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ローソンとの提携の理由は? 株主優待、なぜ変える?――KDDIの第40期株主総会

 KDDIは19日、第40期定時株主総会を開催した。本稿では、代表取締役社長の髙橋誠氏による事業報告のほか、質疑応答の一部を紹介する。

 質疑には、髙橋氏のほか、取締役執行役員常務の最勝寺奈苗氏や竹澤浩氏、執行役員専務の吉村和幸氏らが応じた。

髙橋氏

第40期の事業報告

 第40期の事業報告として、売上高は前期比1.5%増の5兆7540億円。営業利益と、親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となったが、ミャンマー通信事業のリース債権に対する引当などの一時的な影響であり、それ以外の事業の業績は順調に進捗している。

 事業別の概況について、パーソナルセグメントではマルチブランド通信ARPU(ユーザーひとりあたりの平均売上)収入が増加に転じたものの、ローミング収入の減少などによって減収減益となった。

 auに加えて、サブブランドのUQ mobile、オンライン専用料金ブランドのpovoを展開し、さまざまなユーザーニーズに応えている。マルチブランドID数も順調に増加し、3115万IDとなった。

 5Gの契約浸透率は67.2%。データの利用量が増えたことでマルチブランド通信ARPU収入の増加につながり、1兆4814億円を記録している。

 注力領域のひとつである金融事業では、通信と金融がセットになった「auマネ活プラン」の提供を2023年9月にスタート。「au PAY」など金融サービスの顧客基盤は拡大しており、住宅ローンの融資実行額は累計で4兆円を突破。決済・金融取扱高は18兆円に到達している。

 ビジネスセグメントは増収増益となり、二桁成長を達成。既存の通信事業に加え、法人のDX推進を支援するマネージド・クラウド・BPO領域が堅調に推移しているという。

 IoT累計回線数は4100万回線を突破。3月には、IoTプラットフォームを提供するソラコムが東証グロース市場に上場していた。

第41期の取組み

 第41期の取組みとして、5G通信にデータドリブンや生成AIを加えた価値をコアに据え、新サテライトグロース戦略として推し進めていく。

 5G通信では、3月末までに業界最多となる9.4万局の5G基地局を開設。加えて、衛星との電波干渉が緩和されたことで基地局の出力アップが可能になり、Sub6のエリアが関東で2.8倍、全国で1.5倍に拡大した。

 生成AIの活用を見据え、インフラ基盤の構築に対して中長期で約1000億円規模の設備投資を行っていく。付加価値を生み出すことで顧客基盤を拡大し、第41期ではスマートフォンとIoT回線の合計で8200万超の回線数を目指す。

 4月にTOBが完了したローソンとの取組みについては、リモート接客などを通じた付加価値の創出が図られる。「auスマートパスプレミアム」から「Ponta パス」へのリブランドも予定されている。

 ビジネス事業では「IoT」「データセンター」「デジタルBPO」の3領域に注力し、さらなる成長を目指す。

 こうした取組みによる第41期の業績予想について、連結売上高は5兆7700億円、連結営業利益は1兆1100億円を見込んでいる。

質疑応答(事前質問)

――なぜローソンと資本業務提携をしたのか。

最勝寺氏
 自然災害や労働人口の減少など、日本が抱える社会課題の解決に貢献する企業であるためには、これまで以上にお客さま接点の強化が重要になると考えています。

 そのため、現在の日本においてライフスタイルのプラットフォームでもあり、コンビニエンスストアを事業展開するローソンさんとの資本業務提携を行いました。

 資本業務提携の目的は、AIやDXを利用した「リアルテックコンビニエンス」の実現、約1万4600店舗にも及ぶ立地を活用した新たな付加価値の創出、Ponta経済圏を活用したお客さま基盤の拡大とサービス強化となります。

 ローソンさんの業績は好調に推移していまして、AIやDXにより、さらに成長を加速できるものと考えています。

 ローソンさんを含む小売業界は、お客さまニーズの多様化や労働力不足などへの対応が求められていますが、当社が有する、通信をはじめとしたさまざまなアセットの活用により、ローソンさんをデジタル面から支援することで、さらなる事業の成長に貢献できると考えています。

 既存事業の成長に加え、リアルテックコンビニエンスの実現により、売上増と効率化を推進し、さらにローソンさんの成長を加速させてまいります。

 また、KDDIとしても付加価値収入やDX事業の成長、お客さまのリテンション強化やコスト効率化など、業績面でのプラスの効果を見込みます。

 新たな価値共創の実現による相互シナジーを早期に実現し、財務リターンの最大化と企業価値の最大化を目指してまいります。

――2025年度から株主優待制度の内容を変更する理由について教えてほしい。

最勝寺氏
 当社は2014年に株主優待制度を導入し、以降、何度か内容を検討しつつ、毎年株主優待を実施してきました。

 現在のカタログギフトの優待はご好評をいただいているものの、通信サービスや当社事業との関連性が乏しい点や、物流の2024年問題、食品や送料のコスト高騰といった外部環境の変化などに課題を感じていました。

 今後もより多くの株主さまに中長期的に株式を保有いただくことに加え、当社関連サービスのご利用を通じて、当社グループの事業に対するご理解をより一層深めていただくことを目的として、優待内容を変更することとしました。

 より多くの株主さまに、当社の事業や中期経営戦略をご理解いただいたうえで、中長期にわたって当社の経営をご支援いただきたく、保有期間の条件を見直しました。

 今後は保有期間1年以上かつ保有株式数100株以上の株主さまが、株主優待の対象となります。保有期間に応じて、当社関連サービスの特典を贈呈します。

 具体的には、Pontaポイントなど、当社関連サービスの特典の中からひとつお選びいただく方式となる予定です。

 現行の優待では、決められた商品や食品からの選択制でしたが、新たな優待でPontaポイントをご選択いただいた場合、au PAYへのチャージなどを通じて、現金同等のご利用が可能となります。現行の優待と比較して利用用途が拡大します。

 au PAY マーケットの「お得なポイント交換所」のご利用により、Pontaポイントを最大1.5倍のau PAY マーケット限定ポイントに交換することも可能です。

 また、これらのサービスはauの契約がなくても利用可能です。優待変更は、以上のような利点をご提供できる点が同業他社の株主優待内容なども踏まえまして、総合的に勘案したものになります。

 多くの株主さまにご満足いただけるよう、今後も創意工夫を重ねてまいります。

質疑応答(会場)

――今、KDDIの株価は4200円程度になっている。株を買いやすいよう、株式分割をしてほしい。

最勝寺氏
 当社の個人株主さまは、足元でも大変増加の傾向にあります。

 また、年齢構成につきましては、定期的なアンケートを通じて把握していますが、特定の年齢層に偏ることなく、幅広い世代の株主さまに保有いただいている状況です。

 現在の株価につきましては、東証が定める投資水準に適合しているほか、時価総額や流動性が高い30銘柄で構成される「TOPIX Core30」にも含まれていまして、一定の流動性を確保できていることから、現時点では株式分割の具体的な予定はありません。

 しかしながら、今後の株価動向を注視しつつ、必要に応じて検討してまいりたいと思います。

最勝寺氏

――株主優待の変更について通知を受け取ったが、ネット環境がないため中身がよくわからない。地元の人にも勧めた手前、使い勝手の悪い内容に変えられると困る。高齢者や、ネット環境がない人への配慮が足りないのではないか。

最勝寺氏
 私どもは外部の調査結果でも見ていますが、70代のスマホ保有率が約8割という情報も出ています。

 当社としましては、店舗などでスマホ教室を実施しているほか、株主優待に関するサポート窓口を設定する予定です。ネットなどのご利用に不慣れな株主さまに対しても、丁寧に対応していきたいと考えています。

 もし、この優待に関して、利用が非常に難しいということでしたら、当社の窓口にご相談いただければと考えています。

髙橋氏
 できるだけお使いいただきやすいよう、お勧めできるように引き続き努力させていただきます。

 また、Pontaポイントはローソンさんでもお使いいただけますので、ぜひともご活用いただけるよう、よろしくお願いいたします。

――今後、povoのように非対面での契約が進めば、auショップは不要になってしまうのではないか。ショップのスタッフの雇用の問題も発生しそうだが、この点はローソンとの提携でカバーできる部分もあるのではと思う。また、高齢者のスマートフォン利用など、ラストワンマイルのサポートも気になる。このあたり、どう考えているか。

竹澤氏
 まず、リアルの接点というのは、ローソンさんしかり我々のauショップしかり、今後も非常に重要な接点と考えています。

 もちろんデジタルの接点も大切ですが、現在auショップでは、行政サービスのアドバイスなども含めてリアルの接点としての機能を果たしています。

 ラストワンマイルについて、ローソンさんは現在1万4600店舗、auショップは2000店舗強ありますので、ラストワンマイルをリアル(店舗)も含めて対応していくとすれば、ローソンさんと我々のチャネルが融合してお互いが補完し合った機能を提供していくことが、今後重要になると思っています。

 ショップの方の雇用について、非常に重要なリアルの接点でありますし、行政のサービスや、我々のサービスなど、さまざまなフォローのためにも雇用はしっかりと守り、ショップの機能を果たしていきたいと考えています。

竹澤氏

髙橋氏
 今の世の中はグローバルのプレイヤーがどんどん日本に入ってきていて、我々はラストワンマイルのリアルな接点は非常に重要と思っています。そういう意味で、今回ローソンさんに出資もさせていただきました。

 ローソンさんの1万4600店舗のお客さま接点を活用し、何ができるのかということを真剣に議論しています。

 この秋口には具体的なサービスの内容も皆さんにお届けできると思いますし、この出資が良い方向に動くよう頑張ってまいります。

――Sub6や5Gの拡大について、どの程度力を入れていくのかがよくわからなかった。

吉村氏
 トラフィックはやはりどんどん増えていきますので、それに対してしっかりと対応していきたいと思います。

 特に弊社の場合、Sub6の周波数を2波持っています。こちらを使い、都内の繁華街などのように今後どんどんトラフィックが増えるところに関しては、より高速なネットワークを作っていきたいと思います。

 あわせて、今後は5Gのスタンドアローン(SA)も始まっていきます。こちらは5Gの周波数だけを使っていますので、そこに対してしっかりとした対応ができるように、Sub6のネットワークの面を広げていく予定です。

 基地局に関して、昨年度までかなりの数を打ってきましたが、品質を維持するために引き続きしっかりと対応していきたいと思っています。

吉村氏

髙橋氏
 Sub6の2波は我々にとって非常に大きな武器なので、しっかりと拡大していきたいと思います。