
『みどりのトンネルの秘密』アラン・W・エッカート作 デイビット・ウィースナー絵 山田順子訳 岩波書店
もう一つの「ナルニア国」をめざす壮大な構想の物語・・・と帯で歌われているとおり、そんな感じの物語です。
≪『みどりのトンネルの秘密』あらすじ≫
フロリダ半島に広がるエバーグレーズ大湿地帯.ラーラとバーナビーのふたごの姉弟はいとこのウィリアムの運転する小型モーター・ボートに乗って、秘密の水路へと入っていく。水面をおおうマングローブの緑のトンネンをぬけると,そこには影がなく太陽が緑色という異世界が。その国に伝わる予言にはラーラとバーナビーのことが歌われ、3人はその国で命をねらわれ、戦いへと巻き込まれていく・・・
確かにナルニアに似たハイファンタジーです。私自身が冒険ものやハイファンタジーがあまり得意ではないので、あまり夢中には正直なれなかったのですが、好きな子は好きなのかな。冒頭の異世界へ入るまでの部分は非常にワクワクします。まずね、子どもだけでボートに乗る!それだけでなんかもうワクワクしてくるんですよね~。他の人たちが気づいていない秘密の水路、マングローブに覆われた緑のトンネルにフクロウ・・・なんて魅惑的なキーワードたち♪
砂浜に子どもたちがたどりつくと、そこには地下鉄の回転木戸とそっくりな緑色の回転木戸があって、そこから異世界へと子どもたちが入ってしまうわけなのですが、そこは影のない国。たくさんのファンタジーの生き物たちが出てきます。予言によると、「血のきずなにむすばれし三人の者、うちそろって来たり」とあり、その三人が現在君臨している残忍な王さまを打ち滅ぼすとあるのです。以下ネタバレになりますので、これから読みたい方は読まないほうがいいかもなので注意↓
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その三人とはじつはラーラー、バーナビー、ウィリアムではなく、ラーラー、バーナビーと残忍なソーキン王の息子であるドウ王子なんですね。へっ!?ウィリアム関係ないのか~い、とツッコミを入れたくなりますが、名わき役な感じです。ラーラは実はこの国の王女でソーキン王に命を狙われたため、ラーラの母親の女王が回転木戸を通って今の現実世界へと逃げてきた・・・ということなのですが、ラーラは自分が王女だという実感がないまま戦いに巻き込まれていきます。『はてしない物語』の直後に読んだから余計にこの辺の流れが物足りなく感じてしまいます。そして、う~ん・・どうも私、この戦いの場面っていうのが全般的に苦手なんですね。男の子が読めば興奮するのかも。
予言ではソーキン王は“むすめの手にある武器”によって滅ぼされる、とあるのですが、結局ソーキン王を倒した武器がなんだったのか、というところはなかなか面白いです。一見現実世界から持ち込んだパチンコかな、と思わせておいて、実はコンパクトのほうなんです。異界メスメリアには映像というものがなく、水面でさえ影をうつさない。生まれてはじめて鏡に映った自分の姿を見て驚くソーキン王。目の中に邪悪なものを見出し思わずそれに対抗する魔王の力が自然とわきあがってきて、我と我が身を滅ぼしてしまうのです。お、お馬鹿・・・でもこの場面はなかなか考えさせられますよ。真実の自分の姿を知ったときのショック・・・『はてしない物語』の第二の魔法の鏡の門でも己の真の姿を見て逃げ出す人続出でしたもんね。
この本も絶版のようですが、それは分かるような気がするなあ。この手の冒険ファンタジーはちまたにあふれ過ぎてしまったのです。ゲームの世界含めて。陳腐なものになっちゃうんですよね。
丁寧な挿絵はとても好きです。掲載されている地図は驚くほど本文とは関係がなくてツッコミを入れたくなるけれど。冒険ファンタジーを楽しめる子には小学校4年生くらいからおすすめ。