同一強度にした際のアルミ(128.6g)、マグネシウム(87.3g)、マグネシウムリチウム合金(64.7g)。表面処理をしていない物


2012年夏シーズンに発表されたUltrabookの中でも、875gという重量で注目されているのがNECの[LaVie Z]だ。
LaVie Zは新素材を使用するなど、日本の小型軽量化技術をつぎ込んだUltrabookとなっている。NECは定期的に自社の技術などを紹介するイベントを開催しているが、このイベントにおいてLaVie Zの開発秘話などを公開した。今回はその中でも、新しく採用したマグネシウムリチウム合金ついてレポートしよう。

どんな分野でも同じだが、新しいことに挑戦する際、未知のトラブルや困難が発生することが多い。今回、LaVie Zに使用したマグネシウムリチウム合金も、PCの筐体に採用しようと開発が始まったのは3年前だが、量産までは様々な問題が発生したという。

マグネシウムリチウム合金について説明する商品開発本部の柳澤恒徳氏


■七人の侍によって量産化へ
マグネシウムリチウム合金を筐体にするため、素材、圧延、研磨、切断、プレス、表面処理、塗装で6社が関わっている。この6社を“侍”になぞらえ、最後にNECという“侍”を加えた「七人の侍」によって新素材を筐体材料にすることが実現できたという。量産化までは様々な課題が発生したそうだが、今回紹介された課題は素材自体の問題から、最終的に塗装してからわかる物など多岐に及んでいる。

開発体制




例えば、原因を見つけるのに2ヶ月かかった問題がある。それは一定の角度からしか観察できない不純物の影響で、成型時に材料が伸びずに亀裂が発生する問題。これは 材料メーカーとの連携で解決。

表面処理や塗装後に導電性が悪かったという問題、表面処理用の薬液や少なくとも数年間使用するため、温度や汗など様々な条件で問題なく使用できるようにしたいという目標。これは表面処理、塗装メーカーと連携し新開発することで解決。

最終的な形状にする際、プレス加工するが、新素材のためどう設計したらいいかの知見がないという問題。これはプレス会社などとの連携し、ネジ穴やスリット、たち壁などの設計用のデザインガイドを策定することで解決したという。



プレス時に表面が荒れる問題。こちらはプレス、材料、圧延メーカーとの連携で解決。

最終的に塗装した後に、合金に高さ4ミクロンの凹凸形状があることが原因で縞模様が見える問題。これは 材料、圧延、研磨メーカーとの連携で解決。

塗装後の縞模様をトリミングしてわかりやすく画像処理した物 オリジナルはこちら


■最終的には人と人とのつながりが大切
こうした各種の問題を解決したり、新しい素材の開発には、前述したようにNECを除き6社、40人以上が関わったという。様々な技術を持った多数の会社が関わることで、それこそ様々な難題に突き当たっても会社間で連携して解決したことでこのプロジェクトが成功した。

技術協力はもちろんだが、人と人とのつながりがこのプロジェクトを成功に導いた好例と言えるだろう。

LaVie Zで使われているこの新素材は、底面にしか使用しておらず、この素材を使用した事による軽量効果は16g程度だ。一見少なそうに見えるが、1グラム削減にネジの数など、細かな部分を調整する必要がある電子機器の軽量化では非常に大きな効果だ。

まだまだ課題も多く、現状は高コストでデザイン上の制約があるが、それらの課題も技術開発を進めて今後の製品に生かしていくという今後に期待できる製品がLaVie Zと言えるだろう。

LaVie Z

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
皆さんがデジタル機器の「通」に近づくための情報を、皆さんよりすこし通な執筆陣が提供します。

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