
『めざせ!秘密のコッパ島』(2004年)白金ゆみこ作 石井勉絵 あかね書房
【ここがポイント!】
■ 夏休みに読みたい
■ 本が苦手な男子にもおススメ
■ 友情と冒険のひと夏の物語
■ 老人と子ども(おじいちゃんとだけの秘密)
■ ファンタジーなのに、現実味がある!
■ 小学校中級から。読み聞かせるなら低学年から。
これは、ワクワクしますね~、特に男子は。演劇化されてるとのこと、納得な内容。ああ、田舎っていいなあ。
夏休み、東京に住む小学5年の大和は、東北三陸海岸に住む田舎のおじいちゃんのところを訪ねます。ここで毎年楽しみなのは、地元っ子で遊びの天才の将太と遊ぶこと。
おじいちゃんのところからは、コッパ島というのが見えるのですが、満月の夜になると、コッパ島のほうから「ヒューヒュー」と不気味な音が聞こえるんですね。誰かの鳴き声のようなその音のことを、おばあちゃんはこう説明します。
「・・・この町ではな、満月や新月になっと、亡霊がさまよい出すんだよ」
「・・・あの島にはな、津波で亡くなった人たちの亡霊がすみついてんだ。んだがら、ああやって、家族や町をこいしがって泣いてんだよ」(P.12-13)
え!?と思って、出版年を調べました。3.11より前でした。この物語には河童が出てくるのですが、東北地方では、関東の人とはちょっと感覚が違うようで、遠野物語が根付いているためか、妖怪や亡霊が身近のようです。恐れる対象というよりも、懐かしむ対象。
この作者の白金さんも釜石の方だからなのか、頭の中からひねり出した創作というよりも、小さい頃から聞かされてきたお話が、語られている感じ。だから、なんだか自然なんですね。河童が出てくるけれど、現実離れしたファンタジーというよりも、‟ひょっとして・・・運がよければ自分も会えるかも!?”という気になれる物語なんです。実際お年寄りたちに聞くと、「ああ河童なら、昔見たよ」という方たちも少なくないそう。
さて、この夏大和が気になったのが、そのコッパ島。
コッパ島は船をつける足場もないから島にあがれない。人に荒らされることがないから、いろんな珍しい動植物、昆虫がいる。迷信やら言い伝えやら、目に見えない色んなものに守られているから、そこでなら生きていける生き物が現れてくると聞いて、興味津々の大和。ある日、おじいちゃんちの蔵にも昔河童が来ていたと知り、海河童(ホタテ河童)伝説に出会うのです。
そして、蔵の中にあった紙に書かれていた暗号のようなものが何かひらめいた大和は、大潮の干潮のときだけに現れるトンネルが、コッパ島への入り口だと気づき、いざ冒険へ。
余談ですが、感心したのは、さすが地元っ子将太、漁師の父親を尊敬している彼は、自分たちの小さな船ですらきちんと無事を祈ってお祓いをするのです。リュックの中から、塩、お酒、木の枝、朝食に食べたという赤い魚の頭を取り出して。
ついにトンネルを見つけて、島の内部に入っていくところは、もうワクワクのピーク!
あやしい泣き声の正体、なぜ大潮の干潮のときだけに聞こえるか謎も解明し、ますますファンタジーというよりも現実味を帯びてきます。だから余計になのかな、ふいに霧が見せてくれた河童の村の場面やカジとの会話部分は、突然‟創作“って感じになっていて、個人的にはちょっとだけ惜しい、と思ってしまいました(←上から目線)。
個人的に惜しいと思うところはさておき、子ども時代にぜひ味わいたいひと夏の物語です。