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【日本映画『ドロステのはてで僕らは』】シェイクスピアのようなタイトルだけど中身は藤子不二雄?たった70分で無駄ゼロの時間SF最高傑作。

 

日本映画

ドロステのはてで僕らは

※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。

 

 

シェイクスピアのようなタイトルだけど中身は藤子不二雄?たった70分で無駄ゼロの時間SF最高傑作

 

 

 

 

 

 

日本映画『ドロステのはてで僕らは』とは

 

 

ヨーロッパ企画がおくるエクストリーム時間SF

 

パズル的な構造、群像による長回し、秒単位でテレビ画面と絡み続ける役者たち ――。

時間のパズル、カフェで極まる。

 

毎年の本公演で1万5千人を動員する人気劇団ヨーロッパ企画。

本公演以外にも、映画やドラマの脚本執筆やイベント、バラエティ番組制作、ラジオ、携帯アプリ開発など、演劇の枠に捉われず、多方面にわたってコンテンツ制作を展開。

役者ひとりひとりが短編映画の監督を手がけるなど、劇団でありながら、映画や映像作品にも注力してきた。

そして2020年、ヨーロッパ企画として初めて劇団全員で取り組むオリジナル長編映画『ドロステのはてで僕ら』が完成。

彼らのホームグラウンドである京都・二条のカフェで撮影を敢行。

その後、クラウドファンディングプラットフォーム「Motion Gallery」にて国内外の上映に向けた支援を募集したところ、なんと開始から1日も経たずに目標達成率100%を突破。最終的に達成率617%を記録し、劇団にとって、満を持しての映画製作への期待の高さをうかがわせた。

原案・脚本は、劇団代表、上田誠氏(『サマータイムマシン・ブルース』『夜は短し歩けよ乙女』『前田建設ファンタジー営業部』)。

メガホンをとるのは、ヨーロッパ企画の映像ディレクター、山口淳太氏(「警視庁捜査資料管理室」)。

そして出演は、ヨーロッパ企画と藤谷理子さん、ヒロイン役には、『かぐや姫の物語』『四月の永い夢』『七つの会議』『仮面病棟』などで知られ、ヨーロッパ企画とは初タッグとなる、若手実力派・朝倉あきさん。

そして、京都出身の7人組バンド、バレーボウイズによる主題歌「タイトルコール」が、エンディングを爽やかに盛り上げる。

これまで時間やSFをテーマにするのを得意としてきたヨーロッパ企画が手がけた、まさに "時間SF映画" の決定版。

合成を一切使わない上、全編長回し撮影でタイムトリップを映像化する ――。

その無謀ともいえる挑戦を、劇団ならではの結束力で乗り越えた奇跡の瞬間が連なる70分!

 

 

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あらすじ

 

 

とある雑居ビルの2階。

カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。

見ると、画面には自分の顔。

しかもこちらに向かって話しかけている。

「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。

どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。

"タイムテレビ" の存在を知り、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるカフェの常連たち。

さらに隣人の理容師メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は加速度的に事態をややこしくしていく……。

襲いかかる未来、抗えない整合性。

ドロステのはてで僕らは ――。

 

 


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登場人物

 

 

カトウ

演 - 土佐和成

 

カフェのマスター。

 

 

メグミ

演 - 朝倉あき

 

隣人の理容師。

 

 

アヤ

演 - 藤谷理子

 

カフェの店員。

 

 

コミヤ

演 - 石田剛太

 

ラジオドラマの作家。

 

 

オザワ

演 - 酒井善史

 

スマホゲーム開発者。

 

 

タナベ

演 - 諏訪雅

 

自転車ショップの男。

 

 

フルヤ

演 - 角田貴志

 

ヤミ金業者の兄貴分。

 

 

ナリタ

演 - 中川晴樹

 

ヤミ金業者の弟分。

 

 

キンジョウ

演 - 永野宗典

 

カフェの客。

 

 

イシヅカ

演 - 本多力

 

カフェの客。

 

 

 

0.1秒の狂いも許されない緻密すぎる秀逸パズル

 

 

時間SF。

実に言い得て妙である。

その謳い文句に偽りなし。

たしかに、タイムループでもタイムリープでもない。

他のどの作品でも経験したことがない、唯一無二の不思議な時間旅行。

2階の部屋と1階のカフェが2分の時差で繋がるという、斬新かつ独創的なアイデア。

そのアイデアを最大値で具現化した撮影法。

一切カメラが止まらない(ように見える)圧倒的な長回しワンカットの臨場感は、まるで目の前で舞台を観ているようだ。

もちろん、シナリオにも隙がない。

何でもないようなアイテムが、後になって強烈な伏線になる。

それも一つや二つではなく、画面に映る人・物すべてに意味が込められている。

そして、それら伏線のすべてを最後にキッチリ回収し切る抜群の構成力。

まさに0.1秒の狂いも許されない、緻密なパズルを解き明かすような快感。

すべてが完璧と言っていい。

これほど無駄のない作品に、今まで出会ったことがあっただろうか。

そう感じさせた最大の理由は、おそらくその上映時間。

本編約70分という時間は、ややもすると物足りなく思われがちだ。

短いといわれれば、たしかに短い。

状況説明や人物相関に手を加えれば、もっと長くできたはずである。

特に本作のような特殊な設定は、過剰なほどに説明を入れたくなるのが人の性だ。

だが、そうはしなかった。

なぜか。

これ以上だと蛇足になりかねないからだ。

必要なものを、必要なだけ詰め込む。

結果として、それが70分になったに過ぎない。

この潔い時間設定こそが、本作を完璧と呼ぶ所以である。

本作は「未来の自分と会話する」という構造上、知らず知らずのうちに「一本の線でつながった確定した未来」を描く決定論的な印象が強くなってしまう作品である。

が、本質的には「2分だけ未来の並行世界」をどう捉えるか、という物語である。

そこには「未来」という、あまりに魅力的な言葉に対する我々の思い込みがあり、本作に込められた明確なメッセージがある。

それに気づくのは、壮大な伏線回収の末のこと。

あとは観てのお楽しみ。

すべてが繋がった最後に残るのは、感嘆しかない。

本当に素晴らしい作品である。

が、哀しいかな、知名度があまりに低い。

その最大の原因は、タイトルにあるのではないだろうか。

このあまりに演劇色の強いタイトル『ドロステのはてで僕らは』は、娯楽性よりまず先に哲学を想起させる。

哲学を想起すれば、気楽に観たい人は身構えてしまうだろう。

だが恐れること勿れ。

本作が描く世界観は、シェイクスピアではなく藤子不二雄。

子供の頃に慣れ親しんだ、あの世界観である。

だから身構えず、安心して、気楽に観ていただけたらと思う。

毎年の本公演で1万5千人を動員する人気劇団ヨーロッパ企画と聞いてもいまいちピンとこないだろうが、劇中には見知った顔の俳優もちらほら出演している。

「この人演劇出身だったのか」という発見も、本作のさりげなく面白いところ。

さあ、未知なる時間旅行へ。

70分後のあなたの表情が楽しみだ。

 

※.ドロステ(ドロステ効果)

絵の中の人物が自分の描かれた絵を持ち、その絵の中の人物も自分が描かれた絵を持ち……という、無限に続く入れ子のような構図のこと。

 


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