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4段階での分割納品/検収となっていた契約の解釈 東京地判令5.11.24(令4ワ11259)

1つの契約中で、4つの段階ごとに報酬が支払うこととなっていた契約について、請負/準委任の違いによって解釈が変わるものではないとされた事例。

事案の概要

(ユーザ)と(ベンダ)は、介護支援サービスシステムの開発を目的として、業務委託基本契約を締結した。その後、当該基本契約に基づいて、要件定義を目的とする個別契約が締結され、代金297万円が支払われた。

開発フェーズとして「機能開発(1回目)、機能開発(2回目)、動作確認テスト、ユーザテスト指摘対応及びリリース作業」の4回に分けて検収が行われることを内容とする個別契約が締結された(一連の契約を「本件契約」)。Xは、機能開発(1回目)の代金等として、約800万円を支払ったが、ユーザテストフェーズまでには至ったものの、システムはリリースされなかった。

Xは、Yに対し、Yがシステムを完成させる債務を怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償として、約1200万円を請求したのに対し(本訴)、Yは、Xに対し、本件契約の仕事完成分の報酬として約800万円を請求した(反訴)。

ここで取り上げる争点

  • 本件契約の性質

Xは、本件契約は請負契約であって、システムの完成に至らなかったため、Yには債務不履行があり、報酬支払義務も生じないと主張していたのに対し、Yは、開発フェーズの契約も、契約締結時に完成させるべき仕事が特定されていないアジャイル方式であるから、準委任契約だと主張していた。

裁判所の判断

裁判所は、特に請負か準委任かということを判断するのではなく、各段階ごとの債務を履行した場合に報酬が発生する契約であるとした。

本件契約は、基本契約を締結した上で、個別契約を別途締結するというもので、個別契約として、平成29年10月1日にサービス対応範囲の決定等の契約がされ、要件定義が作成された後、同年12月17日に機能開発等の契約がされている。そして、後者の契約においては、機能開発(1回目)から作業として4つの段階が記載され、段階ごとに金額や納品日が定められているのであって、実際に、原告も機能開発(1回目)に対応する代金を支払っている。これらの経過からすると、段階ごとに報酬が発生するということ自体はXにおいても認識していたものと解される。

そして、本件契約の基本契約には、Yが個別契約に基づいて成果物を作成することが定められており、平成29年12月17日付個別契約においても、各段階における納品物がそれぞれ定められている(乙24)ものの、そのような文言等からただちに、本件契約が全体を通して一つの請負契約であり、最終的な仕事の完成をもって報酬が発生するものと解することはできず、上記の経過を踏まえれば、開発したシステムのリリースに向けて、各段階ごとに、その段階におけるYの債務を履行した場合には報酬が発生する契約であると解され、そのことは、本件契約を請負契約と解するか準委任契約と解するかによって変わるものではない。

その上で、Yが開発したシステムには、認識にギャップがあり、Xが改善要望を出していたことは認めつつも、それが、先行する要件定義の機能を欠くものだという裏付けはなく、要件定義の内容を超えた要望であるから、Yに債務不履行責任は認められないとした。

そして、ユーザテストの前段階の機能開発1回目、2回目、動作確認テストまでは完成したことを前提とするやり取りが行われていたものとして、そこまでの報酬請求(反訴)を認容し、原告の請求はすべて棄却された。

若干のコメント

本件も、契約の性質が請負か準委任かが争われた事例です*1。裁判所は、特にどちらかを決めることなく、素直に契約書に4つの段階(フェーズ)それぞれについて期限、成果物と報酬額を決めてあったことから、各段階のベンダの債務を履行した場合に報酬が発生すると解釈し、「請負契約と解するか準委任契約と解するかによって変わるものではない」と述べました。

請負契約か準委任契約かは、あくまで民法が定める典型契約の1種であり、その複合的な性質をもつ契約であったり、その典型契約には含まれない契約類型もたくさん存在します*2。よって、契約締結段階でも、トラブル段階でも、敢えてどちらかの契約類型かを決めなくてはならないということはなく、要は、何を目的とする契約なのか(言い換えれば、どこまでの作業や成果が出たところで履行が完了するのか)を明確にすることが重要です

本件における開発フェーズの契約は、4つの段階のうち、最後が終了していなかったことは争いがありませんでした。仮に請負契約だったとしても、各段階で報酬を定めていたので、割合的報酬を受けられたと考えられますし(民法634条)、準委任契約だったとしても、同様です(民法648条3項)。

なお、本件と同様に、3段階に分けて各段階が終了すると報酬を支払う形式の契約について、最後の段階が終了していないとしても全部解除ができるものではなく、未履行分の解除しかできないと述べた事案として、東京地判平25.7.19があります。また、近接する日に出された東京地判平25.7.18でも分割検収について判断が示されています。

 

*1:請負か準委任かが争われた事例については、この事案の「若干のコメント」にて紹介しています。

*2:ビジネスでよく登場する秘密保持契約やライセンス契約などは典型契約には含まれない類型です。




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