日本映画
耳をすませば
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
カントリー・ロードが流れない実写版で描くのはあの時描けなかった10年後の "答え合わせ"
日本映画『耳をすませば』とは
不朽の名作『耳をすませば』が実写映画化。
10年後の物語がいま、はじまる。
1989年に少女まんが雑誌「りぼん」で連載された不朽の名作『耳をすませば』。
1995年にはアニメーション映画が公開され、今なお色褪せない青春映画の金字塔として、歴史に刻まれている。
そして2022年、まんが・アニメーション映画でも描かれた中学生の甘酸っぱい青春時代はもちろん、完全オリジナルの10年後の物語も加わって、実写映画化。
大人になった月島雫を清野菜名さんが、天沢聖司を松坂桃李氏がW主演で演じる。
監督・脚本はヒットメーカーの平川雄一朗氏。
ふたたび新たな『耳をすませば』が誕生する。
あらすじ
読書が大好きで元気いっぱいな中学生の女の子・月島雫。
彼女は図書貸出カードでよく見かける、ある名前が頭から離れなかった。
天沢聖司―――全部私よりも先に読んでる―――どんなひとなんだろう。
あるきっかけで "最悪の出会い" を果たした二人だが、聖司に大きな夢があることを知り、
次第に惹かれていく雫。
聖司に背中を押され、雫も自分の夢を胸に抱くようになったが、ある日聖司から夢を叶えるためイタリアに渡ると打ち明けられ、離れ離れになってもそれぞれの夢を追いかけ、また必ず会おうと誓い合う。
それから10年の時が流れた、1998年。
雫は、児童書の編集者として出版社で働きながら夢を追い続けていたが、思うようにいかずもがいていた。
もう駄目なのかも知れない―――そんな気持ちが大きくなる度に、遠く離れたイタリアで奮闘する聖司を想い、自分を奮い立たせていた。
一方の聖司も順風満帆ではなかった。
戸惑い、もどかしい日々を送っていたが、聖司にとっての支えも同じく雫であった。
ある日、雫は仕事で大きなミスをしてしまい、仕事か夢のどちらを取るか選択を迫られる。
答えを見つけに向かった先は―――。
登場人物
月島雫
演 - 清野菜名(中学生時代 - 安原琉那)
児童書の編集者として出版社で働く傍ら作家になる夢を追い続けているが、思うようにいかず悩む日々を送る。
天沢聖司
演 - 松坂桃李(中学生時代 - 中川翼)
チェリストになる夢を叶えるため、10年前にイタリアに渡る。
理想の演奏を追い求めるあまり、音楽を楽しむ気持ちを忘れてしまう。
杉村竜也
演 - 山田裕貴(中学生時代 - 荒木飛羽)
雫の同級生で男友達。
原田夕子
演 - 内田理央(中学生時代 - 住友沙来)
雫の親友。
堀内部長
演 - 音尾琢真
雫が勤務する出版社の部長。
雫の上司。
津田みどり
演 - 松本まりか
雫が勤務する出版社の同僚。
雫の先輩。
高木洋輔
演 - 中田圭祐
雫が勤務する出版社の同僚。
雫の後輩。
月島靖也
演 - 小林隆
雫の父。
月島朝子
演 - 森口瑤子
雫の母。
園村真琴
演 - 田中圭
雫が担当する児童書作家。
西司朗
演 - 近藤正臣
地球屋の主人で、聖司の祖父。
実写化の壁とジブリの聖域
漫画原作の実写化というのはすこぶる難しい。
過去、数多の作品がチャレンジしてその都度酷評を受けている。
ましてや本作は、アニメ版を経由しての実写化。
つまり原作ファンのみならず、アニメファンをも納得させなくてはいけないわけだ。
しかもそのアニメ化を担当したのは、あのスタジオジブリ。
ジブリといえば宮崎駿氏。
本作では直接メガホンこそ取らなかったものの、制作プロデューサー及び脚本として参加している。
宮崎駿氏の大看板は、ただでさえ難しい実写化をますます難しくした。
事実、実写化へのハードルは高かったようだ。
ご多分に洩れず本作も、映画レビューサイトでは酷評が溢れている。
だが、不思議なのことに同じ数だけ賞賛も受けている。
漫画原作実写化作品の評価というのは、大抵の場合が否定派大多数。
そして、ほんの少しの肯定派が擁護するというのが定石であり、このように賛否に極振りされることは非常に稀なケースだ。
なぜ本作の評価は、真っ二つに割れてしまっているのだろう?
その理由はアニメ版の存在抜きでは考えられない。
本作は、アニメ版から10年後というオリジナル設定である。
ただし、細部の設定も微妙に変更されている。
たとえば聖司のキーアイテムがヴァイオリンからチェロになっていたり、夢が職人から演奏者になっていたりと、基本設定にも変更が加えられている。
いくら10年後といっても、だからアニメ版からは繋がらない部分が少なくない。
オリジナル設定や基本設定の変更は、アニメ版のイメージが強い人にとって、違和感でしかない。
この10年後というオリジナル設定と基本設定の変更が、ファンにとって救いだったのか、それとも蛇足だったのか。
この受け取り方が、賛否が分かれた理由のひとつではある。
否定派の理由の核心は、まさにここにこそあるのだろう。
気持ちはわかる。
だが、賞賛の理由は設定云々の話ではない気がする。
アニメーション映画『耳をすませば』が大好きな著者にとって、本作は避けるべき作品と信じて疑わなかった。
理由は、心が疲れた時のビタミン剤のような癒しのイメージを壊されたくないと思っていたからだ。
地上波放送も当然スルー。
これから先も観ることはないだろう、とずっと思っていた。
しかしその夜は、心が疲れていたのだろうか。
ふと、『耳をすませば』が無性に観たくなった。
とはいえ、アニメ版はテープが擦り切れるほど何度も観ている。
ならば、ということで経験値として実写版を観るに至る。
酷評を知っていたから、期待もしていない。
「最近の子役は演技が本当に上手いなあ」
「夕子の再現度、高っ」
だから、最初はこんな程度の感想しか持たなかった。
しかし観進めれば観進めるほど、アニメ版の印象的なシーンがどんどん実写再現されていく。
それもなかなかの完成度で。
しかも再現されていくシーンのチョイスは、どれもこれもアニメ版のファンの心をくすぐるものばかり。
特にラストシーンからエンディングにかけての実写化は秀逸のひと言。
シチュエーションからセリフに至るまでアニメ版の流れを完璧にトレースし、一番欲しかったシーンを極めて効果的な場面で描き出す。
極めつきは、あの時の "答え合わせ" である。
これは10年後という本作オリジナル設定でなければ描けなかったシーンである。
あの時の "答え" が、今さら本当に必要だったのかはわからない。
"答え" なんていらない、その気持ちもわかる。
ただ、少なくとも半分には受け入れられた。
この二面性こそが、酷評半分賞賛半分になった要因なのだろう。
当初は否定的だった個人的にも、観終わった余韻は悪くはなかった。
あのラストシーンからエンディングまでの流れをみたら、基本設定の変更なんて些末なことである。
本作は世間で言われているほど悪くはない。
むしろ、概ね可の作品である。
ただひとつ。
『耳をすませば』のアイコンたる名曲「カントリーロード」の変更を除けば、の話だが…。
「翼をください」も嫌いじゃない。
嫌いじゃないが、『耳をすませば』には「カントリーロード」がマスト。
これだけは譲れない。
唯一この点だけ勿体なくて、本当に残念。
ただし、制作陣ばかりを一概には責められない事情もあるようだ。
オリジナル設定や基本設定の変更の裏には、どうやら大人の事情とやらが深く関わっている。
たとえば、天沢聖司がヴァイオリン職人を目指すというのはスタジオジブリのオリジナル設定のため、実写映画で同じにするわけにはいかず、「松坂桃李がチェロケースを背負って、イタリアの街並みを歩いていたらカッコいいんじゃないか」ということからチェロ奏者に変えられているらしい。
権利や大人の事情で形が変わってしまうというのは、よくあることだ。
しかしアニメ版も実写版も、制作陣の作品を愛する気持ちは同じはず。
そういうクリエイターの思いをもっと大切にできたなら、もっともっと素晴らしいものができるはず。
そう考えると、権利や大人の事情に最大限の配慮をしつつ知恵を絞った本作制作陣には、拍手を贈ってもよいのではないだろうか。
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