サービスの運営を妨害する投稿があったとしてアカウントを取消された行為の適法性が問題となった事例
事案の概要
同人誌の制作・販売を行うX(個人)は、平成20年にYが運営する同人誌等のダウンロード販売のためのサイト(aサイト)にユーザー登録し、X制作の同人誌等を販売していた。
なお、Yは、平成31年に、aサイトを含む複数のサイトを統合し、本件サイトの運営を開始し、Xは、統合後の本件サイトにおいても同人誌等を販売していた。
本件サイトの利用規約には、次のような条項があった。
第20条 禁止行為
aサイトを利用する際、ユーザーは以下に定める行為(それらを誘発する行為や準備行為も含む)を行ってはならないものとします(以下「本件禁止条項」という。)。
(1から5まで省略)
6.aサイトの運営を妨害する行為またはaサイトの信用を失墜、毀損させる行為
(7から9まで省略)
第21条 ユーザー資格の取消
ユーザーが、次の各号の一つにでも該当する場合は、aサイトは当該ユーザーのユーザー資格をユーザーに何ら事前に通知及び催告することなく、一時停止または取り消すことができます。この場合aサイトは既に支払った利用料金の払い戻しなどは、一切行いません。また、当該の措置によりユーザーに損害が生じても、aサイトは一切損害を賠償しません(以下「本件資格取消条項」という。)。
(1から3まで省略)
4.aサイトの運営を妨害した場合
(5から8まで省略)
9.本規約のいずれかに違反した場合
10.その他aサイトがユーザーとして不適当と判断した場合
Xは、令和3年12月ころ、自己の作品を本件サイトに登録する際に、モザイク処理を行うこと等について、Yの従業員の対応に不満を抱き、本件サイトの掲示板に「こいつには金輪際、絶対に作業をさせないでください!」と投稿したり、Xのツイッターアカウントに「悪質行為を働いた二名をさっさとクビにしろ!」などと投稿した。
これを受けて、Yは、Xの行為は本件禁止条項に該当するとして、本件資格取消条項に基づいて、Xのユーザー資格を取り消した(本件処分)。
Xは、本件処分が違法であるなどとして、逸失利益、慰謝料等、合計で約150万円の損害賠償を請求した。
ここで取り上げる争点
(1)本件サイトの利用規約がXに適用されるか
(2)本件処分の適法性
裁判所の判断
(1)利用規約の適用について
Xは本件サイトの規約に同意した事実はないなどと主張していた。また、民法548条の2の定型約款には当たらず、仮に該当するとしても、同条2項によって合意されなかったものとみなされると主張していた。
裁判所は次のように述べて、資格取消条項を含めた本件規約の内容による利用契約が成立していたことを認めた(基本的なことが書かれていて、少々長くなるが引用する。一文が長いため、途中で改行等も入れている。)。
平成21年当時、前身サイトのユーザー登録画面上、20年規約及び個人情報の取扱い方針へのリンク及びこれらに同意するか否かについて選択ボタンが設置されており、これが選択されない状態ではユーザー登録等の登録ができなかったこと、
Xは、平成21年10月26日、生年月日や支払方法等のほか、電子メールアドレス、パスワード等を設定した上で前身サイトにユーザー登録し、その後、継続的に前身サイトにログインし、その利用を継続したこと、
アカウント統合に際し、前身サイトのサークル登録及びユーザー登録をしていたXは、ユーザー登録を統合する手続をする必要があり、「ユーザー規約、個人情報の取扱いについてをご確認いただき、同意の上で登録してください。」と記載され、ユーザー規約へのリンクが設置された登録画面から「登録する」とのボタンを押して、ユーザー登録手続を行ったこと、
Yは、平成31年以降、30年規約の一部を変更して新たな規約を作成し、最終的に本件規約が作成されたことがそれぞれ認められる。
また、20年規約以降の前身サイト及び本件サイトの規約第1条には、前身サイト及び本件サイトの運営者側が提供する手段を通じ、随時ユーザーに対して発表される諸規定は、規約の一部を校正し、ユーザーはこれを承諾すること、及び上記運営者側は、ユーザーの了承を得ることなく規約を変更することがあり、ユーザーはこれを承諾すること、
規約変更は上記運営者側が提供する手段を通じて随時ユーザーに発表するとの定めがあること、
規約の変更はY及びユーザーの利害に影響を及ぼす重要なことであり、かつ、Yにとって、都度、ユーザーに発表することが困難な状況はなかったと考えられること
からすれば、Yは、30年規約以降、規約改定の都度、本件サイト等においてXがこれを確認可能な状態にし、Xはこうした状況を認識した上で、本件処分まで継続的に本件サイトを利用していたと認められる。
上記によれば、Xは、本件サイトの継続的利用の過程において、Yに対し、少なくとも黙示的に本件規約を承諾する意思を表示していたものであり、XとYとの間で、本件ユーザー資格取消条項を含めた本件規約の内容による利用契約が成立していたと認めるのが相当である。
裁判所は、本件規約の定型約款該当性を明示的に認定していないが*1、サイトの統合や、利用規約の変更などがありつつも、それらを踏まえた上で、本件処分当時の規約が、XY間の契約内容になると認定した。
(2)本件処分の適法性について
裁判所は、冒頭で示したようなXの投稿内容を踏まえて、本件処分は適法であるとし、請求をすべて棄却した。
このようなXの投稿行為は、本件サイトのユーザーや関係者が閲覧する可能性があるウェブサイトに、Yやその従業員との私信の内容を一方的に公表し、かつ、これらに対する穏当を欠く表現を含む非難を公然とするものであって、これが違法であるかは格別、少なくともYの信用を失墜させ、また、Y従業員らの人格権を侵害する可能性が高い不適切な行為であって、Yないし本件サイトの円滑な運営に支障を生じさせるものといえる。また、上記投稿の内容に照らし、Xが、このような投稿をする必要性、正当性があるとはおよそ認め難い。
これに照らせば、Xの上記行為は、本件サイトの運営を妨害ないしその信用を毀損する行為として、本件禁止条項6号、本件資格取消条項4号に該当し、本件資格取消条項9号に該当するものといえる。また、Yが、上記Xの行為についてユーザーとして不適当と判断するのが合理的であるから、本件資格取消条項10号にも該当するといえる。
そうすると、Yは、本件資格取消条項に基づき、Xのユーザー資格を取り消すことができるから、本件処分は適法というべきである。
若干のコメント
各種ウェブサービスにおいて「サービスの運営を妨害する行為」「信用を失墜、毀損させる行為」を禁止事項として定め、これらの禁止事項に違反した場合にはユーザーの資格を取消す(いわゆるアカバンする)ことを定めるという規約を設定していることが多いと思われます。本件は、そのような内容の規約が定められていたサイトにおいて、ユーザーが不穏当な投稿・言動をしたことについて資格を取消したことについての適法性が問題となりました。
こうした利用規約は、現実には読まれていないことが多く、契約の内容として拘束力を有するのかが問題視されることがあります。ただし、この点は、古くから議論され、「電子商取引及び情報財取引等における準則」(経済産業省)においても論点として挙げられており*2、ユーザー登録時等に規約が表示され、それに同意することで登録できるというフローになっていれば、原則として契約の内容に組み入れられることになります*3。
また、その規約の内容が、不意打ち条項に当たる場合には、合意しなかったものとされますが(民法548条の2第2項)、本件における裁判所は、禁止事項、資格取消条項については不意打ち条項等の該当性について判断を示していませんが、あたらないことを前提としています*4。
他方で、B2Cサービスにおいては、サービス運営者が一方的に禁止事項の該当性を判断するような内容は、消費者法8条に定める不当条項に該当し、無効となるおそれもあるので注意が必要です(モバゲー規約に関する東京高判令2.11.5参照)。
*1:定型約款に関する規定を含む改正民法が施行されたのは2020年だが、改正附則33条では、施行日前に行われた定型取引についても、民法548条の2から4の規定(定型約款)が適用されるとしている。
*2:最新の令和7年公表版 https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250212003/20250212003-1r.pdf では、I-2-1-1
*3:名著、雨宮=片岡=橋詰『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方【改訂第3版】』122頁以下も参照。
*4:前掲注(利用規約の作り方)186頁以下では、「禁止事項」は「最も登板機会の多いエース」だとされており、ユーザー対応の工数削減のために有用だと力説されています。