
夏真っ盛り、いかがお過ごしですか?
夏が苦手すぎる私は、ちょっと夏眠してました。
さて、今日の一冊は、一気読み!ではなく、朝の静かなひとときに、1章ずつゆっくり、かみしめながら読みたいこちらのエッセイ。
数学を軸にした独立研究者である森田真生さんが、5年間にわたり『母の友』に連載していたエッセイをまとめたもの。
いやあ、素晴らしかった。
『博士の愛した数式』や『世にも美しき数学者たちの日常』などを読んで、少しは数学嫌いが改善されたかのように思えた私ですが、やはり根が数字アレルギー。気になりつつも、なかなか手に取らなかったのですが、あるところで編集者さんまで呼んで読書会をしていたことを知り、そんなに?そんなに、いいの!?と興味がわいたのです。
ええ、そんなにも(笑)よかったです!!!
そこに広がっていたのは、おだやかで優しい世界で、朝の始まりに読むのにぴったりだったのです。森田真生さんの優しいまなざし、子どもたちのまっすぐで瑞々しい感性、“初めて”に出会う新鮮な驚き。まさに、これぞセンス・オブ・ワンダー。ああ、世界っていいものだった、と思い出させてくれる、抱きしめたくなるような一冊でした。
そうよね、そうよね、と頷きながら読み、書き留めておきたい箇所、ご紹介した箇所が多すぎて……。
印象的だったエピソードは全部(笑)なのですが、一つご紹介するとコロナ禍で幼稚園が休園してしまったときのエピソードが素敵でした。
ステイホームで、幼稚園が休園したとき、著者は以前子どもが言っていた言葉を思い出し、「おうちもおにわも、ぜーんぶようちえん」にする、と決めるんですね。自宅を幼稚園に見立て、みずからを「幼稚園長」として生きる決意をする。素敵だったのは、そのときの指針です。学びの方針として、出てきたキーワードが「謙虚と観察」だったそうで、観察は分かるとしても、はて謙虚???
英語でhumilityという「謙虚」の語源は、ラテン語のhumus(大地)とhumilis(低い、低く)からきているそう。“低く、大地へと視線を下ろし、そこから物事をじっくり観察すること”、これだけを子供たちと過ごす時間の指針として、あとは彼らのしたいように任せることにした、と。“みんな仲良く(地球にやさしく)”とか“思いやり”とか、関係性に関するふわふわした指針じゃない。そういうのって、体験があって、学びが先にあって、そこから育まれていく、あとからついてくるものですよね。養老孟司さんが喜びそうな指針だなあ(笑)。
そしてね、ヴァージニア・ウルフがいうところの“無関心のなぐさめ”ということにも触れられていました。虫や植物の世界、人と人が関係する社会とは別の世界が、日常のすぐそばで淡々と営まれている。そのことに触れると、心が少しだけ軽くなることがある、と。
悲しみや怒りを乗り越えるきっかけは、自分を思ってくれる他者の存在だけとは限らない。ましてや、心の強さや独特や思想だけで人は前向きになれるわけでもない。凛として咲く花や、一匹の虫が、閉じかけた心の窓を開いてくれることもある。P.130
無関心という言葉より、自分と関係ない世界が広がっている、というほうが個人的にはしっくりくるかな。
児童文学は、それを感じさせてくれるから、私好きなんです。人間だけが世界じゃないよ、って感じさせてくれるから。
私も、視線を低く、大地へと向けよう。
ていねい(な気持ちで)に暮らす、ってこういうことだと思わされた一冊でした。
ああ、これテーマ本で私も読書会やりたくなってしまいました。ぜひ。