
人間は忘れる生き物ですが、経験の積み重ねは人生の糧となります。
義父に利用され代理母となった経験から絶対にのし上がると決意するユイが行動を起こしたこととは…
【代理母、はじめました】
「子どもが欲しい」と願う人と、貧困に苦しむ女性が手を繋いだら?
近未来を舞台に、代理出産という命のタブーに鋭く切り込んだ問題作!
代理母、はじめました -垣谷美雨 著|中公文庫|中央公論新社
【代理母、はじめました】垣谷美雨
1959年、兵庫県生まれ。明治大学文学部卒。2005年「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し、小説家デビュー。少子高齢化と介護、結婚難、住宅問題などの身近なテーマを取り上げ圧倒的な支持を集める。著書に『子育てはもう卒業します』『農ガール、農ライフ』(祥伝社文庫)『老後の資金がありません』『姑の遺品整理は、迷惑です』『うちの父が運転をやめません』などがある。
【代理母、はじめました】あらすじとネタバレ感想
不妊・高齢・独身・ゲイ…心から子どもが欲しいと願う人達。
様々な悩みを持つ人の為に医師の芽衣子やゲイのミチオたちと共に「子供を抱きたい」人々の自由と幸せを求めて立ち上がる物語です。
垣谷美雨さんの本は読みやすい。
今回も好きなセリフとその感想です。
今回の主人公はまだ16歳の時に代理出産をします。
犯罪と知りながら18歳と偽りかつ世間知らずの子どもであることを義父に利用されたのでした。
いつの時代も自分の身は自分で守るしかありません。
経験から学ぶ事はとても大切なことです。
そして寄り添ってくれる人が必ずいるということ。
その人にふりかかる経験はさまざま。
どんな経験もその時は感情が高ぶり苦しかったり悲しかったりするもの。
けれども時がその感情を薄れさせてくれます。
そしてどんな困難にあっても、人は必ず乗り越える事が出来るのだと私は信じています。
ユキを担当したのは芽衣子医師。
医師を目指すきっかけになった理由も含め、女性に寄り添う頼れる医師です。
寄り添ってくれる人がいるということは、安心感を得られます。
代理出産を求めて訪ねてくる女性たち
独身のキャリアウーマン
普段は上司として敬っている態度を見せているのに、飲み会になると大声で子どもの話ばかりする優越感見え見えの彼女に、「女性として一人前ではない」と言われているように感じると話します。
患者の話を聞きながら芽衣子医師は、院長から聞いた言葉を思い出します。
例えばね、高血圧や胃潰瘍を周囲にひた隠しにする人はあまりいないんだ。不妊症は生殖器官の慢性疾患か、または機能不全だ。つまり胃潰瘍などと同じで死に至る病気だはない。それなのに、数ある疾患の1つだと平常心で受け止めることができないで周囲に隠し通そうとする。子どもが持てないとわかったときのショックが大きいこともあるだろうけど、一般の病気と比べて周囲から注がれる眼差しが違うからだ。他の病気であれば同情やいたわりが寄せられるのに、不妊となると、見下されたり差別されたりするんじゃないかと恐れるんだ。昔と違って不妊の原因が男女半々にあると分かってからは、子供を産めない女性に対する差別は薄らいできたんだけどね。
周囲からのまなざし。
気にするなと言われても気にしてしまいますよね。
もし、「そんなことはない」と思う人がいれば、それはそういった経験がない方だと思います。
人間というのは、どんな事でも経験してみないと気持ちは分からないものです。
少数派となると尚更。
相手の気持ちに寄り添っているつもりでも、実際は気付けない事がたくさんあると思います。
孤独な主婦
子どもがいない女はどこか欠けているって会うたび姑から言われるんです。
夫の家族、自分の家族からも言われ続け精神的に疲れている主婦は子どもがいる友人に
同窓会で「子どもがいなくて自由でいいわね。」と言われ悩んでいます。
「卒業後もずっと一生友達でいられると思っていたのに、あんなきつい皮肉を言うなんて」
言葉は、受け取る人で捉え方が全く異なります。
相手が皮肉で言っているのか、本心なのかは言った本人でないと分かりません。
相談を受けている側の心中はこんな感じ
皮肉じゃなくて本心ではないのか。
子どもがいなければ自分の人生を自由に生きることができる。経済的にも段違いに楽だし、仕事に邁進したり、趣味や旅行を楽しめる。それに比べて、子持ちとなれば、お金や自由時間がなくなるだけでなく、やれ学校でイジメにあっただの、成績が悪くて進学できないだの、名もない大学だから就職できないだの、派遣社員だと嫁がみつからないなどと、何歳になっても心労がつきない事例は人生相談を読んでいれば山ほど出てくる…
ここでは、皮肉で受け止めるのと本心で受け止めるのとでは、友人の信頼をなくしてしまうことにもなってしまうかもしれないのです。
良かれと思って発す言葉が受け取る側の捉え方で全く異なるので、恐ろしいとさえ思ってしまいました。
ゲイを名乗る男
ゲイのカップルが子供が欲しい場合、ペアで訪れることが多いそうです。
芽衣子医師の所にやってきた見るからに不健康そうなその男は、クリニックを訪れるゲイカップルとは明らかに違って見えます。
LGBTQ+の人々は、子供の頃から生きづらさを抱えていて、世間の目やいじめなどいくつもの困難を乗り越えて今日まで生きてきた。そういった経験から常に疑心暗鬼であったり、世間から差別されてきたことで自己評価が低く、気弱な面が覗いたり、人の痛みがわかる深い優しさのようなものが見えたりする。つまり、複雑な人間性が表情に滲み出ていることが多かった。だが、この武藤と名乗る男に限っては薄っぺらしか感じ取れない。
短時間で人を見抜く人とは、芽衣子先生の様な経験豊富で鋭い洞察力がある人。
芽衣子先生の言葉が心地良いのです。
気持ちに寄り添える医師
周囲にあれこれ言われ、精神的に疲れ果てている女性。
そんな彼女に
「今までつらい思いをされてきたんですね。本当にご苦労さまだったわね」
これなんです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、この一言を言ってもらえるだけで、悩んでいる人は救われるのかもしれません。
辛い時、聞いてもらいたい時に言わないと意味がありません。
そういう私は、助けを求めてきた家族や友人に対して寄り添うことができるのだろうか。
寄り添いたい。心の底から向き合っていこうと思っています。
みんな自分を分かって欲しい
人は自分が大切です。
自分の気持ちを知ってもらいたい、そう思うものだと思います。
どれだけ頭でわかっていても、つい自分の価値観で話してしまう私ですが、同じ目線になって考えることを忘れないように心がけています。
育てる余裕がある人が育てればいい
代理母と聞いて最初は読むかどうか一瞬ためらいました。
読んで思った事は、代理母そのものが「正解」「不正解」ではないということ。
大切なのは、依頼人や代理母、両方の心に寄り添ったケアが必要で、生まれてくる子供が健やかに育つことができる環境を周りが責任をもって考えていくことが大切なのだと思いました。
