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【世界からネコが消えたなら】川村元気 あらすじと感想

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脳腫瘍が見つかった青年が、自分とそっくりの悪魔から「明日死ぬ」と言われてしまいます。

そんな悪魔から提案されたのは「この世界からひとつなにかを消すと、一日あなたの寿命が延びる」ということ。

 

主人公がとった行動とは?

 

【世界からネコが消えたなら】あらすじ

月曜日。

 

体調不良に悩まされていた郵便配達員の主人公は、ただの風邪だと思っていたのですが、なかなか治らず医者の診察を受けます。

 

すると、進行した脳腫瘍だということが分かります。

 

冷静になれないまま自宅に戻った主人公は、自分そっくりな容姿の「悪魔」と名乗る男から、「世界からひとつ何かを消すと一日寿命が延びる」と提案され、主人公の周囲にある「もの」を消していきます。

 

消していくものは自分では決められず、「悪魔」が提案し決定するのでした。

 

主人公はまず「電話」をこの世界から消し、最後の電話で「元彼女」に電話をかけます。

 

火曜日、彼女と再会し、彼女からいくつかの質問をされるのですが、その質問の答えを答えようと電話をかけようとするのですが、電話は消してしまった後なのでした。

 

その後も主人公は悪魔によってこの世から「もの」を消していき寿命を延ばします。

 

「電話」「映画」「時計」と消していく中で、主人公はがんで亡くなった母親と今では疎遠になった父親を思い出します。

 

そして金曜日、悪魔から「猫」を消すことを提案されるのですが…

 

【世界からネコが消えたなら】感想

ネコがひょっこり顔を出している表紙に「世界からネコが消えたなら」というタイトル。

 

これだけだと私は手に取らなかったであろう小説。

 

ではなぜ(読みたい)と思ったのか?

 

それは、「人生を見つめ直す」と書かれた高校生の読書感想文を読んだからです。

 

彼女が書かれた感想文に心を打たれ、強烈に「読みたい」と思ったのです。

 

早速図書館で借りて読んだのですが、期待通り胸につきささる素敵な小説でした。

 

無数の失敗や後悔、叶えられなかった夢や会いたかった人等々。

 

そういった全てを抱えながら、主人公は死へと歩みを進めるのですが、主人公は「それでいいんだ」と考えるようになります。

 

私が本を読もうと思ったきっかけの感想でも書かれていたのですが、「今の自分自身で良かった」と主人公が思えることなんです。

 

悪魔に、「あとどれくらい生きるかなんて誰にも分からないんです。すべての人間にとって寿命は未知なんです。だから、早いとか遅いとかはないんですよ。」

 

そう言われた主人公は、不思議な体験をしながら、そのことに気づいていきます。

 

自分が満足できる人生というのは、社会や人に良い影響を与え、幸せに出来るような人生。

 

どれだけ失敗や後悔をしてきても、最後に胸を張って誰かひとりでも、幸せに出来たと言えるようなそんな人生を送ることが満足できる人生なんだなと思います。

 

【世界からネコが消えたなら】名セリフ

この小説には名セリフがたくさんありました。

いくつかご紹介します。※ネタバレ注意※

 

月曜日 悪魔がやってきたより

人の動物のぬくもりってやっぱり温かい。

この温もりを忘れたくないと思います。

 

僕は黙ってネコを抱きしめる。温かくて柔らかい。

ふだん何気なく抱いていたけど、こういうのが命というのだといまは思う。

 

僕には人生の最後に、電話で話すに値する人がいなかった。

それほどまでに希薄な人間関係の中で、僕という人間は生きてきた。

人生の最後でそんなことに気づくなんて、あまりにも悲しすぎる。

 

火曜日 世界から電話が消えたならより

何かを得るためには、何かを失わなくてはね。

 

自分でも実感がなかったことに対して、他人が驚き、失望し、嘆き悲しむことができないのは当然だ

 

恋には必ず終わりが来る。必ず終わるものと分かっていて、それでも人は恋をする。

それは生きることと同じなのかもしれない。必ず終わりがくる、そうと分かっていても人は生きる。恋がそうであるように、終わりがあるからこそ、生きることが輝いて見えるのだろう。

 

現代社会は情報過多で時間に追われて、しんどいけれど、スマホや携帯がなかった時代はそれなりに楽しかったなとふと思ってしまいました。

 

すぐにつたえられないもどかしい時間こそが、相手のことを想っている時間そのものなのだ。

 

水曜日 世界から映画が消えたなら

愛って深すぎて、考えだすと止まりません。

 

どんな形であろうと、人が純粋に愛すべきものを語るとき、そこには感動が生まれるのだと、そのとき僕は知った。

 

大人になって得たものと失ったもの。もう二度と取り戻せない、感動や感情。そのことを思うと、なぜだか無性に悲しくて涙が止まらなかったのだ。

 

本当に大切なことは一番近くにあるのに、気づかなくて遠くて、失った時に初めて分かる。

あるあるなのに、なぜ気づかないんだろう。

 

ほとんどの大切なことは、失われた後に気づくものよ

 

木曜日 世界から時計が消えたなら

時に言葉は鋭い牙をむきます。

言葉に傷つき関係を壊してしまうことさえあります。

 

ショックだった。キャベツとの四年間のふたり暮らしを経て、僕らは分かり合えているはずだったのに。言葉が分かるって残酷だ。

 

動物を飼っていればと考える時があります。

けれども、やっぱり頭で考えてお世話出来ない自分が邪魔をして、結局飼えず今に至っています。

 

猫というのは大したものだ。いつも僕の気持ちには反応してくれないくせに、本当に辛いときはこうしてそばにいてくれる。

 

愛を知らないより、傷ついても愛を知る方がいいのかもしれません。

人間だから。

 

(愛は)面倒くさかったり、ときには邪魔だったりするのだけれど、でもいいものだよ。うん、とても良いものなんだ。

そうだ。僕らには愛という感情がある。

 

金曜日 世界から猫が消えたなら

お互いに想っていても言葉にしないと伝わらないことってあります。

なんでこうなってしまったんだろう。そう思う事って結構あるのかもしれません。

 

父と僕がだめになっていった理由はいま考えてもよく分からない。

もともとは仲良しな家族だったはずだ。三人で食事にも行ったし、旅行も行った。

ただ僕と父は、特に理由もなく、長い時間をかけて、その関係の根を腐らせていったような気がする。

 

どの家庭でも同じなのかもしれません。

家族だから分かり合えてるわけじゃない。

 

家族だから。

そこにいることが当たり前で、当然いつまでもうまくやっていけるものだと信じて疑わなかった。そう思って、お互いの話を聞かず、自分の正義だけを主張し続けた。

 

家族って何だろう。

そう考えた時、これを読んで腑に落ちました。

 

家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。僕らはただ血がつながっているだけの、ふたりの個人だった。

 

それなのに、お互いに甘えて、甘んじて、気が付いたときにはもうどうしようもないところまで来てしまっていた。

 

母親が死ぬまでにしたい10のことを息子に託す手紙には涙がこぼれ堕ちました。

私もきっと同じように書くだろうなと。

 

あなたの素敵なところ。

 

土曜日 世界から僕が消えたなら

何が幸せでそうでないのかは、自分次第なんですよね。

 

幸せか、不幸せか。自分ではよく分からない。

ただ一つだけ分かることがある。

そう思うだけで、人はいくらでも幸せにも、不幸せにもなれるということだ。

 

人間というのはとかく、選んだ人生から選ばなかった方の人生を眺めて、うらやましがったり後悔したりしている生き物ですから

 

人は自分の死を自覚したときから、生きる希望と死への折り合いをゆるやかにつけていくだけなんだ。沢山の些細な後悔や、叶えられなかった夢を思い出しながら。

でも世界から何かを消す権利を得た僕は、その後悔こそが美しいと思える。

それこそが僕が生きてきた証だからだ。

 

自分が存在した世界と存在しなかった世界。

そこにあるであろう、微細な差異。その小さな小さな「差」こそが僕が生きてきた”印”なのだ。

 

正論だけではダメなことって沢山あるんですよね。

 

父はいつだって正しいことを言う人だった。

でも、僕はその正しさが嫌だったんだと思う。

 

日曜日 さようならこの世界

物語の最後は、主人公が、自分が死ぬ前に飼い猫を父親に託すため、父親が住む隣町へと自転車を走らせるシーンで終わります。

父親と再会を果たすシーンも主人公が消え行くシーンも描かれていません。

 

物語の結末をこういった形で終わらせてくれたことで、読者自身が最後のシーンを想像できる所が、作者の優しさを感じました。

 




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