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ファンタジーだからできること

『奇妙でフシギな話ばかり』(2025年)ブルース・コウヴィル作 金原瑞人訳 橋賢亀絵 岩波書店

今日の一冊はこちら!

帯に訳者の金原さんが“ずっと訳したかった”と書かれていたので、気になっていた一冊でした。

 

装丁もおしゃれで手に取りやすい。

短編集なのでサクサク読めるし、短編がゆえに、ファンタジー苦手な人でも、すんなりとその世界観に入れそう。

 

天使、ユニコーン、吸血鬼、小人にオオカミにエルフ。

楽しい話、ちょっと怖い話が9つ入っています。

 

特に惹かれたのは怖い話の方。すごくダークというわけでもないんですけど、どこか陰りも帯びていて、そこがすごくいいんです。陰陽のバランスとでもいいましょうか。

 

陽だけでも疲れるときってありますよね。かといって、現実的なことばかり見せられても、確かに自分の気持ちを代弁してくれてるところはあっても、なんだか疲れるし希望がない。

 

ところが、不思議。

ファンタジーで人間以外の世界も見せられると、いわゆる希望の話じゃなくても、なんか力がもらえるんですよね。

ああ、現代に足りてないのは、こういう物語なのかも、って思うんです。

 

なかでも印象的だったのは、ユニコーンの物語。

自分が何者だったかを忘れていた少年が、いままで生きづらかったのは、孤独だったのは、本当の自分の姿を見失っていたからと気付く物語なんです。

 

ここまでだったら、よくあるストーリーかもしれません。

でも、この物語はもう一歩踏み込む。

普通の物語だったら、“敵”や“悪者”として描かれる登場人物たち、彼らもまた光輝く存在だ、としているんです。自分では気づいていないけれど。

ここまで踏み込んでいるのは珍しい。私たちは、誰もが光輝く存在、そんな深いことを語る。わずか20ページで。

 

ファンタジーだからできること。

 

そのほかにも、オオカミの物語など、短編ながら壮大な物語が広がります。

オオカミと一緒に森を駆け抜ける感覚を味わえる。

こういう物語をときどき読み返すと、心が整う気がしました。

読めてよかった。

 

ぜひ。

 

 






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