
『銀のほのおの国』神沢利子著 堀内誠一画 福音館書店
※昨日書きかけのものが間違えてアップされてしまいました。大変失礼しました。
こちらの本、大人のための児童文化講座の課題本だったので読みました。自分からでは多分手に取らなかったと思われる。昨年11月の課題を今頃やっております・・・。
暗くて重い、でも、出会えてよかったと思える物語。私の場合は、動物がしゃべるというのが苦手なので、なかなか感情移入できませんでした。読んでる最中に夢中になるというよりも、読了後に確実に自分の中に何かが残る、そんな物語でした。白米のような食べやすさはないけれど、しっかりと身体を作っていく玄米とでもいえばいいのかしら。
≪『銀のほのおの国』あらすじ≫
剥製のトナカイに引きずられ、壁の向こうの異境でたかしとゆうこの兄妹。帰り道が知りたくて、甦ったトナカイのはやてを追う。いにしえのトナカイ王国復興をめざし、トナカイと青イヌ、それをとりまく動物たちの壮絶な戦い。騙しに裏切り、生きるためにはなぜ、他の生きものの命を奪わなければ生きられないのか。壮大なスケールで繰り広げられる北の大地のファンタジー。
個人的には妹のゆうこにイラっときました。逆切れしてる場合か!生きるか死ぬかの瀬戸際でまだ動物かわいがってそんなこと言ってる場合か!とかね。。も~、「ちょっと、ゆうこ、そこ座りなさい!」ですよ。兄のたかしが一人でがんばろうとしているだけにね、男子母はどうしても損しがちな男の子側に肩入れ。どうしようもなく切なかったのは、娘を守るために、はやてを裏切らざるをえなかった猟師の巨人皮はぎ。そうせざるをえないときってあるよね、って。
策略、裏切りなどがあり誰を信じたらよいのか分からない場面が多々でてきますが、謎ときやスリルのようなエンターテイメント性はありません。逆にエンターテイメント性にごまかされない分、作者の問いかけたいテーマ(生きるためにはなぜ他の生き物の命を奪わなければいけないのか)がシンプルかつまっすぐに読者にも入ってくる気がします。
色んな答えがあると思います。明るく希望に満ち溢れた答えもあるでしょう。でもね、自分が真剣に悩んでいて落ち込んでいるとき、やたら明るくてポジティブな人が来ても逆にその明るさにやられちゃうってことありますよね。太陽は時にまぶしすぎるというか・・・。「食べるとは命をいただくこと、あなたの中で命は紡がれているんですよ♪だからOK、OK~。深刻にならないで。」なんて結論はこの物語では出しません。
答えはでないけれど、同じようにその悩みに寄り添うほうが解決はしなくても、前に進む力をもらえることがある。この物語はそんな物語であるような気がします。答えが出なくても、分からなくても、問い続けながら、それでも前に進む、生きて行く。
この物語の中ではメインキャスト(?)たちがびっくりするほどあっけなく死んでいきます。命のはかなさ。
そしてね、一見残虐で悪者扱いの青イヌたちですが、彼らには彼らの掟があり、美学があることが分かります。大人になってから『ガンバの冒険』を読んだ私は、一方的にイタチが悪者として描かれているところがなんだかなあ、と感じていたのですが、『銀のほのおの国』では立場上トナカイが正義のように一見描かれてはいるけれど、善悪が曖昧。トナカイの中の裏切り者のツノのほうがよっぽど性根腐ってるぜっ。青イヌは肉食だからかわいらしい小動物からは恐れられる。そして、人間はかわいいほうに肩入れする。けれど、青イヌだって生きて行くためなんですよね。青イヌが草食べて生きて行くわけにはいかないから。彼らはただ彼らの生をまっとうしているだけなのです。青イヌリーダーの参謀の旗尾はリーダーの命令とは違う行動はとるものの、リーダーよりも聡明さを感じました。
ところで、たかしが巨人に天の槍の壁に細工させてまで青イヌをだますニンジン堀りというウサギに疑いをかけるところがあります。なぜ関係ないのに青イヌとトナカイの戦いにそんなに一生懸命になるのか、と。そうよね、懐疑的にもなるわよね。そこで、ウサギは無念の死をとげたウサギのはね坊主の話をし、
「・・・つまりだなあ、ひとが知ろうと知るまいと、いろんなことがらが十重にも二十重にも自分をとりまいているってことさ。自分に関係ねえといいきれることがどれだけあるかなあ。」
と問いかけるのです。壁の向こうの異境での出来事をどれだけ自分の物語として感じられるか。無関係ではないのです。そして、戦いが終わった後、ウサギの茶袋はこう語り掛けるのです。
「ゆうこよ、青イヌが食う肉とおまえさまが食う肉と、どこがちがうか、わかるかの。そいつを家に帰ってからとっくり考えるのじゃな。だが……忘れるかも知れぬ。トナカイのことも青イヌのことも、この長い旅、はげしい戦いのことも、そうよ、おまえさまはまもなく忘れてしまうじゃろう。しかし、わしのこの問いは忘れられぬ。おまえさまが大きくなって、この意味を考えるようになるまでな……」
問いの答えが出なくても問い続けて生きるのと、見て見ぬふり、考えず何も感じず生きて行くのは全く違う。答えの出ない苦しさを抱えているとき、この物語を読むと前に進む力をもらえる・・・かもしれません。一度は読みたい骨太の物語。