
『ミサゴのくる谷』 ジル・ルイス作 さくまゆみこ訳 評論社
2011年(原書初版)2013年(日本初版) 278頁 中学生から
昨日ご紹介した『ぼくとくらしたフクロウたち』と同じく、うらやましい自然環境の中での子どもたちのお話。あちらが1960年代だったのに対し、こちらは2011年の現代。自然環境保護への考え方もずいぶんと変わってきているように感じて、こちらの話のほうが感情移入できました!
ここ湘南地域はトビが多くて、エサがないことから人間の食べ物を取るギャングで有名。そんなトビが身近でミサゴも同じ猛禽類ということで親近感が湧くのかもしれません。空の巣しか見たことないけれど、それでも見つけたらテンション上がりますもん。
≪『ミサゴのくる谷』あらすじ≫
農場に巣をつくった野生のミサゴ。農場の息子カラム(11歳)はふとしたことから、みなから変わり者と疎まれている少女アイオナからその秘密を知る。ミサゴは密猟者たちに狙われている鳥でもあり、自然保護区のヘイミッシュの協力を得て、そっと見守ろうとするものの、ミサゴのアイリスが搭載したGPSの通信は途中で途絶えてしまう。アイリスがいるアフリカのガンビアの各機関にメールを出しまくって消息を知ろうとするカラムたち。それは、足の病気で入院しているガンビアの少女ジェネバとの友情にもつながっていく。そして、人々の温かい心が奇跡を起こし・・・。
さくまさんの翻訳も読みやすく、字体も大きめなので一気読み。平澤朋子さんの表紙絵もいいんだなあ。原作はこちらだもの↓

作者のジル・ルイスは獣医さん。なので、動物の生態にはリアリティがあり、説得力があります。子どもの心理描写もよく描けているので、同年代の子たちは共感する部分も大きいんじゃないかしら。まず、何に驚いたって、“ミサゴは保護対象で、密猟者たちから守らなければいけない”っていう共通認識が子どもの間にまで浸透していること!だから、“秘密”なんです。日本じゃ考えられないなあ・・・。
以下ちょこっとネタばれ含みますので、知りたくない方は読まないでくださいね。
前半は、社会のはみ出し者とも言えるアイオナとカラムの友情物語。母親が出て行き祖父と暮らしているアイオナは、ひなを置いて出て行かなくていけないミサゴに自分の母の姿を重ね、“悲しそう”というのですが、カラムは鳥なんだからそんなこと考えてもいないと言ってしまい、アイオナが傷ついて出て行ってしまう場面は印象的。ほかにも、孤独だったアイオナがカラムの家族から受け入れられて幸せそうになっていく様子には、読者も温かな気持ちに。二人のツリーハウスとかね、もうワクワクします。その幸せの絶頂からの、突き落とし。アイオナの突然の死。これは、もうショックです。色んなこと、子どもたち感じるんじゃないかな。
後半は、アイオナとの友情の間疎遠になってた、男子仲間が団結力を見せてくれます。そして、つながるガンビアにいる少女ジェネバとのメールを通じての交流。後半は、そんなにうまく行くかなあ、と思うところがなきにしもあらずだけれど、情報社会の現代ならありえる奇跡。諦めなければ思いは届く。子どもだってできる!
アイリスが辿る、スコットランドからガンビアまでの壮大なスケールを体感でき、ラストはとても爽やかです。