
『スカラブ号の夏休み』ア-サー・ランサム作・絵 神宮輝夫訳
例のクイズの答え、「明日書きまーす」って言っておきながら、明日はいずこへ・・・。はい、こちら↑が答えです♪ 小笠原までの24時間船旅のお供に持って行きました。
夏休みになると読みたくなるんですよね~。『ツバメ号とアマゾン号』から始まる全12巻のアーサー・ランサムによる物語!新訳からはランサム・サーガと呼ぶらしい・・・サーガってなんか気恥ずかしくて呼べないなあ。ちなみに、こちらの『スカラブ号の夏休み』は11巻になります。どの巻から読んでもいけますが、やっぱり最初から読むほうが登場人物への思い入れが変わってくるかな。
ランサムの物語は困っちゃうんです。読むたびに「お、この巻が一番面白いかも」と思って、お気に入りの巻が選べない。あ、3巻の『ヤマネコ号の冒険』は気に入ってませんが。現代の子にとっては、正直読みづらいと思います。でもね、読み終わったあとも自分の中でまるで彼らが友だちかのように残っていく、そんな確かな手ごたえのある物語です。こんな夏休みはまさに憧れの世界!だって子どもたちだけでキャンプしたり帆船で自由自在に帆走したりするんですよ!?憧れだけれど、でもリアリティがあって・・・雲の上、ではなく、なんとなく手に届きそうな憧れ。ちゃんと自分も妄想の中でついていける世界なんですよね。
≪『スカラブ号の夏休み』あらすじ≫
湖水地方に住むナンシイとペギイは、ディックとドロシアのカラム兄弟を招き、子どもだけで楽しい夏休みを過ごすはずだった。カラム兄弟にはスカラブ号という新しい帆船も来ることになっており、一緒に帆走することを楽しみにしていた。しかし、保護者なしで子どもたちだけ過ごすことが厳しい大おばさんの耳に入り、突然大おばさんが来訪することになって、ディックとドロシアは小屋にかくれひそむことに。そこへ思わぬ事件が……。
こちら原題は“THE PICTS AND THE MARTYRS or Not Welcome at All”。そう、ぜーんぜんウェルカムじゃない人っていうのが大おばさんです。もうこのお方が強烈で!誰も何も言えなくなっちゃうのね。子ども時代なんかなくて、大おばさんは生まれたときから大おばさん(笑)。現実的に考えたら、お客に呼んでおいて、大おばさんにバレたらお母さんの立場が危うくなるからって、お客様(しかも子どもだけなのに!)を森の中の小屋に追いやるってどうよ???しかしですね、この強烈な大おばさまの登場に、読者も、うんうん、小屋に逃げるのがベスト!って思わず思わされちゃうんですよね~。
ランサムの中にはイキイキとした子どもの登場人物が多く出てきて、誰が一番好きかということがランサムファンの間ではよく話題になるのですが、私はこのカラム兄弟が大好きなんです。ドロシアはすぐに頭の中で物語を書き始めちゃう空想家で、それに対するディックはいわゆる理系少年。バリバリ文系の私は「ああ、理系の子ってこういう思考回路なんだ」と理解するのに役立っています(笑)。いや、ホントに南島でのオナガミズナギドリ、ディックだったら夢中になっただろうなあ。
テントのキャンプ生活とは違いますが、小屋でのサバイバル生活ぶりもワクワクします。牛乳は届けてもらえるし、缶詰もあるし、本当のサバイバルではないけれど、ドロシアはこれをピクト人の生活に見立てて暮らすんですね。牛乳を届けてくれる農場の子から手づかみでマスを捕る方法を教わったり、その子が捕ってきたウサギを嫌々料理しなくてはいけなくなったり。ウサギを料理したくなくて、延ばし延ばしにしちゃうドロシアの気持ち・・・分かるなあ。そうやって、私もいくつの食材を無駄にしてきたことか。
順調に進んでいた隠遁生活でしたが、その後あることをきっかけに事件が大ゴトになってきます。これもね、冷静に考えれば「そんな無茶な!」ってことなんですけど、ナンシーの話術?論法?にかかってしまうと不思議と納得せざるをえないんです。強引だけれど、魅力的なナンシー。
キラキラした子ども時代をいつまでも持っている大人でいたい!って改めて思わせてくれる、それがランサムの物語です。