する手動解凍よりは早いものの、解凍にはそれなりの時間が必要でした。

一方、高い解像度をもつセンサーを搭載していると、冷凍食材の温度をより正確に検知できるため、食材が「煮える」ポイントを見極めることができます。このため、高い出力で加熱する時間を長く確保でき、普通の解凍モードよりもスピーディーに、そして失敗なく自動解凍ができるのです。

ちなみに、澤さんによると赤外線センサーを搭載した製品はラップが使用可能なものの、ラップなしの方が食品の温度をより正確に検知でき、安定した仕上がりになりやすいそうです。

「乾燥が気になる」という場合は、ラップをお皿にふんわりとのせて食材だけにラップを密着させます(ラップの端は皿に密着させない)。こうすることで、ラップと食材上部が密着してセンサーが食品の温度変化を感知しやすく、加熱時の蒸気も逃がせるのだとか

電子レンジは「ボタンを押せば勝手に温めてくれる」手軽な調理家電の代表格。その手軽さから、多くの家庭では大人から子供まで気軽に使っているのではないでしょうか? そんな電子レンジも、少し仕組みを理解すれば、使い方のコツがわかり仕上がりが変わります。ぜひ、この記事をきっかけに自宅での電子レンジの使い方をチェックしてほしいと思います。

倉本 春