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利用規約中の仲裁合意の効力 東京地判令7.5.19(令6ワ9527)

Google広告プログラム規約中の仲裁合意条項の適否が問題となった事例

事案の概要

ゲームアプリの開発者である原告()は、ゲームアプリ(本件アプリ)を開発し、その広告を配信するために、Google(被告、)との間で、広告サービスの利用契約(本件広告契約)を締結した。

Yは、広告サービスにおいて「Google Ads日本向け広告プログラム規約」(本件利用規約)を定め、その中には、紛争解決条項(本件仲裁合意条項)があった。

本件利用規約に関連して紛争が生じた場合、両当事者は、相手方からの紛争に関する書面による通知から60日以内に、その紛争を解決するための誠実な努力を行う。両当事者が当該期限までに紛争を解決できない又は解決しようとしない場合、その紛争は、国際紛争解決センター(以下「ICDR」という。)の国際仲裁規則に基づき、ICDRが行う仲裁によって最終的に解決される。

なお、本件仲裁合意条項が効力を有さない場合には、カリフォルニア州サンタクララ郡の連邦又は州裁判所を専属的合意管轄裁判所とするという条項(本件管轄合意条項)もあった。

Xは、Yがアプリダウンロード数の水増し行為等が行われたとして、不法行為に基づく損害賠償を請求していたが、Yは、本案前の主張として、本件仲裁合意条項により不適法な訴えであると主張していた。

ここで取り上げる争点

本件訴えの適法性

裁判所の判断

裁判所は、Yの広告サービスを利用するユーザの登録プロセスについて、次のように認定した。

①Google広告アカウントを作成するユーザーは、「お支払い情報の確認」ページにおいて、「続行すると、Google広告の利用規約に同意したことになります。法的拘束力のある仲裁によって異議申し立てを解決することも記載されています。」と表示され、Google広告の利用規約のリンクも記載されたページを閲覧し、これを確認した上でGoogle広告アカウントを作成することになっており、Google広告の利用規約に同意することを記載したページを経由せずにGoogle広告アカウントを作成することはできないこと、②(略)XがGoogle広告の利用規約を閲覧し、令和3年10月2日に利用規約に同意したことが確認できることが認められる。

続いてその効力について、次のように述べた。

仮にXが本件利用規約の内容を十分に確認していなかったとしても、(略)本件広告契約は、民法548条の2第1項の定型取引であり、本件利用契約は定型約款であると認められ、YはXに対し、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を表示しているから、Xは、定型約款である本件利用契約の個別の条項についても合意したものとみなされるというべきである。

(略。Xは、本件仲裁合意条項は、548条の2第2項により合意しなかったものとされるべきであるという主張に対し)本件仲裁合意は一切の紛争解決手段を妨げるものではないし、アメリカ合衆国に本店を有する外国法人であるYとの間の紛争解決手段を国際紛争解決センター(ICDR)に委ねることが、信義則に反してXの利益を一方的に害すると認められるとはいえないから、Xの主張は採用することができない。

さらには、Xは、自らが消費者であって、通則法11条1項を適用し、本件仲裁合意条項は、消費者であるXの利益を一方的に害するから、消費者契約法10条によって無効となると主張していたが、Xはゲーム開発者であり、事業のために行った契約であるから通則法11条1項の「消費者」には該当しないとして退けた。

以上より、本件訴えは不適法であるとして却下した。

若干のコメント

Googleに限らず、海外の大手ITサービスが用意する利用規約では、海外での仲裁合意を定めていることが少なくありません。本件では、Xは、そのような仲裁合意が、民法の定型約款に関する規定(548条の2第2項)により合意しなかったものとされるはずであるとか、消費者契約10条によって無効であると主張しましたが、いずれも退けられました*1

本件のXは、確かに消費者契約法上の「消費者」ではないため、消費者保護に関する強行法規の適用は難しかったものの、定型約款の規定により、仲裁合意を排除する余地があったのではないかと思われましたが、裁判所は、「アメリカ合衆国に本店を有する外国法人であるYとの間の紛争解決手段を国際紛争解決センター(ICDR)に委ねることが、信義則に反してXの利益を一方的に害すると認められるとはいえない」*2と述べたことについては少しあっさりしすぎているかなという印象を受けました。実際に、個人事業主や中小企業が、海外の仲裁機関での判断を求めるということは至難の業で、これだとほとんどのケースであきらめざるを得ないと思われます。

*1:仲裁法附則3条では、消費者と事業者との間での仲裁合意については「当分の間」、仲裁合意を解除することができるとしている。

*2:ICDRについては https://icdr.org/about_icdr 




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