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今日の一冊も品切れ状態のもの。人間の視点だけで息詰まりそうになったときにおススメです。
タイトルにあるボガートとは、ケルト神話にある家に住み込んでいる妖精のこと。妖精といっても、ティンカーベルのようなふわふわ羽の可憐な感じじゃなくて、妖精というより妖怪?日本でいう座敷童みたいな家憑きで、実に好奇心旺盛でいらずらっ子。ちょっと厄介なくらいの愛すべき“かまちょ”(かまってほしがり屋さん)なんです。
ある日このボガートの相棒であった老人がなくなり、その住まいであったスコットランドの小さなキープ城をカナダに住む遠縁のエミリーの家族が相続することになります。けれど、お城といってもボロボロで小さいし、ここに住むわけにはいかないし……というわけで、見に来たもののカナダに帰るのですが、そのときボガートも家具と一緒にカナダに来てしまうんですね。物語の時代は割と現代で、パソコンが出始めた頃の話なのですが、ボガートは好奇心旺盛だからさあ大変!初めて見る家電製品に興奮して、いたずらするくらいならいいのですが......町に出てしまい、信号機や路面電車まで操作してしまうから大混乱です。
確かにボガートはやっかいではあるけれど、悪意はなくて、人を傷つけるつもりはさらさらないんです。ちょっと存在に気付いてもらいたい、自分を認めてもらえれば満足なのに、カナダの都市ではボガートの存在なんて誰も信じてくれないんです。こんなにもこんなにもアピール(いたずら)してるのに、自分がいないものとして扱われる悲しみ、切なさ、そしてホームシック。もうね、すっかりボガートのほうに感情移入ですよ。ボガートみたいな存在を“なきもの”にしてしまった現代社会のほうが、おかしい!
興味深かったのは、あやしげな精神分析医が出てくるのですが、この人がエミリーの奇行(ボガートのせいなのですが)をポルターガイスト現象と決めつけて、エミリーをつけまわすところ。ある意味、超常現象の世界を研究しているのに、精霊の存在は認めないんです。ポルターガイスト現象も人の心が作り出した現象として研究してるから、実に人間中心。エミリーのお母さんも娘が主張するボガートの存在は認められはしなかったけれど、娘が精神分析医の研究対象にさせられそうになったときは断固として断ってくれて、ほっとしました。
さあ、物理的にスコットランドへ戻ることができないエミリーたちは果たしてどうやって、ボガートをお城へと帰したのでしょうか。斬新な方法すぎて、この部分に関しては、文系の私にはちんぷんかんぷんでした(笑)。
アザラシが出てきたときは、『フィオナの海』を思い出したり、ケルトの世界ってなんだかほっとします。カナダの現代文化とケルト文化が残るスコットランドの地を行ったり来たりすることで、精霊が認められる社会のほうが健全と気付かされる物語です。
健全な世界を。