
小さな子どもたちと楽しそうにしている母親の姿を遠くから見つめる一頭のウシ。
彼はもうじき食べられる運命なのでした。
食育や親子の絆がさりげなく描かれている【もうじきたべられるぼく】
大人にもおすすめしたい1冊です。
もうじきたべられるぼく
はせがわゆうじ作/中央公論社
作者のはせがわゆうじさんは、20代のころ車内から牛を運搬するトラックを目にし、その牛が(今から殺される場所に行くのだ)と思うと何とも言えない気持ちになったことで、この絵本を書くきっかけになったのだそうです。
一度仕上げた絵本でしたが、出版目前でダメになり、無料で絵本を紹介するアプリに提供したところ、SNSで話題となりました。
そのことがきっかけで、2022年8月に中央公論社から書籍化され、2023年9月には未来屋書店主催の「第7回未来屋えほん大賞」を受賞されました。
もうじきたべられるぼくのあらすじ
【もうじきたべられるぼく】のあらすじは、食べられることが決まったウシくんが自身の運命を受け入れ、最後に一目お母さんウシを見ようと電車に乗って故郷へと向かうお話です。
リュックサックを背負ったウシくんが二足歩行で電車に乗っていくという所は、まるで人間のようで親しみを感じます。
故郷へ向かう電車の中で、ウシくんが小さかった頃の思い出を振り返るところは、胸が熱くなりました。
(動物園のぞうやきりんみたいにみんなに愛されてみたかったな)
(おなじ動物なのに、だれにも知られずにやたらと太ってたべられるのか・・)
同じ動物なのに、こんなにも違う運命をたどるんだ。というやるせない気持ち。
故郷に着いたウシくんは、楽しそうにしているお母さんを見つけます。
そしてお母さんを悲しませないようにと、遠くからお母さんを見つめています。
そしてそっと、牧場を後にするのでした。
走る列車に乗るウシくんの姿に気付いたお母さんウシ。
すぐに列車を追いかけます。
紙質がなんともいえない触り心地。
優しいイラストに色鉛筆で書かれた感じがウシくんの今の気持ちがあらわれている様な気がしました。
ウシくんの顔の表情は後姿でわかりません。
なので車窓から母親に手を振る姿は、読む人全ての人がそれぞれ違った表情を思い描かべるのです。
私は母親と子どもの両方の視点から読みましたが、どちらの立場でも痛いほど気持ちが分かるので、辛くて胸が張り裂けそうになりました。
【もうじきたべられるぼく】の最後は
せめてぼくを食べた人が自分のいのちを大切にしてくれたらいいな
夕空をバックにして、ウシくんが故郷を後にする姿で終わります。
生きていくというのは大変なことですが、自分の命はウシくんのような命をいただくことで成り立っているんだということ。
命を大切に考えることを忘れないでいたいと思います。