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大したことをしてこない妖怪のこと

ベッドを捨て、布団を床に敷いて寝る生活になった。
 
寝心地も良くなり、また涼しくなってきたこともあって、よく眠れるようになるだろうと思っていた。しかし、相変わらず寝つきも早いとは言えないし、夜中に何度か起きてしまう。どうやら他にも眠れない原因があるらしい。
 
すぐに思いつくのはブルーライトだ。そういえば新聞で、寝不足になるからお母さんと相談して22時以降はスマホを見ないことにしたという高校生の投書が載っていた。真似して私もそうすることにした。
あとふと思いついて、いつも部屋の角に置いている衝立を枕元に移動させた。ちょうどベッドのヘッドボードのような感じで。
するとその日から、寝つきも良く、夜中に起きる回数がぐんと減って、まあまあ安眠できるようになった。
ブルーライトか衝立かというより、多分両方効果があったような気がする。
 
しかし衝立を枕元に立てると、必ず妖怪のことを思い出す。
正しくは衝立というか屏風なのだが、寝ているときに屏風の向こう側からこちらを覗いてくるというニッチな妖怪がいるのである。
大したことをしてくる訳ではないが、気持ち悪い。ちなみにその妖怪が出ないようにするのは簡単で、寝ている時に屏風を立てるのをやめればいいらしい。
この知識があるから、今だに枕元に衝立を立てることに、ほんのちょっと抵抗を感じた。
 
この妖怪の情報は、子供の時に確か「妖怪クイズ百科じてん」という本で知った。
この本には他にも、お風呂の垢を舐めるだけの妖怪とかが載っている。
本には、もちろんすごく恐ろしいことをしてくる妖怪もたくさん登場するのだが、あまり大したことをしてこない「一体なぜそんなことをするのか」という生態(?)をもった妖怪たちも載っており、彼らのことが心に残っている。そしてそんな者たちに限って、見た目がものすごく怖かったりするのも何だか不思議だった。
 
今夜も寝る前に、何がしたいのかも、存在意義もわからない妖怪のことを、一瞬思い出すだろう。でもできるだけ、こういうことをいつまでも覚えていたいと思う。




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