
食べることが好きな私は、料理に関する小説のタイトルやイラストを見るとつい、手に取ってしまいます。
本に書いてある、メニューから想像する料理の出来上がった香りや食べた時の表現には、食欲をそそられてしまいます。
是非本書で、地元青森の食材にこだわった絶品料理をどうぞ。
【山のふもとのブレイクタイム】あらすじと感想
故郷の青森で「顔と料理が天才」と噂されるシェフ・登磨が切り盛りするレストラン「コッヘル デル モタキッラ」通称「葵レストラン」には常連客やテイクアウトのお客さんなど、その空間と食事を楽しむために今日も足を運びます。
ハーブポークの休息
中学生の甥っ子に作った、引退試合弁当
☆季節のおすすめ☆
ポークステーキ ジェノベーゼソース
(上品な香りでやわらかい奥入瀬ハーブポークを我らが麗しの店長がジューシーに焼き上げました)
こぐまのストロベリーティラミス 果汁あふれる八戸産極甘いちご使用
(こぐまが心をこめて潰しました)
登磨さんの作る料理はどれも美味しそう。
そしてそこには、色んな人が抱えている苦しみを彼が作る料理がときほぐしてくれます。
そんな彼を支えてくれるのが、従業員の美玖ちゃん。
実は彼女自身もたくさんの困難を乗り越えたから、人の苦しみが分かるのでした。
登磨の甥瑛太の不登校を猛烈サポートしてくれたテニス部女子早苗の挫折。
彼女の行動を読んでいて、瑛太に気があるとしか思わなかった私。
違うよね…それでも気づかなかったってどんなけ鈍感やねん。
店長よりもひどい…
店長は元カノにこう言われています。
「あんたは料理のことしか頭にない。ひとに対して鈍感すぎる」
その店長までもが、早苗の行動に気づいたのに…
そんな私ですが現実の世界では、人の気持ちに寄り添える人になりたいです。
こんがりチーズの焼きおにぎり
同級生の祖母へ、退院祝いの一品
☆季節のおすすめ☆
新郷村産「銀の鴨」のステーキ トマトとバジルソース
(店長のように爽やか風味で旨みたっぷりの鴨肉です)
夏野菜のカポナータ
(揚げたナスなどの野菜を甘酸っぱいトマトベースのソースで炒め煮。夏バテに店長の笑顔とともにどうぞ)
枝豆の冷製スープ
アスパラのムース こぐま手搾り桃果汁入りの生クリーム添え
認知症になった人の扱い方、最期に向けての過ごし方そんなさりげない優しさと美味しさが詰まったお話。
大切なひとなら、3年たっても10年たっても生きてると思いたいです。
どんな時でもその人の気持ちに寄り添える美玖ちゃんが素敵です。
「人生ずのはよぉ単なる時間と出来事の積み重ねで、そこさ勝ち負けはねんだ。」
読んでいてお腹は空きますが、心はあったまります。
必ずしも頑張ったことが服われるとは限らない、わけじゃない。
そして、努力はすぐに分かりやすい形で報われるというわけでもない。
中略
ハナさんからこの笑顔を引き出すことができたのなら、無駄ではなかったんだ。
そして、登磨がコンビニで出会った女の子がおにぎりの感想をいうところは想像すると、おにぎりが食べたくなってしまいます。
こんがり焼けたハムはお肉の味がギュっと濃くて、チーズはまろやかで生姜のおかげでさっぱりして。ご飯のやわらかさもちょうどよくて。
お味噌が、しっかり豆の香りがして、そのおこげがまた香ばしくて、おいしかったです。
おにぎりはいつだって、登磨や人々を救います。
見えないケーキ
ずっと優等生のままでいる拒食症ぎみの女性へ
☆季節のおすすめ☆
田子町産ステーキ 福地ホワイトにんにく使用のガーリックトマトソース
(店長をみた時と同じくらいとにかく元気になります!)
秋サケとじゃがいものなめらかクリームスープ
リンゴと紅茶のパウンドケーキ こぐまが丹精込めてスライスした紅玉のケーキ
大人になっても親の束縛から逃げられない女性の話。
親が喜んでくれるから、親が決めたから。
そうやって自分軸を親に持っていく同級生に料理で気づかせてくれる所がよかったです。
自分というものが見えていない工藤さんはもはや、本能であるはずの生きることすらおぼろげになってしまっているのかもしれない。だから、誕生日を祝いたかった。生れてきた事を祝、ここまで生きてきたことを祝い、これからの人生を祝いたかった。
誰の人生でもない。自分の人生を、自分のために生きていって欲しい。
全ての悩める人たちに贈りたい言葉です。
ホワイトソースと厄介な頼み
取材に来たのは登磨の因縁の相手?
☆季節のおすすめ☆
活ホタテのこんがりソテー ホワイトソース
(程よい歯ごたえがありながら店長の肌のようにきめ細かで、濃厚な甘みの分厚くぷりっぷりの平内産ホタテ使用。雪のように真っ白でなめらかなホワイトソースともよく合います)
冬野菜のバーニャカウダ
バターナッツパンプキンのこっくりスープ
クレープキラキラアップルジュレがけ 甘酸っぱい完熟紅玉使用
(こぐま渾身の手搾り果汁)
登磨の元同級生で現新聞記者の西野との関係。
西野くんの言葉や態度にイラっとしつつ、全員が成長し、自分の進むべき道を確認していくところが良かったです。
美玖ちゃん、良い事いうなぁ~
「目標を達成する自分自身が大事なら、同じくらい友だちも大事にしなくちゃおかしいです。友だちは道具じゃないんですから。店長は、西野さんが頑張ってるっていいますが、店長だって頑張ってるじゃないですか。お願いを全部聞いていたら、店長が倒れてしまいます」
自分が自分として生きている証を見つけようとするかつての登磨のような今。
そんな登磨に対して美玖ちゃんは、こう言います。
「頑張る動機が違っているように見えます。
工藤さんは親御さんのために頑張っていました。それをまた、ご自分の意志だと思い込んでいました。
出だしがずれてる頑張りは、実を結ばないどころか、害になりますよ。
工藤さんが幸いだったのは、ギリギリのところで気づいて、親御さんと自分を切り離して、仕切り直したところです。親子でも他人でも同じです。
自分以外の誰かに自分を乗っ取られては、いずれ限界がきます」
美玖ちゃんに、自分の気持ちを吐き出した登磨。
当時の出来事は、周りも知っていたこと。
出来事だけなら周りも知っていた。
だが、不安や焦りや悔恨といった腹の中のことまでは誰にも話したことはない。
「辛いことをずっと秘めておくと、喉をふさいじゃいます。」
美玖ちゃんのように、常に否定せず、寄り添って本人が気づくのを待つ。
人ははるか大昔から誰もがそうしたかったのに、そうしたいって思っているはず。
けれどなぜか、それが上手く出来ません。
特に分かり合っているはずの夫婦や家族の間では…
そしてそういう存在は人生には必要なのです。
1人でいい、人生でそんな人を見つけて欲しい。そう思いました。
前作は【山の上のランチタイム】ですが、前作を読んでいなくても十分楽しめます。
イケメンオーナーと素手でリンゴをつぶせちゃうこぐまみたいな美玖ちゃん。
2人のやり取りが楽しい。
2人の出会いは随分と前からあったみたいですよ。
美玖がオーナーを想う気持ちは通じてると思いますが、恋愛関係に発展するにはもう少し時間がかかりそうです。