選挙のギモン:SNSはOK、メールはNG ネット選挙運動の「落とし穴」#選挙のギモン | 毎日新聞

ネット選挙運動、あなたは正しく理解していますか?
2013年にインターネットを使った選挙運動が解禁されてから10年以上が経過しました。当時はまだそれほど普及していなかったSNSも、今では私たちの生活に欠かせない存在となっています。X(旧Twitter)、Facebook、LINE、YouTube、TikTok――選挙期間中、候補者の投稿をシェアしたり、応援メッセージを送ったりする光景は、もはや日常的なものとなりました。
しかし、このネット選挙運動には意外な「落とし穴」が存在します。毎日新聞の報道によると、良かれと思って行った応援が、実は法律違反になってしまうケースが後を絶たないというのです。
SNSでの選挙運動はOK、でもメールはNG?その理由
公職選挙法では、「ウェブサイト等」と「電子メール」を明確に区別しています。ホームページ、ブログ、X、Facebook、LINE、YouTubeなどのSNSや動画共有サービスは「ウェブサイト等」に分類され、一般有権者でも選挙運動に利用することが認められています。一方で、電子メールやSMSを使った選挙運動は、候補者や政党にのみ許可されており、一般有権者が行うことは禁止されています。
では、LINEのメッセージ機能はどうでしょうか?実はこれ、「電子メール」ではなく「ウェブサイト等」に分類されるため、一般有権者も利用可能なのです。同じ「メッセージを送る」という行為でも、技術的な通信方式の違いによって扱いが異なるという、非常にわかりにくい状況が生まれています。
Xの新機能が「落とし穴」に?技術進化と法規制のズレ
ここで問題となるのが、SNSの機能進化です。例えばXには「ダイレクトメッセージ(DM)」機能があります。これはウェブサイト等の扱いとなり、一般有権者も利用可能です。しかし、同じXでも使い方によってはグレーゾーンに踏み込んでしまう可能性があります。
投票日当日に特定候補者の投稿に大量の「いいね」をする行為は、選挙運動とみなされる可能性があります。また、候補者のウェブサイトを印刷して配布することも違法です。ネット上では自由に見られる情報も、紙にした途端にルール違反になるという矛盾が存在するのです。
技術の進化に法律は追いつけるのか?いたちごっこの現実
ネットの世界では、次から次へと新しいサービスや機能が登場します。2013年の法改正時には想定されていなかったThreads、Blueskyといった新興SNSが台頭し、AIによる自動投稿やディープフェイク技術など、選挙運動のあり方を根本から変える可能性のある技術も登場しています。
このような状況を踏まえると、細かいルールをあれこれ規制しようとしても、永遠にいたちごっこになるのは明らかではないでしょうか。新しいサービスが出るたびに「これはOK」「これはNG」と判断を下し続けることは、現実的に不可能に近いと言えます。
シンプルな規制こそが最適解?「やってはいけないこと」だけを決める発想
そこで考えたいのが、規制のあり方そのものです。現在の公職選挙法は、許可されていることを列挙する「ポジティブリスト方式」に近い運用がなされています。しかし、技術進化が速いネットの世界では、「最低限やってはいけないこと」だけを明確に定め、それ以外は原則自由とする「ネガティブリスト方式」の方が自然ではないでしょうか。
例えば、「虚偽情報の拡散禁止」「なりすまし行為の禁止」「投票日当日の選挙運動禁止」「未成年者による選挙運動の禁止」といった本質的に守るべきルールだけを厳格に定め、それ以外のツールや方法については自由にするという考え方です。
まとめ:有権者が賢く選挙に参加するために
ネット選挙運動のルールは複雑で、正直なところ一般の有権者が全てを把握するのは困難です。しかし、それは規制の仕方に問題があるからとも言えます。
大切なのは、「応援したい候補者を当選させたい」という純粋な気持ちを持つ有権者が、うっかり法律違反を犯してしまうことのない、シンプルでわかりやすいルール作りです。技術の進化に振り回されるのではなく、選挙の本質である「公正な競争」と「有権者の自由な意思表示」を守るために、何が本当に禁止されるべきなのかを根本から考え直す時期に来ているのではないでしょうか。
ネットを活用して政治に関心を持ち、積極的に発信することは民主主義にとって歓迎すべきことです。規制が萎縮効果を生むのではなく、有権者が安心して参加できる環境を整えることこそ、これからの選挙制度に求められる姿勢だと考えます。