一般的に企業の広報は、新製品や新サービスの「コンセプトが決まってから」動き出すことが多く、社外発表の準備に入るのは、方向性が固まり、機能や価値が見えてきた段階。完成したものをどう世の中に届けるかを整えていく、そんな役割が一般的です。
ところが、Sansanのプロダクト広報は少し違います。
プロダクトが形になる前から事業部に入り込み、どんな価値を社会に届けるのか、どんなポジションで市場と向き合うのかを一緒に考えていきます。完成したものをどう伝えるかではなく、コミュニケーション戦略を通じて、事業やプロダクトの成長そのものをつくっていく役割です。
今回話を聞いたのは、コーポレートブランディング室 室長の小池亮介と、プロダクト広報を率いる後藤千文。Sansanの広報は、なぜ「最初の一手」から事業に入り込むのか。その背景にある考え方と、実際の取り組みについて聞きました。
PROFILE
小池 亮介Ryosuke Koike
コーポレートブランディング室 室長/社長室 室長
1988年横須賀生まれ。2013年からIT業界に特化した外資系PR代理店にて、広報・PRのキャリアをスタート。半導体・ソーラーパネルといったBtoB業界からドローンなどのBtoCサービスまで、企業の広報業務を経験。2017年にSansanに入社し、広報・PRに従事。2019年から、私立高等専門学校「神山まるごと高専」の立ち上げ広報を担い、2023年の開校実現を見届ける。2022年、社長室の立ち上げを経て、2025年よりコーポレートブランディング室 室長として、コーポレート全体のブランド発信を担う。
後藤 千文Chifumi Goto
コーポレートブランディング室 プロダクト広報グループ アシスタントマネジャー
新卒でトヨタ自動車株式会社に入社し、調達部にて業務に従事。広報へのキャリアチェンジを志し、株式会社電通PRコンサルティングへ転職。国内外のPRプロジェクトに携わった後、ビー・エム・ダブリュー株式会社プロダクト広報として、グローバルブランドにおける製品コミュニケーションの企画・実行を担う。 2021年にSansan株式会社へ入社。新規プロダクトの立ち上げから既存プロダクトのリブランディングまで、一貫したコミュニケーション戦略の設計・推進に携わる。現在はマネジャーとして、プロダクト価値の言語化と発信を通じ、事業成長を後押しする広報活動をリードしている。
最初の一手から関わり、向き合う
まず、広報の役割についてどのように捉えているか教えてください。
小池:広報は、プロダクトや事業の目指す姿を事業部と一緒に描いていく役割だと考えています。どんな価値を届けたいのか、誰にどう受け取ってほしいのか。そうした考えを整理し、言葉にしていくところから関わります。ここが曖昧かつ未完成なままだと、どれだけ発信しても伝わり方が弱くなってしまうからです。
そのため「伝わった先にどうなっていたいか」を起点に「どう伝わるか」を、あらゆる手段で設計することに重心を置いています。どんなストーリーにするか、どのチャネルを使うか、誰が語るのが一番良いのか。いくつかの要素を組み合わせながら、自然と価値が伝わる状態をつくることが、広報の大切な役割だと思っています。後藤:私は現場に近い立場として、広報が初期から関わる意味をとても感じています。ただ表現を整えるだけではなく、事業部と一緒に課題や戦略を深掘りしながら、伝え方を固めていく。そのプロセスで生まれた言葉やストーリーが機能名称や営業活動に反映されることもあり、事業が前に進む手応えがあります。
小池:本当にそうですね。いわゆる広報担当というより、コミュニケーション戦略のパートナーに近い存在でありたいなと思います。モノができてからPRするのではなく、つくり始める段階から価値を磨き、届け方まで考え抜く。それができるのは、Sansanの広報ならではの魅力だと思います。
市場からの見え方を変える。
ストーリーで挑んだ認識のアップデート
「初期段階から関わる」という点について、具体的な事例があれば教えてください。
後藤:直近では、「新AIソリューション発表会」が象徴的でした。世の中では長く「Sansan=名刺管理の会社」というイメージが根強くありましたが、実際のプロダクトはすでに「データ活用」や「AI」を軸にしたサービスへ進化しています。このギャップをどう埋めるか。
単に新機能を紹介するのではなく、「Sansanがどんな市場で戦うのか」を再定義するレベルでストーリーを組み立てました。このプロジェクトで広報が担ったのは、発表資料を整えることではなく、「Sansanという会社の戦うフィールドを、どう社会に再定義するか」を設計することでした。
事業責任者と議論を重ねながら、いつ・どんな文脈で・どの数字を根拠として提示するのが最適なのかを提案し、年次のユーザーカンファレンス「Sansan Innovation Summit」内で代表の寺田や事業責任者が登壇する記者会見を開催しました。
そのメッセージングについても、会見の直前まで、代表の寺田と一緒になり作り込みました。その結果、主要メディアの見出しには「名刺管理」ではなく「データで戦う」「AI活用」といった、私たちが届けたかった新しい言葉が並びました。イメージを変えていく取り組みのいい口火を切ることができた感覚を持っています。一度定着したイメージを変えるのは簡単ではありませんが、広報の力で認知の質を動かせた実感がありました。
プロダクトに伴走する広報。
3カ月サイクルの戦略づくり
他社の広報との違いとして、チーム体制や仕事の進め方に特徴はありますか?
後藤:基本的には、一つのプロダクトに一人の担当者がつく体制をとっています。企画から実行までを一気通貫で担うのが特徴で、メディアリレーションやイベント対応を分業するのではなく、自分で最後までやり切るスタイルです。
特に大切にしているのが、四半期(3カ月)ごとにPR戦略をつくり、事業部長に提案するプロセスです。市場やメディアの動きを踏まえてコミュニケーション課題を整理し、「この3カ月で何をするか」を事業部長としっかり握る。広報という性質上、3カ月で戦略を見直していくのは結構大変ですが、このプロセスがあるからこそスピード感ある当社の事業に伴走できますし、事業と信頼関係を築くうえで重要な場として継続しています。
小池:3カ月スパンで軌道修正しながら進むのは、変化のスピードが早いSansanのカルチャーにも合っていますね。というのも、当社自体、OKRと呼ばれる目標管理のフレームを採用し、3カ月ごとに目標を定め、振り返りながら次の打ち手を決めていくことを徹底しているからです。本来、広報は半年や1年といった長い視点で動くことが多いですが、ここまで事業部に入り込んで広報も一体となって戦略を回している組織は、多くはないと思います。
そこまで深く入り込むには、相当高い事業理解が求められそうです。
後藤:そうですね。以前、ある事業責任者から「社内でこのプロダクトを理解しているトップ10に入る」と言ってもらえたことがあります。最初はキャッチアップが必要ですが、事業部側も広報に協力的ですし、理解が自然と深まる流れができています。
慎重さと前向きさ。その間にある広報のスタンス
チームにはどのようなカルチャーがありますか。
小池:チームの空気感は、タフさと軽やかさが同居している感じです。広報には明確な正解がなく、新しい挑戦が思うように進まないこともあります。そんな時でも、一度の失敗で止まらず、学びを次につなげていく姿勢が自然と根付いています。この前向きさとしなやかさのバランスが、チームらしさだと思います。
後藤:変化のスピードが速いので、動いていた案件の方向が急に変わることも珍しくありません。そういう時でも状況を柔軟に受け止めて、必要に応じて自分たちの動きを素早く切り替えていく。決まった進め方にとらわれず、チーム全体で軌道修正しながら前へ進んでいくスタイルが根付いていると感じます。
広報メンバーは新しい挑戦にも常に前向きなんですか。
後藤:実は私、根はかなり心配性なんです(笑)。だからこそ、準備をしっかりやります。準備ができていると、最終的に前向きになれる。そんな感覚があります。
小池:本当にそうですね。後藤さんは、メンバーの機微にもよく気づくタイプです。事業部が持っているコミュニケーション課題の解決につながることであれば、メンバーにチャレンジしてもらう。それを前向きに、背中を押してあげるタイプのリーダーですね。
変わり続ける環境で、広報はどう進化するのか
最後に、これから応募を考えている方へメッセージをお願いします。
小池:メディアを取り巻く環境は大きく変わっています。SNSや動画、AIの浸透により、今の広報手法が10年後も同じ形で通用するとは限りません。外部メディアは、私たちが大切にしている情報発信のパートナーであり続けますが、一方で、企業自身がさまざまな形で直接発信していける場も広がっています。これからは、メディアを通じた発信と、自社からの直接的なコミュニケーションの両方を組み合わせていくことが、より重要になっていくと感じています。
だからこそ、これまでの経験だけに頼らず、新しい仕組みやツールを前向きに取り入れ、自分なりの広報の形を発明していける方に来てほしいと思っています。特に、メディアリレーションにとどまらず、情報流通の仕組みづくりや部門連携のナレッジを持ち込み、組織全体の広報力を高めてくれる方には、大きく活躍できる場があります。
後藤:Sansanは、自分で課題を見つけて動くことが自然に求められる環境です。言われたことだけをこなす仕事ではありません。その分、自分が描いたストーリーが事業を動かし、世の中に届いていく手応えがあります。熱量のある仲間と一緒に、大きな挑戦に本気で向き合いたい方には、とても合う環境だと思います。
小池:広報の役割は、単に情報を届けることではなく、事業やプロダクトが目指す未来に光を当て、その姿が世の中でどう受け取られるべきかを形づくっていくことだと思っています。変化の大きい時代だからこそ、私たち自身も学び続け、挑戦し続ける必要があります。もし、「プロダクトが世に出る前から、その意味や価値を一緒につくりたい」と感じたなら、Sansanの広報はきっと挑戦しがいのある場所だと思います。
そんな環境の中で、一緒に新しいコミュニケーションのあり方をつくっていける方に、ぜひ仲間として加わってほしいですね。