
今日の一冊は、楽しい楽しい児童文学エッセイ。友だちと“そうそう!”って話してる感覚になれるブックガイドで、取り上げられている物語たちを読んだことない方はもちろん、読んだ方にもおススメです。中島京子さんと言えば、数々の文学賞を受賞されている方ですが、こんなにも児童文学愛が深いとはシラナカッタ!
取り上げられているのは、誰もが読んだことはなくても名前は知っているであろう名作たち。ああ、子どもの頃の幸福体験って本当に大事だし、宝物だなあとしみじみしちゃいます。
以下メモ的にざーっと個人的共感ポイントを紹介しますね。
『クマのプーさん』:
中島京子さんはお姉さまとおばさんになったいまでもプー語でやりとりするんだそう。なんて、おちゃめ。物語の世界観を共有してるって、ワクワクすることだし、たった一言で世界が広がりますよね。そういう仲間が家族にいるのがうらやましい!
『銀河鉄道の夜』:
さびしくて、美しくて、ある意味、誰にも決してわからないようなところがある、と。でも、みな、そういう自分、自分にすらわからない自分を抱えているからこの物語が好きなのではないか、と書かれていてナルホドなあ、と。(確かに宮沢賢治はよくワカラナイ......小声)
『宝島』:
知らない人はいないであろう『宝島』。実は、私未読だったんですよね。ドキドキハラハラとか苦手だし、海賊とか冒険とか全然惹かれなくて。ところが、どうしても一冊だけ選べと言われたら、中島京子さんはこの物語を選ぶというではありませんか!読んでないのは生涯の大きな損失とまで。回想形式で描かれ、いわゆる「ネタバレ」的手法によって書かれているから安心感を持って読める、とあったので、うーん、そこまで言うなら……といまさらながら読んでみました。はい、一気読みでした(笑)。
『トムソーヤの冒険』:
中島さんは、トムより断然ハックルベリーのハックが好き。トムはいかんせん、女の趣味が悪い!と書かれていたのには笑いました。私もそう思ってたー(笑)。
『秘密の花園』:
そこまで言う!?ってくらい主人公のメアリをけちょんけちょんに言うからもう笑っちゃいます。そして、“劇的に変化するのはメアリよりも庭のほう、花園のほう。従って、この小説の主人公は人ではなく、植物なのだ”、という主張にはナルホドでした。
『あしながおじさん』:
あしながおじさん(ジャービーぼっちゃん)は立場を利用するわりとずるい男。わかるー!私も昔からこの人のどこがいいんだろう?と思ってた(笑)。『挑発する少女小説』(斎藤美奈子著 河出新書)でも痛快な言われようでしたが、やっぱり女性はジュディよりサリー(『続・あしながおじさん』の自立した主人公)が好きよね。
『ピーターパン』:
子どもの物語であると同時に大人の物語。どちら向けというのではなくて、同じものを見ているのに、大人か子どもかで見えるものの濃度が違う、と。むむむ、抄訳ではないちゃんとした版を読んでみなくては。
『モモ』:
ちょうどこのエッセイがコロナ禍に書かれたこともあって、中島さんは、灰色の男たちは、むしろ「正しさ」のマスクをかぶって現れることがあると気づいたといいます。うんうんうんうん!「不要不急」は社会を守るための対策だった。でも、「不要不急」は悪、「要」と「急」が善となっていく……わたしたちの時間はわたしたちの命は、幸福をこそ追求すべき、と力強く述べられた箇所には、ちょっとうるっときました。
『小さなバイキング ビッケ』:
ビッケは臆病だけれど知恵者で、ハルバル父さんは馬鹿の怪力男みたい。でも、父さんは、いさぎよく負けを認めたり実にかっこいい。どっちがいいというような価値観の押しつけをあまり感じないのが本書の魅力の一つ、といいます。なるほどねー。戦いがはいってくると、どうしても相手方を悪く描きがち。でも、この物語では、登場人物や語り手自身の声が、素朴な反省を表明する、その潔さが、全体の風通しの良さを作っている、と。ただたんに、“知恵で悪者をやっつける”で終わるのではなく、その先、反省とか、赦しとか、和解がある。実は、戦いに勝つことよりも、ずっと難しいそれらを嫌味なく説教くさくなく書き込んでいる、と中島さんは述べられます。そっかあ。そんな深く読めてなかったので、読み直してみようと思いました。
その他にも、『点子ちゃんとアントン』『不思議の国のアリス』『ピノッキオの冒険』『ライオンと魔女』『だれもしらない小さな国』『二年間の休暇』『ふくろう小路一番地』『トムは真夜中の庭で』『ゲド戦記』と名作がずらり。
子どもの頃の幸福体験を思い出させてくれる、ここに掲載されてるもの全て読み返したくなる楽しいエッセイでした!