「むらさき」「なみだ」「ぎょく」「あがり」などは、お鮨屋へ行くとよく耳にする言葉ではないでしょうか。どこか粋でいなせな感じのする言葉の数々。しかし、意味を知らなければ思考回路はショート寸前。素人にはまったく解らない業界用語、いわゆる『隠語』と呼ばれる集団語に分類されます。
お鮨屋さんがなぜ隠語を使うかについては、「客との距離が近いため、職人同士の会話が解らないように用いていた」あるいは「仲間内だけで通じる言葉を共有することで、仲間意識を高めていた」等と云われていますが、我々バイク乗りにも歴とした隠語が存在します。
本日のバイク講座では、『バイクの隠語』について紹介をしていきます。ぜひ正しく隠語を理解し。しっかりと用いることができるよう学びましょう。
今回は「ツーリング先で話しかけてくる方々についての隠語」です。
■ イクラちゃん
「このバイク、いくらするの?」と唐突に尋ねてくる方々を、バイクの隠語ではイクラちゃんと呼びます。語源はもちろん「いくらするの?」の "いくら" から。以前に信号待ちで速そうな車がスーッと横に停まり、窓が開いたのですわゼロヨンバトル勃発かと緊張していると、顔を出した運転手に「このバイク、いくらなの?」と尋ねられ、「なんのドライブスルーだよ!」と信号が青になり走り出した車を見ながらつっこんだ事があります。質問に答える際には、車両本体価格か乗り出し価格かで悩むところ。
■ ノリスケさん
「俺も昔バイクに乗っていてさ…」と家に遊びに来る叔父さんばりのフランクさで話しかけてくる方々を、ノリスケさんと呼びます。筆者は「昔マッハに乗っていた」という自称漢(おとこ)KAWASAKIマッハ乗りに高確率で話しかけられますが、「俺はザンザスに乗っていた」「俺はKV75だ」という方には、残念ながらまだ一度も出会った事がありません。

■ ナンシー
「このバイク何CCなの?」と無垢な瞳で排気量を尋ねてくる方々を、ナンシーと呼びます。またはCCなのんと呼ぶ地方もあり、発音はCCレモンのそれです。年配のナンシーさんだと、こちらが1000CCだろうと1400CCだろうとナナハンの方がスゴイと思っている感があります。以前に、二人とも原付二種のバイクに乗った旅行中のカップルとコンビニで話す機会があり、その後に仲睦まじく走り去って行く姿を愛車の大型バイクと共に寂しく見送った筆者は、排気量の大小は人の幸せに関係ないと心から思ったものです。

■ 南鬼郎(なんきろう)
「このバイク何キロでるの?」とポケットに手を突っ込んだまま少し猫背気味で最高速を尋ねてくる方々を、南鬼郎(なんきろう)と呼びます。ついつい愛車の能力を披露したくなるバイク乗りは、ここで注意が必要です。「メーター読みで…」とか「視界がどんどん狭くなって…」など調子に乗り、どれだけ公道でスピードを出したかなど見ず知らずの人に話すなんて事は、あなたの銀行口座の暗証番号を教えるに等しい行為です。もしかしたらその南鬼郎は何の因果かマッポの手先、交通機動隊のおとり捜査かもしれないのですよ。気をつけて。
■ ウェザーリポート
コンビニの駐車場で、おばちゃんに今日これからの天気を尋ねられたことがあります。尋ねた理由は「バイクに乗っているなら、天気予報をちゃんと確認して出掛けているはず」とのこと。逆パターンとして同じコンビニで、おっちゃんに天気予報を教えて貰った事があります。理由は「午後は雨っぽいから、バイクなんだから早く帰んな」とのこと。このお二人がご夫婦だったらキ・セ・キ。

■ もこみち
「エンジンオイルは何を入れているのか?」「チェーンオイルは何をつかっているのか?」などと尋ねてくる…って、オイルのこと好きすぎ! きっとオイル交換の際には追加で注油する「追いエンジンオイル」高い位置から注油する「天空チェーンオイル」などのパフォーマンスが炸裂する、オイルに魅入られたエキストラバージンオイラーなのでしょう。

■ リメンバー・ミーのおばあちゃん
高齢となりすでにバイクを降り安穏と過ごしているが、公道を走るバイクの排気音やマシンノイズを耳にするやゆっくりと眼を見開く方々。
今回の講座は以上となります。しっかり隠語を理解し、日頃から正しく用いることでバイク乗りの仲間意識を高め、モーターサイクル文化の成熟、ひいてはバイク乗りの社会的地位向上にむけて、これからもお互いに頑張っていきましょう。
次回のバイク講座は『知っておきたいロケット乗りの作法や歴史、流派をご紹介』です。それではごきげんよう。