日本のユビキタスエンターテインメントという会社をご存じだろうか。スマートフォン向けのゲームや、HTML5とJavaScriptベースのゲームエンジン「enchant.js」などソフトウェア会社だが、この会社がオリジナルのハードウェア「enchantMoon」を開発し、CES 2013で初公開した。

ハイパーリンク付きの手書きメモができるガジェットといった製品だが、この機能はもちろん、なによりも興味深いのが、小規模な会社が自社の得意分野を生かし、今までは大企業でしかできなかったような製品を開発できてしまうところだ。むしろ大企業ではできない開発方法で製品を作っていると言ったほうが正しいのかもしれない。





enchantMoonは元々大量に販売することを想定していない。普通なら無駄な部分を排除してコストも含め、シンプルに仕上げるところを、ハンドルそれもかなり高品質なものを付けるなど、外装自体もかなりこだわった製品だ。

何よりもこだわっているのが、自社の強みを生かしたソフトウェア部分で、紙とペンによる手書きの感覚の良さを再現しているところだろう。

最近のタブレットやスマートフォンなど、ペンを使った手書きに対応できる製品は増えているが、CPUの速度や描画性能など、以前と比べものにならないほど高速になっているのに、書いた線が実際に画面に表示されるまでに若干のディレイを生じている。

いっぽうenchantMoonは、ほぼリアルタイム描画に近いフィーリングだ。enchantMoonのCPU自体は、最新のタブレットなどに比較するとシングルコアで性能的には数世代前のモノを採用しているようだが、手書きしたものが実際の画面に表示されるまでの感覚は実際のペンに限りなく近く、最近のどんな製品よりも書き心地が良い。

スマートフォンなどでは、入力(インプット)から表示(アウトプット)までの処理で、いくつかのレイヤーが重なっているため、それぞれの処理が重なった結果ディレイが発生してしまうが、そこを自社得意のソフトウェア開発技術で、レイヤーをほぼゼロにしてダイレクトにハードを叩くことで感覚の良さを実現しているという。

enchantMoonのような製品化を実現するには、既存のハードウェアを持ってくる形ではなく、ハードウェア自体を0から設計する必要がある。そして製品化してから販売するとなると、製造や品質管理、販売チャンネル開拓など超えなくてはならないハードルは高い。

マンパワーも他の大企業によるタブレット開発と販売などに比べると圧倒的に少ない人数で開発やマーケティングが行われている。販売についてもオンラインを活用するようで、こうした新しい時代のハードウェアの初公開を日本ではなく世界に向けてCESで公開した点ということは、自らにプレッシャーを与えるためと見ることもできるが、その裏に「製品対する自信」があるからこそできたことだろう。今後のさらなるブラッシュアップに期待すると共に、心よりenchantMoonを応援したい。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

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