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【新海誠監督作品『秒速5センチメートル』】『君の名は。』を大ヒットへと導くまでの作品遍歴。

 

 

 

新海誠監督作品

秒速5センチメートル

 

 

秒速5センチメートル』とは

 

 

秒速5センチメートルは、新海誠監督による2007年のアニメーション映画。

配給はコミックス・ウェーブ

雲のむこう、約束の場所に続く、新海誠監督の3作目の劇場公開作品にあたる。

キャッチコピーは、「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」

題意は「桜の花びらが舞い落ちる速度」。

新海氏が監督・原作・脚本・絵コンテ、および演出までを手掛けた劇場作品で、惹かれ合っていた男女の時間と距離による変化を「桜花抄」「コスモナウト」、ならびに秒速5センチメートルという短編3話の連作構成で描く。

全63分。

公開に先立ち、「Yahoo!プレミアム」会員ならびに「Yahoo! BB」会員限定サービスとして、2007年、2月16日から3日間にわたって第1話「桜花抄」の無料配信が行われた。

3月3日に公開。

渋谷シネマライズを皮切りに、日本全国の単館系劇場で順次公開されることとなった。

6月には米国における劇場配給権、ビデオグラム化権、および放映権の獲得をADVフィルムが発表。

劇場公開中のアニメ映画のライセンス化がこのように日本国外で発表されるのは珍しいことであった。

国際映画製作者連盟ユネスコ、およびCNNインターナショナルの共同運営によるアジア太平洋映画賞の最優秀アニメーション映画賞を同年に受賞。

さらにイタリアのフューチャーフィルム映画祭にて最高賞にあたる「ランチア・プラチナグランプリ」を受賞した。

7月にコミックス・ウェーブ・フィルムからDVDが、翌2008年にはBD版が発売された。

さらに初回限定生産という形式ながら、HD DVD版も発売された。

メディアファクトリー刊「ダ・ヴィンチ」誌上で新海監督自身の筆による同作の小説も連載され、2007年9月に『小説・秒速5センチメートルとして単行本化。

2010年には清家雪子先生作画の漫画版『秒速5センチメートルが「月刊アフタヌーン」(講談社)誌上で7月号より連載開始。

翌2011年5月号にて完結、全2巻の単行本となった。

2011年11月までに、BD/DVD合計10万本、小説版累計10万部、漫画版累計13万部を売り上げ、同年には多言語対応のインターナショナル版BDも発売されるに至った。

加納新太氏による小説版『秒速5センチメートル one more side』(エンターブレイン)も同年に発売。

2012年には17刷のロングセラーを記録していた『小説・秒速5センチメートルがMF文庫ダ・ヴィンチから文庫化、2016年には角川文庫からも『小説 秒速5センチメートルが発売された。

劇場公開7周年を迎えた2014年には、第1話「桜花抄」での遠野貴樹と篠原明里の最後の逢瀬の日付にあたる3月4日から2日間にわたり、監督・新海誠氏のツイッター上で各種制作資料が公開されるなどしている。

2016年8月20日に、新海誠新作公開記念スペシャルとして、テレビ東京のサタ☆シネ (SATURDAY☆ CINEMA)で地上波放送された。

2017年には、新海誠特集と称して同監督の言の葉の庭に続いて3月16日にテレビ朝日系列で地上波放送された。

2022年、9月30日から期間限定で、全国41館で開催される「新海誠IMAX映画祭」にて、本作では初となるIMAXでの上映が行われた。

連作短編という構成について新海監督は、「最初に脚本として小説的なスケッチをいくつか書いてみたのですが、そのうちの3本をピックアップしたときに、登場人物がひとつにつながるなと思ったんです。そこで連作という形にしました。」と述べている。

第三話では山崎まさよし氏のOne more time, One more chanceのボーカルが流れて本作のタイトルが出るという手法が取られており、この手法はのちにエンディング曲がかかるタイミングに合わせてタイトルが出る君の名は。『天気の子』に引き継がれている。

アジアパシフィック映画祭「最優秀アニメ賞」やイタリア・フューチャーフィルム映画祭「ランチア・プラチナグランプリ」などの映画賞を受賞。
 

 

秒速5センチメートル 特別限定生産版 DVD-BOX

 

 

秒速5センチメートル

 

 

あらすじ

 

 

物語は1990年代前半ごろの東京の小学校を舞台に始まる。

 

 

桜花抄(おうかしょう)

 

東京の小学校に通う遠野貴樹と篠原明里は精神的に似通っており、クラスメイトたちのからかいを受けながらも一緒に時間を過ごすことが多かった。

だが、明里の父親の仕事の都合で小学校卒業と同時に明里は栃木へ転校し、それきり会うことがなくなってしまう。

その後、中学に入学して半年が経過した夏のある日、栃木にいる明里から手紙が届き、それをきっかけに2人は文通を重ねるようになる。

中学1年の終わりが近づいたころ(1995年)に、今度は貴樹が鹿児島へ転校することが決まる。

鹿児島と栃木は絶望的に遠く、もう明里に二度と会えなくなるかもしれないと思った貴樹は、栃木まで自ら明里に会いに行く決意をする。

しかし約束をした3月4日、関東では大雪となり、貴樹の乗った列車は途中で何度も長時間停車する。

さらに、宇都宮線から両毛線への乗り換えの小山駅のホームで、明里に直接渡す予定だった手紙を風に飛ばされ紛失してしまう。

貴樹は遅れている列車をホームで待ち、停まった列車の中で運行再開を待つことしかできず、時間だけが流れていく。

深夜になり、約束の時間などとうに過ぎた頃にようやく貴樹は待ち合わせの岩舟駅に到着すると、人気のない待合室で明里は一人待っていた。

貴樹と明里は雪の降る中、桜の木の下で唇を重ね、近くの納屋の中で寄り添って夜を明かす。

翌朝、明里は駅で「貴樹くんはきっとこの先も大丈夫だと思う」と言って貴樹を見送る。

明里も手紙を用意していたが、貴樹には手渡さなかった。

貴樹は走り去る列車の中、彼女を守れるだけの力が欲しいと強く願いながら、いつまでも窓の外の景色を見続けていた。

 

 

コスモナウト

 

1999年、種子島の高校3年生・澄田花苗は、中学2年の春に東京から転校してきたクラスメイトの貴樹に恋をしていたが、その想いを伝えられずにいた。

しかも、卒業を間近に控えながら自身の進路も決められず、趣味のサーフィンでも波の上に立つことができないというスランプに陥っていた。

しかし、一つずつできることからやると決めてサーフィンに挑み、ついに波の上に立つことができた。

今を逃せば二度と気持ちを打ち明けられないと思った花苗は、秘めていた自身の想いを貴樹に告げようと決心する。

しかし想いを告げようとした瞬間、貴樹から無言の圧力を感じた花苗は告白することができず、貴樹のやさしさを悲しく思いながら帰り道に泣き出してしまう。

そしてその時、2人の後ろで打ち上がったロケットを見た花苗は、貴樹が自分のことなど見ておらず、ずっと遠くにあるものを見つめているのをはっきりと悟るのだった。

結局その日の帰り道、花苗は何も言えずに告白を諦めてしまう。

そして彼女は貴樹への想いが一生報われなくても、それでもなお彼のことがどうしようもなく好きだという想いを胸に、泣きながら眠った。

 

 

秒速5センチメートル

 

東京で社会人となった貴樹は高みを目指し、ただひたすら仕事に追われる日々を過ごしていたが、それが何の衝動に駆られてなのかはわからなかった。

3年間付き合っていた水野理紗からは「1000回メールしても、心は1センチくらいしか近づけなかった」と言われ(2008年2月2日)、自身の心が彼女に向いていないことを見透かされてしまう。

貴樹も自分自身の葛藤から、若き迷いへと落ちてゆき会社を辞める。

貴樹の心はあの中学生の雪の夜以来ずっと、自身にとって唯一の女性を追い掛け続けていたのだった。

2008年3月のある日、貴樹はふと桜を見に外に出かけ、小学生時代に毎日通っていた道を歩く。

踏切に差し掛かると前方から1人の女性が歩いてくるのが見え、踏切内ですれ違う瞬間、2人は何かを感じ取る。

踏切を渡り立ち止まり、貴樹と彼女がゆっくりと振り返った瞬間、小田急線の急行列車が2人の視界をふさいだ。

列車が通り過ぎると、そこに彼女の姿はなかった。

しかし、貴樹は何かを決心したように笑みを浮かべながら静かに歩きだした。

 

 

 

主要登場人物

 

 

遠野貴樹

声 - 水橋研二

 

「桜花抄」「秒速5センチメートルの主人公。

家族は両親のみの一人っ子。

小学3年生の春に、(小説版・漫画版では長野から)世田谷の小学校に親の仕事の都合で転校してきた。

その1年後の春に、同じクラスに転校してきた明里と初めて出会う。

ともに親が転勤が多く転校続きであったこと、体が弱く(漫画版では喘息の発作を起こしている描写がある)、外で大勢と遊ぶよりも図書館で本を読むことが好きだったことを共通点として親しくなる。

性格は大人しいタイプだが、クラスメイトに自分との仲をからかわれて泣き出しそうになっていた明里を堂々と助けた。

種子島では、地球ではない惑星上で明里に似た女性と2人でいる夢をよく見ていて、宛先のない携帯メールを入力しては送信することなく消す行為を繰り返していた。

中学1年時はサッカー部に、高校時代は弓道部に所属。

秒速5センチメートルでは社会人となり東京で暮らしているが、明里への想いを引きずり過ぎたために他の女性と付き合っても破局を迎える。

最後にようやく明里への想いを過去のものにすることができた。

 

 

篠原明里

声 - 近藤好美(第1話) / 尾上綾華(第3話)

 

貴樹の初恋の相手にあたる少女。

貴樹の片想いではなく、幼いながらも両想いの仲であった。

貴樹と同じく家族は両親のみの一人っ子。

小学4年生の春に、(小説版・漫画版では静岡から)世田谷に親の仕事の都合で転校し、貴樹と同じクラスになる。

貴樹と同じくこのころは身体が弱く、外で遊ぶよりも図書館で本を読んでいることを好んでいた。

そのため貴樹と親しくなるが、内向的な性格ゆえにクラスメイトに貴樹との仲をからかわれても受け流すことが出来なかった。

そんな自分を常に守ってくれる貴樹に対して淡い恋心を抱く。

父親の仕事の都合で小学校卒業と同時に栃木へ転校する。

中学時代に部活をしているが、どの部活かは明らかにされていない(小説版・漫画版ではバスケットボール部とされている)。

秒速5センチメートルでは貴樹への淡い想いを断ち切り、彼ではない別の男性と結婚する。

 

 

澄田花苗

声 - 花村怜美

 

「コスモナウト」の主人公。

3年1組12番に在籍(小説版では3組)。

貴樹と種子島の中学で同じクラスになった少女。

身長159センチメートル。

家族は両親と、自身が通う高校の教師の姉(声 - 水野理紗)が1人いる。

中学2年生の春、東京から転校してきた貴樹に他の男子とは違う雰囲気を感じ取り、恋心を抱くようになる。

高校も貴樹と同じ場所にいたい一心で必死に勉強して合格を果たした。

高校では貴樹が部活を終えるのを待って一緒に下校する間柄になったが、3年生になるまで告白することはできなかった。

内面に情熱を秘めるタイプで、一途に貴樹を想い続けている。

自分の将来が定まらないことに不安を感じ、得意のサーフィンでもずっと波の上に立てないというスランプ状態に陥っていた。

自信を取り戻し、再び波の上に立てるようになったとき貴樹に告白しようと決意していたが、波に立てた当日、彼からの拒絶の態度を感じ取ってしまい、結局告白には至らなかった。

貴樹が自分では届かないような高みを目指しているのを確信しながらも、この先もずっと自分は貴樹のことを愛し続けるだろうと思うほどの一途な少女である。

しかし新海小説版では、雨の日のロケット運搬があった夜に見た夢の中で、今の姉と同じ年齢になった頃には、貴樹への恋は過去のものであると認識している描写がある。

一方、漫画版では、成人後も貴樹への想いを断ち切れずにいる様子が描かれている。

なお、新海監督はインタビューで「花苗は強い女性として描いた」と述べている。

 

 

水野理紗

声 - 水野理紗

 

貴樹と3年間付き合っていた女性。

貴樹の退職などの理由もあり、「1000回にわたるメールのやり取りをしたとしても、心は1センチほどしか近づけなかった」と最後のメールに綴って破局した。

 

 

 

音楽

 

  • 「One more time,One more chance」

 

主題歌を歌うのは山崎まさよし氏。

1997年公開の主演映画『月とキャベツでも主題歌として人気を呼んだ。

今なお幅広い世代に愛されている大ヒットラブソング。

 

 

One more time,One more chance「秒速5センチメートル」Special Edition

 

 


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新海誠監督作品の根底にあるもの

時間軸のズレと思春期の恋物語

 

 

君の名は。が大ヒットへ至るまでの新海誠監督作品には、一貫して明確なコンセプトがふたつあった。

それは、

  1. 主人公たちそれぞれの時間軸のズレ。
  2. 思春期の恋物語

である。

逆に言えば君の名は。は、この二大コンセプトを基に試行錯誤してきた新海誠監督の集大成ともいえるのである。

 

 

 

関係の遷移をテーマに据えた『秒速』

 

 

本作は過去の新海誠監督作品でも、最も好きな作品かもしれない。

時の流れとともに失われてゆく何かを惜しむ気持ちとの決別と、今そこにある幸福を追求することによる過去との決別が描かれている本作には、過去作のようなSF要素は皆無である。

唯一、ロケットの打ち上げシーンだけが前作までを想起させてくれる。

代わりに思春期の恋心について、より濃く描かれているのが特徴だ。

個人的には大好きな要素だが、一般的には中二病感が増したと揶揄される。

俗に言う中二病感なら新海誠監督歴代作品の中でも随一。

切なさしかない名作中の名作である。

 

 

 

秒速5センチメートル

何の速度か知っている?

 

 

答えは「桜の花びらが舞い落ちる速度」

なんてロマンチックな解答なんだと感心した人は、もしかしたら中二病の素質を持っているかもしれない。

当然ながら著者は、そのように感じた。

しかし恥じるつもりはない。

そういう粋な趣すらも感じられないのなら、芸術作品なんて観ない方がいい。

 

 

 

いつまでも忘れられない人

 

 

本作の主人公たちには、前作までの特殊な時間軸のズレというものはない。

代わりにあるのは、別々の場所で暮らし続けた結果生まれる、生活環境のズレであろう。

そしてこれは誰にでも起こり得るズレである。

主人公が思春期の少年少女だからか中二病のように受け取られがちだが、本当にそうだろうか?

大人になったからといって、ひとつの恋をずっと忘れられない人だっている。

心の奥底にしまい込んだ忘れられない気持ちのひとつやふたつ、誰にだってあるだろう。

本気で人を好きになるというのは、きっとそういうことなのだ。

そんな気持ちを未だ知らない人たちが、本作を中二病だのなんだのと批判しているだけに過ぎない。

主題歌「One more time,One more chance」の歌詞の切なさを痛感している人なら、是非観てほしい。

本作は忘れかけていた気持ちと、忘れられない人を思い出せる傑作なのだから…。

 

 

 

新海誠監督最新作

映画『すずめの戸締まり』

 

 

国境や世代の垣根を超え、世界中を魅了し続けるアニメーション監督・新海誠

全世界が待ち望む最新作『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる ”扉” を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語…。

 

 


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