石野純也の「スマホとお金」

ドコモ「ギガライト」とソフトバンク「ミニフィットプラン+」、小容量な料金プランの魅力はどこにある?

 前回は、KDDIが新たに導入する「スマホミニプラン」を紹介しましたが、 似たような段階制の小容量プランは、ドコモやソフトバンクも採用 しています。いずれも、実際のデータ使用量に連動して料金が上がっていく仕組み。データ使用量を1GB以下に抑えつつ、割引を適用すれば、大手キャリアのメインブランドとしては、比較的安価に回線を維持することができるのが特徴です。

 一方で、同じ段階制プランといっても、その中身はキャリアごとに異なっています。データ容量が無制限一択に近い大容量プラン以上に、差別化が図れている料金プランと言えるでしょう。その中身を分析することで、それぞれのキャリアが置かれている立場も見えてきます。今回は、ドコモの「5Gギガホ/ギガホ」やソフトバンクの「ミニフィットプラン+」をチェックしていきます。

ソフトバンクのミニフィットプラン+と、ドコモのギガライトをそれぞれチェックした

3GBまでで割高感のあるミニフィットプラン+、新みんな家族割も非対応

 データ容量の上限を、これまでの7GBから4GBに抑えたauのスマホミニプランですが、 ソフトバンクの段階制プランは、それ以上に小容量志向 。ミニフィットプラン+の上限は3GBに設定されており、この容量を超えると、通信速度は128Kbpsに低下します。金額が上限に達するのは、2GBを超えた場合。割引適用前の正規料金は、5478円です。

 ほかの容量帯の料金を見ると、1GB未満は3278円、1GB超2GB未満は4378円です。KDDIが2月に導入するスマホミニプランは1GB刻みで4段階だったのに対し、ミニフィットプラン+は上限が3GBと少ないぶん、ステップ数も3段階にとどめられています。後述するドコモのギガライトと比べても容量が少なく、3キャリアの中ではもっともライトユーザー志向と言えるかもしれません。

正規料金はグレーの文字の金額。上限は3GBで、料金は3278円から5478円の間で変動する

 ただし、“ライト”というのは容量だけの話。その金額は、お世辞にもライトとは言いがたい水準です。2GB超の料金である5478円は、サブブランドやMVNOと比べると割高感しかない金額。

 auが導入するスマホミニプランも、2GB超3GB以下の料金は5665円と高額になっていますが、これは、より上位のプランに誘導するために設定された金額と言えます。

 一方、ソフトバンクの場合、データ容量無制限の「メリハリ無制限」が7238円。そのままだと、ミニフィットプラン+の方が安いようにも見えますが、メリハリ無制限は「新みんな家族割」の対象になっています。そのため、同居人(シェアハウスなども対象)や離れて暮らす家族に2人、ソフトバンクユーザーを見つけるだけで、料金は6028円まで下がります。わずか550円の追加で3GBから無制限になるのであれば、こちらを選ぶ方がいいと考える人は多いでしょう。

ミニフィットプラン+の料金紹介ページでも、2GBを超える場合はメリハリ無制限をお勧めしている
メリハリ無制限は、割引前価格が7238円。ミニフィットプラン+にはない新みんな家族割もあり、3回線以上まとめるだけで料金は6028円まで下がる

 料金節約の観点では、 3GB以下の場合は、同じソフトバンクでも、サブブランドのワイモバイルやオンライン専用ブランドのLINEMOに変更した方が、圧倒的にお得 です。また、無制限ほどの容量は必要ない一方で、3GBでは足りないというときにも、選択肢はワイモバイルやLINEMOになります。両ブランドが、ソフトバンクの純増数を支えているのも、こうしたユーザーが多いことの表れと言えそうです。

他社よりデータ容量が多いドコモのギガライト、上限設定オプションも便利

 対する ドコモのギガライト(5Gギガライトも含む)は、もう少し“実用的”な料金体系 になっています。ギガライトの最大容量は先に述べたように7GBと、KDDIやソフトバンクに比べるとやや多め。1GB、3GB、5GBを超過するごとに料金が上がっていき、7GBに達すると128Kbpsに通信速度が制限されます。

 料金は1GB以下が3465円、1GB超3GB以下が4565円、3GB超5GB以下が5665円、5GBを超えると7GBまで6765円で利用できます。また、新みんな家族割が非適用になるソフトバンクのミニフィットプラン+や、家族割プラスが3回線で550円に縮小されてしまうKDDIのスマホミニプランとは異なり、「みんなドコモ割」が適用されると、3回線で1100円の割引を受けることができます。dカードで支払うと、「dカードお支払割」も適用され、1GB以下であれば、2178円で済みます。

ギガライトは、3465円から6765円に料金が変動する段階制プラン。ステップは4段階だが、最大のデータ容量は7GBと他社より多い
家族割引のみんなドコモが、全ステップに適用される。割引額も3回線で1100円と、他社の段階制プランより大きい

 また、1GBを超えると3GBまで4565円、みんなドコモ割とdカードお支払割適用時で3278円という料金設定も、大手キャリアの中では割安感があります。3GB超5GBまでの5665円、割引適用で4378円というのも、まずまずの料金と言えるでしょう。ただ、料金的には、1GBを超えるとオンライン専用プランのahamoが視野に入ってきます。5GB超7GB以下に6765円支払うのであれば、1650円差でデータ容量が無制限になる「5Gギガホ」を選ぶ人もいるでしょう。他社よりやや中容量に振ったギガライトですが、やはりメインターゲットは小容量のユーザーであることが分かります。

 このような使い方をする人のために、ギガライトには「ギガプラン上限設定オプション」という設定が用意されています。これは、好きなステップでデータ容量を止めるためのオプション。このオプションがあるため、ギガライトは段階制プランではありますが、データ容量別の料金プランに近い感覚で利用することができます。 実質的に、1GBプラン、3GBプラン、5GBプラン、7GBプランを用意しているのと同じ というわけです。

ギガプラン上限設定オプションを使うと、ギガライトを1GBプラン、3GBプラン、5GBプラン、7GBプランとして利用することが可能だ

 段階制の料金プランは、使ったデータ通信の量に応じて料金を支払う公平な仕組みではある一方で、データ通信は目に見えないだけに、気づかないうちに使いすぎてしまうことがあります。スマートフォンの場合、バックグラウンドで通信するため、よりユーザー側の管理が難しいと言えるでしょう。これは、 気づかないうちに、お金を使いすぎてしまう心配があるのと同義です 。毎月、決められた予算を携帯電話代に割り振っている人にとって、上限を自分で決められるのはうれしい仕組みと言えるでしょう。

大手3キャリアで一番使いやすい「小容量プラン」は?

 ここであらためて、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの料金プランを横並びで比較してみます。

 グラフ化したのは、次の3通り。

 割引適用前と、家族割引やクレジットカードでの割引を適用した場合、さらに、光回線まで含めた各種割引をすべて適用した場合です。グラフにしてみると一目瞭然ですが、やはりドコモのギガライトが使えるデータ容量の多さや金額の安さで群を抜いています。先に挙げたギガプラン上限設定オプションに対応していることもあり、使い勝手は一番いいと評価できます。

各種割引適用前の金額。2GBまではソフトバンクが安いが、それ以降はドコモの安さが際立つ
ソフトバンクは新みんな家族割の適用対象外のため、この条件だと一気に割高感が出る。ドコモは割引額が大きいぶん、料金が安くなった
上記に固定回線とのセット割まで含めたグラフ。この場合、auとソフトバンクは途中までグラフが重なる。1GB以下は3社とも同額だが、以降はドコモが安い

 一方で、KDDIやソフトバンクには、UQ mobileやワイモバイルといった選択肢があり、同じネットワークで料金を抑えたいときには、ブランド変更する手があります。ショップを使わなくていいのであれば、povo2.0やLINEMOといったオンライン専用プランを選ぶこともできます。これに対し、ドコモには、いわゆるサブブランド的なブランドがありません。ドコモ回線で低容量の料金プランを選ぼうとすると、ギガライト一択になってしまうということです。

UQ mobileやワイモバイルの料金プランをギガライトに合わせて7GBまでグラフにプロットした。3GB超5GB以下は、両社ともプランMへの変更ではなく、データ容量の増量オプションを適用した金額

 ahamoは確かに割安ではありますが、オンライン専用プランというやや特殊な立ち位置であることに加え、povo2.0やLINEMOのような小容量プランがありません。逆に、大盛りオプションでデータ容量を計100GBまで上げることはできますが、どちらかと言えばヘビーユーザー向け。データ使用量が多い若者をターゲットにした料金プランのため、低容量から中容量までを幅広くカバーした他社のサブブランドとは位置づけが少々異なります。

 これをドコモ側の視点で見ると、ギガライトとahamoだけで、他社のサブブランドと戦っていかなければならないということです。KDDIやソフトバンクのように、段階制プランのデータ容量を少なくしたり、料金を上げたりしてしまうと、UQ mobileやワイモバイルに対抗しづらくなるとも言えるでしょう。実際、ahamoを導入前は、ドコモから他社への流出が多く、毎月のように転出超過になっていました。当時は、特にワイモバイルの影響が大きく、低容量帯から中容量帯で苦戦していました。

上記のグラフにahamoを加えたもの。ahamoでサブブランドに対抗できるようになった一方、5GB以下の小容量帯がまだ弱いことが分かる

 ahamo導入でドコモからの流出が減ったのは、そのためです。とは言え、上記のように、サブブランドと比べるとギガライトはまだまだ料金が高止まりしているのも事実。特に5GBや3GB以下で済む低容量帯のユーザーには、割高感があります。この層に向け、ドコモは「エコノミーMVNO」を展開していますが、メインブランドと同じ母体で運営している他社のサブブランドと比べ、打ち出しが弱い印象もあります。この分野をどう強化していくのかは、ドコモにとって今後の課題と言えるでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya