
人魚ってアンデルセンの人魚姫のこと?
王子はいったい何者なの?
王子様は人魚姫と再会できるのかが気になります。
【人魚が逃げた】
まずは、アンデルセンの「人魚姫」を簡単におさらいしておきます。
6人姉妹の末娘「人魚姫」。
15歳の誕生日に海の上の世界を見ることが許されます。
人魚姫は船上にいた王子様に一目惚れをし、突然の嵐で溺れた王子を入江の砂浜まで引き上げ、助けます。
海に戻っても王子の事が忘れられない人魚姫は、海の魔女から、人間の足と自分の声とを引き換えにし薬を手にいれます。
もし王子が他の女性と結婚したら、人魚姫は「海の泡となる」という条件のもと、それを承知で人魚姫は足を得て王子と再会するのでした。
王子に見つけて貰った人魚姫は、いつも王子のそばにいました。
ところが王子は、隣国の王女が入江で助けてもらった女性だと知ると、王女と結婚してしまいます。
声が出ない人魚姫は王子を助けたのが自分だと言えません。
人魚姫が生き残る方法は1つ。
姉たちが魔女からもらってきたナイフで、王子を刺し殺せば、人魚に戻れると言われます。
ナイフを持って眠っている王子の寝室へ行く人魚姫でしたが、王子を刺すことはできず、海の泡となってしまうのでした。
これが人魚姫のお話。
人魚が逃げた人魚姫はやはり、物語の人魚姫のようですが…
プロローグ
失礼ですが、あなた様は?
「王子です」
王子?今日はどうしてこちらに?
「僕の人魚が、いなくなってしまって・・・」
人魚が?
「・・・・・逃げたんだ。この場所に」
この場所にというのが、銀座なんですよね。
一体、どういうことなのでしょうか。
1章 恋は愚か
舞台は銀座。
プロローグでは、街角インタビューで、「人魚が逃げた」と王子を名乗る男性がSNSに拡散されていましたが、その間に銀座を舞台にさまざまな悩みを持つ男女5人の人生の物語があります。
最初の主人公は、学生の頃にスカウトされたまま軽い気持ちで芸能界に入った男性。
けれども、そこは常にビジュアルをキープし、他人からの妬みやマウントを跳ね返し、周囲の評価を気にしながら多くのことを同時進行で進んでいくような世界でした。
結局事務所は退職し、サラリーマンとして生きていくことにした主人公が出会ったのは12歳年上の素敵な女性。
けれども彼女と会う度に、住む世界が違うと感じ、自分を偽り続ける毎日。
まるでアラジンのようですが、こうした心情って、なかなか他の人に言うことはできないものだなと思います。
そんな時ふと登場するのが、あの王子。
人魚は何も言ってくれなかったからと言い訳する王子に男性は、
彼女は、あなたにだから話せなかったのかもしれません。今のままの自分じゃ、あなたに好きになってもらえないと思ったんじゃないでしょうか。
今の自分に言い聞かせるようにして、王子にそういうのでした。
僕はあの子があの子だから愛したんだよ。それは僕が決めることなのに、自分でそんなふうに思い込むなんて勝手すぎる
じゃあ、なぜ隣国の王女と結婚したの?と突っ込みたくなりますが…
言葉なしで相手の気持ちを理解するなんて、とても難しいことです。
でもだからこそ、目や仕草が表しているその人の想いを、見逃してはいけないのかもしれない
都合よく分かったような気になる。
日頃から、もっと深く相手の心を汲むことが大切なんですよね。
そんなこと、わかっているハズだけど、日々の忙しさや当たり前に思ってなかなか出来ないものです。
2章 街は豊か
若い頃美人でしたが50を過ぎ、何年も着古している白いコットンのシャツワンピースにグレーの長袖カーディガンを羽織っているどこにでもいる女性のひとりになってしまっていると思い込む主人公。
そうですね。得意なことって、やれと言われなくても勝手にやってること、だと思います。親とか友達とか、まわりに誰もいなくても、人が見ていない時にやってしまうこと、それが本当にやりたいことじゃないかなと思うんです。
すべての人にそれぞれ違う歴史とドラマがあるのだから。
2章の女性が持つ悩みは贅沢な悩みだなぁと思いましたが、そういう人生を生きてこられたのは幸せだなと思います。
人はみんな、何かにつまずき、何かに喜び、何かを求めて、何かを手にしています。
唯一無二の生命の息吹で世界が成り立っていることを、私は初めて実感した。
何歳になっても気づきは大切だと思います。
3章 嘘は遥か
ナイフを手にした人魚姫は、一度は王子を殺そうとした。
けれど、人魚姫の迷いと葛藤があった。だから人々はあの物語に共鳴したのだ。
単純な美談などではないと、初めて思えた。あのシーンが我々に教えるのだ。ひとりの人間の中に清濁混合の複雑な感情があり、常にその中からいずれかの自分を選び取りながら生きているのだと。
人間から感情がなければ人間はもうすでにこの世にいないとどこかの本で書かれていました。
感情というものはやっかいで、大変だけれど、感情があるから生きていけるんですね。
私が本当に、ああもうだめなんだなって悟ったのはあなたが積立貯金に手を付けた事自体よりも、罪悪感もなく逆ギレされたことよ。人と人をつなぐのは結局、愛とか恋より、信頼と敬意なのよ。
家族だからと、つい甘えがちになるけれど、家族だから信頼と敬意を持たないといけないのだと思いました。
年をこれだけ重ねても、今こんな事態になっても、やはりあらためて美しい女だっと。交際していたとき、私は彼女を「所有したい」と思ったのかもしれない。
それで結婚をした。しかし、人は誰のものにもならないのだ。
結婚するまでは優しかったのに、という言葉を聞きますが、もしかすると結婚=ゴールみたいなところがあって、そういった人は、相手を自分の所有物のように思っているのかもしれません。
モノというのは、買うよりも売る事のほうが何倍も難しい
これは、本当にそうだなと思います。
新品を購入し、未使用でも一旦自分の手元に置いてしまうと、中古品となってしまう。
すると価値としては、下がってしまうものがほとんど。
だから買うよりも売る事のほうが難しいと思います。
他人の人生なんてぜんぶ虚構のような気がする。全員が全員自分ひとりにしか見えない世界を生きているのだ。
(中略)
それも混みで、すべて運命・・・なのか
ある出来事を後から考えると、そういう運命だったのかなと思うもの。
色々考えてしまう私にとって、考えても同じと自分により言い聞かせることになりました。
悩んでいるとき皆、見えない何かにそう言ってもらいたいのだ。過去に起きたことも、未来に待っていることも、すべて人間には操れない自然現象なのだと。
人はいつも不安でいるんだなということが分かります。
占い等が人気なのも納得できます。
4章 夢は静か
作家の主人公は、下戸でスポーツも苦手で観戦にも興味なし。
一方の妻はスポーツが好きで飲み会に行く事も多い。
そんな何の楽しみもない(と感じている)自分のことを妻はなぜ一緒にいるのかと悩む日々を送っています。
編集者と打ち合わせをして構想を決めても、その通りにいかないこともある。
それはもうどうしようもない。
しかしそんなことを、彼らにうまく説明できる話術は俺にはなさそうだった。
作家さんは、人の気持ちをあれほどまでに丁寧に表現できるから、話術もあるものだと勝手に思っていました。
妻の友人との飲み会の場で、妻たちが席を外し間を持たす際、勧められるもの全てがダメな主人公に「酒もスポーツもしなくて何が楽しいんですか?」と悪気なしに言われてしまう主人公。
(俺でよかったのか)と妻を見て思う主人公。
そんな主人公にある日妻が、何気ない会話の中で一言。
あなたが描いた一行で人生が変わる人がいるかもしれないんでしょう?
彼女は主人公が小説を書く事に関心がなかったわけではありませんでした。
それ以前に、もっと大切なことを理解してくれていたのでした。
5章 君は確か
1章の主人公の彼女が今回の主人公。
1章では男性目線だったのが、彼女の目線で読んでみると同じ場面でもこんなにも違うものかと驚いてしまいました。
自分の良さも悪さも客観的にちゃんと認識するのは簡単じゃないわ。
だから、人から言われたことは、一旦素直に受け止めなさい。他者から移る自分をひとつの指針にするのよ。参考程度でいいから。
こういう事を教えてくれる先輩がいるのは嬉しいですね。
人との出会いは大切にしたいものです。
物事は、見る人によって違うこと、感じかたは人それぞれ。
思い込みは怖い。見方によってこんなにも変わるということ。
私もそうだったのね。と思うことが何度あったことか。
人って言うのはね、毎日見ているものがそのまま心を体にでるのよ。気持ちいいものに囲まれて、美しいものを見なさい。
自分にとって心地よいもの、人、それが大切。
エピローグ
物語男女5人の結末はなんだかいい方向に向かうことが出来るのですが。
そうそうあの王子は結局どうなったかというと。
結果は人それぞれ。
それも物語の1つなんだと思います。
【人魚が逃げた】まとめ
青山美智子さんの本は、連作短編集だから読みやすいです。
何事も最後までわからない。
相手を思ってやっていることがお節介に思われたり、自分のために行動したことが相手を思う事になっていたり…
自分の思いを言葉にするのは難しいけれど、思っていることを言わずにいると、勘違いの多いこと。
だから、出来るだけ後延ばしにせずに、その場で向き合って話をすること。
これが大切だと思いました。
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