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三木谷氏「モバイル事業はリターン見込みの先行投資」、楽天第3四半期は増収減益

 楽天は、2019年12月期第四半期決算を発表した。営業収益は3191億円で前年同期比14.7%増、Non-GAAP営業利益は、62億円で前年同期比88.1%減。IFRS営業利益は11億円で、前年同期比97.6%減となっている。

モバイル事業は145億円の損失も

 2019年12月期第3四半期の売上収益は3191億円と過去最高を計上した。一方で10月に「無料サポータプログラム」をスタートしたモバイル事業では売上収益309億600万円に対して、145億4700万円の損失となった。これについて楽天 取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「モバイル事業は先行投資。これから大きなリターンを期待している」と見解を示した。

三木谷浩史氏

 楽天モバイルの実店舗ネットワークは、2019年10月時点で全国584店舗。他社と比較して店舗数を絞り、効率的な販売網を確立していくと三木谷氏。

 また、MVNOとしての楽天モバイルについては2019年10月現在、MVNOシェア30.2%と第2位のUQ mobileの15.9%を大きく引き離し、市場第1位を獲得している。

 11月4日現在、「無料サポータープログラム」のSIM開通率は98.3%で、1.7%の未開通については非対応端末へのSIM挿入などが原因としている。三木谷氏は「世界初の完全仮想化ネットワークは生みの苦しみがあった。ユーザー獲得については、MVNOや楽天カードの実績を鑑みても自信がある。あとは基地局を鋭意設置していくのみだ」とした。

「基地局数は順調に推移している」

 楽天モバイル 最高技術責任者のタレック・アミン氏はユーザー獲得、コアテクノロジー(仮想化ネットワーク)、基地局開設の3つの観点からモバイル事業について説明。「楽天と日本は、世界で初めてのVNF(Virtual Network Function)オペレーターとなった」とアミン氏は語り、全体で182のVNFが稼働しているとした。

タレック・アミン氏

 頻繁にセキュリティや信頼性などについての質問を受けるが、「ジャパンクオリティ」をもって、信頼性、トラブルに対する耐久性、回復性をもって本物のE2E完全仮想化ネットワークを構築したとアミン氏。

 また、従来の基地局に比べて非常にシンプルなハードウェア群で構成される楽天の基地局は、設置から整備性まですべてにおいて優れており、続く5G時代においても楽天の優位性があるとアミン氏は言及する。「5Gには大いに期待している。それは楽天モバイルの重要な差別化要因になってくるだろう。我々の製品はOpen RANを実現する画期的なものであり、特に5Gについては日本製であり品質が担保されているものだ」とした。

 「2018年中には誰もが不可能だと言った楽天のネットワークは実際に稼働しており、多くのトラフィックを運んでいる」というアミン氏は、日本でネットワークを完璧なものに仕上げ、いずれは世界へ展開していく構想を語った。

 楽天のユーザー獲得については、1億を超える楽天IDと70を超えるサービスを持つという点でユニークなポジションを築いており、他社にはできないチャンスを手にしているとした。

 2019年末までに電波発射予定の基地局は3000、口頭内諾したものについては6500局。2020年3月までの目標数である3432局の解説に向けて、基地局の設置は順調に推移しているという。

楽天カードは1800万会員突破、ファッション関連は刷新、

 楽天カード会員数が1800万人を突破した。また楽天ペイ利用者は201818年10月から13.9倍の伸びを見せた。フィンテックセグメント合計は売上収益991億円で前年同期比17.6%増、営業利益は149億円で前年同期比8.3%増だった。引き続きシェア拡大、グループシナジーを見込むマーケティング施策をすすめるとともに、銀行サービスではローン残高の安定的な積み上げにより、堅調な成長が見込まれるとした。

 EC流通総額は、1兆128億円で、前年同期比18.4%増となった。売上収益は前年同期比24・6%増と大きく成長した。営業利益については物流への投資が続き、前年同期比1.5%減で推移した。ロイヤルカスタマー醸成、新規ユーザーを獲得するとともに、自社物流網の整備やAIなどの活用による流通総額、売上収益の成長を目指すとした。

 楽天市場の物流拡大として、「Rakuten SUPER LOGISTICS」を千葉県習志野、神奈川県中央林間で新たに開始する。楽天市場におけるGMSカバー率は2021年内に50%を目標としているという。

 また、「楽天ブランドアベニュー」を「楽天ファッション」へ刷新。楽天グループのトレンドデータなどのアセットをブランドへ提供、実店舗への集客を図るとともに、ファッション関連の有識者による有識者会を設立し、ファッション関連事業を加速させる。