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想いと記憶の交錯。隠れた名作!

まぼろしのすむ館』(1990年)アイリーン・ダンロップ作 中川千尋訳 ベネッセ

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今日の一冊は、"オムライスラジオ”生きるためのファンタジーの会”(←毎回深堀した、とても興味深いお話が聞けるのでぜひ!)で過去イチと大絶賛されていたコチラ。

隠れた名作ながら絶版です。うう、児童文学あるある。ベネッセ(福武書店)のベスト・チョイスシリーズってホントにいい物語が多いんですよね。

 

フィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』がお好きな方なら、きっとお好きな物語かと思います!古い屋敷、まぼろし、謎解き、複雑な家族関係……古い屋敷が持つ記憶の物語。ミステリー要素もあって一気読みです。

 

また、オムライスラジオでも言われていましたが、この物語は季節の自然描写の美しさがとってもいいんですね。例えばこんな感じ↓

 

枯葉の舞う午後の琥珀色の光の中を帰ってきた

 

こういう描写がなく、人間関係だけ(特に毒親のところ)が描かれていたら、ちょっと重いテーマだったかも。自然描写の美しさとエネルギッシュな子どもたちに救われます。

 

さて、物語の舞台は現代のスコットランド

父を亡くし、母子家庭となった主人公フィリップは、母親がロンドンの看護学校で学ぶため、3か月だけいままで音信不通だった独身の大叔母の家に預けられることになるところから始まります。その大叔母の住む家が、時が止まったかのような重々しいビクトリア様式の邸宅「丘の家」。そこには、同年代のスーザンという親戚の少女も2年前から住んでいて、二人はすったもんだありながらも仲良くなり、明かりが灯るはずのない部屋に時々明かりが灯るという屋敷の謎を一緒に解いていくという物語。

 

この主人公フィリップがですね、『秘密の花園』のメアリ並に実にふてぶてしい(←いいぞいいぞ笑)。卑屈な思いからくる、彼のイライラは私も身に覚えアリ。一方の、スーザンが性格がよく、なおかつ聡明だから余計にフィリップのひどさが際立つんです。だからこそ、ですよ。あることをきっかけに、彼が変わっていくさまは感動します。成長には痛みを伴う。けれど、それを乗り越えた先にあるすがすがしさといったら!

 

人は自分を向き合うためには、一人の時間も大切。けれど、成長するときは人と関わるときなのだなあ、と改めて実感。

 

ところで、この大叔母のジェーンはフィリップが母親から聞いていた人物像とはずいぶん違いました。確かに笑わないし、ちょっと変わった人ではある。けれど、母親から聞いていた高慢ちきなところはなく、フィリップは自分の先入観や偏見に気付いていくんですね。

 

ジェーンはいまでいう毒親に束縛されていた人。他の兄弟はみーんなうまく逃げだしたのに、彼女だけが優秀だったにも関わらず、学問の道をたたれ、結婚を約束した相手とも悲劇的な別れをし、長生きしてしまったわがままな父親の面倒を見るという人生を送り、笑うことを忘れてしまっていたのです。途中から、フィリップとスーザンが何とかしてジェーンを笑わそうと、燃えるところがいいんだなあ。

 

さあて、なぜ幻はあらわれたのか。

二人の子どもたちは、どうそれに立ち向かうのか。

 

古い家には幻が現れる。きっと怨念も。日本の古民家しかりですよね。こわいのが大の苦手な私は、昔はそういうのがイヤで、明るい清潔な家に惹かれていました。が、そういう家がどんどんなくなっていくことに、今は勝手ながらもさみしさを感じます。ラストにはちょっと言いたいことがあるのですが、それ書いちゃうとこれから読む人にとってはネタバレになってしまうので、読んだ方たちと語り合いたいです!ぜひ。

 




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