東南アジアやインドなどの新興市場向けに低価格携帯電話を投入するG'Five。同社は、まだ日本では無名に近いが、2010年の年間携帯電話生産台数は2,000万台を超えており、これは日本国内シェアトップメーカー シャープの倍以上の数だ。世界シェアも10位前後と着々と販売台数を伸ばしている。

G'Fiveは、これまで主に低機能なベーシック端末に特化しており、通信方式も2G対応のものしかなかったことから日本市場とは無縁のメーカーでもあった。だが今年後半からスマートフォン市場に参入を開始し、先進国へもその販路を拡大しようとしている。

G'Fiveの携帯電話は全て中国で生産されている。最近は中国製の安価なスマートフォンが市場に少しずつでてきているが、同社もそれと同じプラットフォームを採用。しかもW-CDMA/HSDPAに対応し、スペックだけを見れば大手メーカーのミッドレンジクラスの製品と変わらぬ機能を搭載している。

同社がターゲットとする新興国は、まだまだ2Gのフィーチャーフォン利用が主流だが、所得の高い層の間では海外製のハイエンドスマートフォンの人気も高まっている。また経済発展と共にフィーチャーフォンからミッドレンジクラスのスマートフォンへと買い替えるユーザーも増えているようだ。

すでにSamsungやHTC、LGなどがエントリー向けのスマートフォンを販売しているほか、HuaweiやZTEなどの中国勢も低価格なスマートフォンを振興市場に向けて積極的に投入している。
インドや東南アジアでは大手メーカーとして有名なG'Five

G'Fiveもこの流行に遅れまいと、今年下半期から同社初の3Gスマートフォンの販売を開始した。価格は100ドル前後で、日本円すれば1万円を切る低価格だ。また3Gタブレットの開発も行っており、こちらは1万円台後半で年明けにも販売される予定だという。

どちらも香港で開催された通信関連イベント「Mobile Asia Congress 2011」の同社ブースで展示されていたが、質感は大手メーカーの製品には若干劣るものの、価格を考えれば十分なレベルと感じられた。

さらに、この1万円前後の価格は単体のものであることに注意しなくてはならない。2年契約を結ぶ必要も無く、月々数百円程度のプリペイド契約でもこの金額でスマートフォンを購入できるというわけである。
クラウドサービスも利用できるG'Fiveの3Gスマートフォン

G'Fiveは。この「超低価格3Gスマートフォン」や「超低価格タブレット」をインドや東南アジア市場に投入する構えだ。中間所得者層をメインターゲットにするだけではなく、これまで大手メーカー製フィーチャーフォンを利用していたユーザーのスマートフォン買い替え需要を根こそぎ取り込もうという戦略である。

FacebookやTwitterなどのソーシャルサービスの利用者にとって、様々なアプリケーションを利用できるスマートフォンは魅力的な存在だ。大手メーカーのスマートフォンは高額で手が届かなくとも、同社の超低価格なスマートフォンならば「ちょっと無理して」買えると考える消費者も多いだろう。

一方で、G'FiveはiPhoneのようなハイエンドスマートフォン市場で勝負することは最初から放棄している。高価格・高利益ではなく、低コスト・薄利多売が同社の製品開発・販売方針だからだ。

G'Fiveの製品は現時点では新興国のみで販売されている。だが、今後同社が3Gスマートフォンのラインナップを拡充していけば、アジアの先進国、たとえば香港やシンガポール等でも製品を販売する動きは出てくるだろう。

平均所得の高い先進国であっても、学生や低所得者層が購入しやすい超低価格スマートフォンは大きな需要がある市場だ。価格の安いスマートフォンなら、通信事業者も1年契約程度で無料販売することもできる。
スマートフォンに加え低価格なタブレットも販売される予定

G'Fiveは、安価なスマートフォンを販売するだけではなく、最大200GBもの容量を利用できるクラウドサービスもあわせて提供する予定だ。今後同社から販売されるスマートフォンは同社のクラウドサービスが無料で利用可能となり、端末からワンタッチで写真や動画のアップロード、電話帳データのバックアップなどが可能になるとのこと。

もちろんPCやタブレットなど、他のデバイスからのアクセスも可能だ。クラウドサービスは先進国の消費者にとって利用価値が非常に高い。このサービスを利用するためにあえてG'Fiveのスマートフォンを選ぶ消費者も増える可能性も高いだろう。

さて、問題は日本市場にG'Fiveの製品が登場するような時代は来るか?だ。

現時点でのG'Fiveの製品は、日本の消費者にとっては、まだまだ合格点には達していないレベルだ。だが、Android市場の急速な製品リリースにともなう各社の製品開発をみると、いずれは大手メーカーのエントリー、あるいはミッドレンジと十分に肩を並べられる製品を市場に投入してくる可能性は高いといえるだろう。

そうなれば、「超低価格 3Gスマートフォン」として、先進国各国のスーパーマーケットやキヨスクなどの一般売店でブリスターパック入りで売られるといったシーンも見られるようになるかもしれない。

すでに日本では、イオングループが日本通信のSIMカードを低価格で販売を開始している。現時点では端末は自分で用意しなくてはならないが、G'Fiveの製品を大量に仕入れ、イオンのプライベートブランドで3,000円、あるいは980円といった価格破壊的なスマートフォンを販売することも将来的には不可能ではないのだ。


フィルムカメラ時代には使い捨てカメラとも呼ばれた「レンズ付きフィルム」が大流行し、観光地などではカメラを忘れても売店で手軽にカメラを買うことができた時代があった。

スマートフォンも「スーパーで買物ついでに購入する」「旅行先に持っていくのを忘れてしまったので現地で買う」といったスタイルも可能になるかもしれない。

従来からのスマートフォンの販売形態までをも変えてしまう可能性を低価格スマートフォンは秘めているのである。

山根康宏
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