2012年は多くに天体イベントがある天体イヤーだ。星や天体への関心高くなり、空を見上げる人も増えたことだろう。

そんな中、都会の夜空を撮った「都会の星-写真:東山正宜 ナビゲート:石井ゆかり-」写真展が、銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBEにおいて開催中だ。

比較明合成よる星の航跡を写しこむロマンティックな作品が会場いっぱいに展示され、まるで夜空の星のイルミネーション回廊に迷いこんだファンタジーさだ。

今回の注目は、石井ゆかり氏が東山氏の作品を見て、インスピレーションから各作品に書き下ろしのことばを添えるというコラボレーションだ。
写真とメッセージにより「都会の星」の作品イメージがより鮮明にロマティックなものとなっている。
都会の星

もう一つの注目は、こうした星景写真は一眼レフなどのカメラでしかできないのだが、会場ではリコーのコンパクトデジタルカメラ「GR DIGITAL IV」で撮影された作品も展示されている。

「GR DIGITAL IV」の新機能をつかうことで、カメラだけで星の航跡を映し出せるという。
どのようにして「GR DIGITAL IV」で星の軌跡を描いているのだろうか。

今回の写真展については作者の東山正宜 氏とナビゲーターの石井ゆかり氏に、「GR DIGITAL IV」の技術的な内容についてはリコー 山本勝也 氏にお話を伺った。

■ブログが写真展のキッカケ - 東山正宜 氏
東山氏がRING CUBEでの写真展のオファーを受けたのは、今年の3月下旬という。
今回のように都会で星空を撮るスタイルは、いつから始めたのだろうか。

東山氏は、
「都会で撮っている作品が20~30作品あり、それをブログにアップしていました。それを見て声を掛けられたわけです。写真展をするには、作品数が足らないというのがあったので、3~5月ぐらいで、もう20~30作品を撮りました。」
写真展について語る、東山正宜 氏

撮影は夜しかないうえに、セットアップとインターバルで時間をとられるので、写真展開催までに作品数をそろえるのは、かなりきつかったという。

「確かにきついです。一コマ撮るのにどうしても、1~2時間掛かります。1時間の露出でも、現場に行ってから構図を決めるのに、どうしても20~30分掛かってしまうので、そうするとカメラ1台で一晩二コマ撮れればいいほうかなという感じです。」

それでも、写真展の開催日が近づいてくると、マイペースとはいかず、東山氏の技術を駆使して乗り切ったという。

「最後は、それでも間に合わなくなってきたので、カメラ3台を使いまして、1台セッティングしたら、2台目をセッティング、そして3台目といった具合で撮影しました。その日は夜半まで晴れていたので、一晩で六コマくらい撮りましたけど。」

星景写真は、天候、夜間それも月のでていない夜、といった制限がある。また撮影中に天候が崩れることも多く、美しい星景写真を撮影するのはなかなか大変な作業だ。

「初期の頃は、12時間露出で星が半周を越えるのをねらったので、1コマ13時間はかかりました。晴れなかったので、9晩ダメで、10晩目で晴れたということもありました。1ヶ月で一コマでした。」

星の軌跡は綺麗だが、星空を撮影するだけでも時間が掛かる。東山氏は、撮影後数千枚におよぶ星空写真をPhotoShopの比較明合成で1枚にまとめて作品に仕上げている。
写真展の様子

ところで、今回の写真展では、すべての作品に石井ゆかり氏の書き下ろしのメッセージがペアとなっている点が大きな特徴だ。

石井氏は、
「私自身、写真とか、絵を見るときには、言葉はあまり書いて欲しくないタイプなので、邪魔しちゃうんじゃないかと思っていたんですけど。一方で、写真集を作っている編集者に聞いてみると、『写真集が、売れないかというと、写真はこちらからとりにいかないといけないんです。写真を見るには見る側にも力がいるんです。』と言われたんです、だったら、写真に言葉があるほうがいいのかなと思って。頑張ったけど、うまく行ったかどうか、という感じですね。」

これまでも写真と言葉をコラボする作品が多くあったが、たいていはホワイトボードのテキストというスタイルだが、今回はデザインされたボードにレイアウトされたことで作品との一体感を実現している。写真展とセットで見られるのは、今回がはじめてのことだ。そういう意味で、今回の写真展は見応えがある。
その写真にインスピレーションを得た、石井氏の文章が添えられている


■コンパクトでベストなカメラ!それが「GR DIGITAL IV」 - リコー 山本勝也 氏
星の軌跡を写真に撮るのは、難しい。フィルムカメラであれば、シャッターを数時間開放したまま撮影すればよい。

デジタルカメラの場合には、デジタル一眼でなければ難しそうだ。それが、今回の写真展では、GR DIGITAL IVで撮影した作品もある。
リコーのコンパクトデジタルカメラ「GR DIGITAL IV」

東山氏は
「僕も思ってました。何を言っても撮れないと。星が途切れることがあり、いかに途切れさせないかが命題でした。そのためにどんどん高画素のカメラを使うようにしていたんですけど。GR DIGITAL IVのインターバル合成で撮影した写真を見たときに、星の軌跡が途切れないで、不思議で不思議でしょうがなかったんですけど。カメラ内でRAWの段階で合成して、あとからJPGに出力しているので、途切れないという話しを聞き、うまいことやっているなと思いました。」。
「GR DIGITAL IV」で撮影した、東京の星空

前述したように、GR DIGITAL IV以外の作品は、インターバル撮影した画像をPhotoShopで数千枚の画像を合成して、星の軌跡を作っているが、「GR DIGITAL IV」では、インターバル撮影する合間に、内部で比較明合成を行い、リアルタイムで星の軌跡を描き出してくれるので、後から合成処理をする必要がないのだ。
「GR DIGITAL IV」のインターバル合成機能について語る、リコー 山本勝也 氏

山本氏は、
「無理に画素数を追わないところにもコダワリがあります。小さな撮像素子で画素数を求め過ぎてしまうと、どうしても無理が生じてしまったり、レンズの解像力よりも画素ピッチの小ささが勝ってしまう場合もあります。ですから、不用意に画素数を増やしても、無駄になってしまうんですね。そこのバランスを考えて、GRのコダワリとしては、あのサイズでベストなバランスにしました。」

「GR DIGITAL IV」インターバル合成による撮影結果から作成した動画
GR DIGITAL IVでは、撮影行う毎に比較明合成を行った途中経過を全て残すこともできる。そのようにして残した静止画像を元に後から作成した動画だ。

静止画のメーカーサンプル

コンパクトデジタルカメラで撮ったとは思えない、星の軌跡だ



最後に、東山氏に今後の展開についてうかがってみた。

「東京タワーの写真は、何だかんだ5年くらい前に撮影したので、今から見ると恥ずかしい写真もあります。スカイツリーも建ちましたし、東京駅も新しくなりますし、僕自身の技術力もあがったと思うので、もう1回、ひととおり東京の主要な場所を撮りたいと思っています。」
今後の展開について語る、東山正宜 氏


都会でも、空気が綺麗になってきており、3.11で節電の機運が高まっていて以来、夜空の星が見やすくなっている。

「都会の星」を知るには、良い写真展といえるのではないだろうか。

・特別寄稿:インターバル合成モード 【入門編】 / 【応用編】

●写真家のプロフィール
東山正宜(ひがしやま まさのぶ)氏
1975年香川県丸亀市生まれ。名古屋大学理学部卒、素粒子宇宙物理学専攻修了、博士課程中退。朝日新聞社入社後、東京本社への異動に伴い、比較明合成注 2による星景写真を始める。2009年に若田光一飛行士、2010年に野口聡一飛行士の帰還を取材。小惑星探査機「はやぶさ」帰還の写真で新聞協会賞特別 賞。
http://www.itaime.com/

石井ゆかり (いしい ゆかり) 氏
独学で星占いを習得し、2000年よりWEBサイト「筋トレ」を起ち上げて星占いを掲載し、独特の文体で人気を集める。現在は雑誌やWeb媒体占いを執筆 するほか、占い以外の分野でも著作を発表。2010年WAVE出版より刊行された『12星座シリーズ』は100万部を突破した。他に「星をさがす」 (WAVE出版)、「禅語」(piebooks)、「愛する人に。」(幻冬舎コミックス)等。
http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/

写真展概要
名  称:doughnuts企画 写真展「都会の星 -写真:東山正宜 ナビゲート:石井ゆかり-」
期  間:2012年7月4日(水) ~ 2012年7月29日(日)  ※休館日を除く
場  所:リコーフォトギャラリーRING CUBE ギャラリーゾーン
所 在 地:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8F/9F(受付9F)
電  話:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)※入館は閉館時間30分前まで
休 館 日:火曜日 
入 場 料:無料
U R L:http://ringcube.jp

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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