
『クラバート』オトフリート・プロイスラー作 ヘルベルト・ホルツィング絵 中村浩三訳 偕成社
またまた毒虫に刺され?足が腫れ上がり、祝日含めた数日は寝込んでおりました。
普段ね、薬を取らないせいか、薬が効いて効いてもはや記憶が飛んでる!?朝家族としゃべったと思ったら、次に気付いた時は夜でびっくりしました。このところ悩んでいたことが、夢にでてきてそれが妙にリアルで、寝ながらにして恐怖味わったり・・・それには寝込む直前に再読し終えたこの本も影響したかも↑
名作!!!何度読んでも引き込まれるし、面白い!
けれど、『表紙が残念な本特集』がテーマだった第2回児童文学ピクニックでも話題になりましたが、表紙で敬遠しちゃう子が多いんじゃないか、とそこが残念。ところがですね、読み終えてみると、もうこれほどぴったりな挿絵はないんじゃないか!と思うほどこの物語の雰囲気にぴったりなのですよ、これが。
≪『クラバート』あらすじ≫
少年クラバートはある日不思議な夢に誘われ、コーゼル湿地の水車場の見習いとなる。村人たちの寄り付かないその水車場は、実は冷酷な親方から12人の弟子たちからなる秘密団が魔法を学ぶ場であった。新月になると現れる大親分の謎、復活祭の儀式、大晦日に毎年弟子のうち誰か一人が死ぬ・・・。3年間の修行ののち、親方の跡継候補になるくらい魔法を習得したクラバート。自由を得るため、愛する人と友情の力を借り、親方に対決を挑む。
ジブリの『千と千尋の神隠し』がこの作品から刺激を受けていることは有名。
THE★暗いです!でも、引き込まれる。常に死の匂いがまとわりつき、魔術といってもワクワクする類のものではなく、日々課せられる労働の日々も暗く重たい。最初はその陰鬱さに息苦しくなるのだけれど、でもね、人間って不思議なものでそんな状況にも慣れちゃうんです。そんな中でも魔法を使って村人や仲間をからかって笑ったり、仲間内である種の連帯感があったり。クラバートは魔法の習得に夢中になっていきます。ヴェンド人の伝承が元になって、プロイスラー自身が徹底して歴史背景や当時の生活風習を調べたうえで書かれているので、説得力があります。以下ネタバレ含めますのでご注意を。
ちなみにこちら、2008年に映画にもなっていて、日本では公開はされていないけれど、DVDにはなっています↓

もはやお決まりの(!?)原作ファンガッカリな内容らしいですが、映画から入った人もサブタイトルの闇の魔法学校から、ハリーポッターのような華やかな魔術を連想してガッカリする人が多いみたい。
そう、クラバートに出てくる魔術って地味なんです。でもね、それがなんていうかもう現実味を帯びていて。実はこういうことってあるんじゃないか、って思えて思わず身震い。ザクセン選帝侯に戦争を続けるよう仕向けるところとか。現代社会にも黒魔術でなくても、こういう負のエネルギーが渦巻いていて、それに影響されるってあるなあ、って思うんです。
ただね、私自身はクラバート自身の魅力がイマイチ分かりませんでした。成り上がり者が苦手なのかも?トンダやミヒャルには感じたような人格者的な魅力がクラバートにはあまり感じられなくて。野心は強いけれど、観察力もあまりないし。まぬけを装ってるけど、実は賢いユーローのほうが、断然魅力的(私はね)。なので、いまいち分からなかったのです。クラバートたちを救うことになる女の子がどうして、それほど話したこともないクラバートを愛し、命までかけられたか、ってことが・・・。そこをもうちょっと描いてほしかったなあ。とは思うけれど、黒魔術を越えるもう一つの魔法(愛だよ、愛っ←CM風)がある、これもまた現実だと思いました。
そんなわけで、個人的にはクラバートという人物像に入れ込むことができなかったのですが、現状を疑い、おかしいと思ったらそれに立ち向かう、その気概だけで天は味方をしてくれるのかもしれない、そんなことを思ったクラバートでした。